君が見たものを僕は知っている
第11話 素直になったら?
僕達はそれぞれ読書感想文を書く本を見つけて読書にはいる。その際に凜がコーヒーを淹れてくれ、コーヒーのいい薫りが書斎に広がり、気分的にも落ち着いて読むことができている。結局僕が選んだ本はファンタジーもので、主人公がどんどん成長するタイプのものだ。
最初はこういう物語の主人公と自分を重ねて自分はどう行動するか、どう感じるかを書けばそれらしくなるかなと思い選んだが、なかなか面白くて時間も忘れて読んでしまった。
時刻は15時。そろそろ、物語の中身もよく分かってきた。最初から比べて技術的にも精神的にも強くなる主人公。友情、恋、そして平和な世界に向けて奮闘する主人公を途中から僕は尊敬していた。
自分の力に未来を切り拓こうとしている姿は僕にはないものだ。それから、クライマックスまで僕は一気に読んでしまった。普段読書をしない僕がここまでハマってしまうとは驚きだ。
それは、僕だけじゃなく、鈴佳と凜、それから信也までもが時間を忘れて読書に更けていた。
気づいたら時計は17時を指していた。
「あ、もうこんか時間になっていたのか」
僕は背伸びをして、首をポキポキと鳴らす。
みんなもそれに続いて背伸びやら、ストレッチをする。約4時間ぐらいずっと本とにらめっこなのだ、疲れて当然。
「ふぅ~、よし!じゃあ、ご飯の準備をしないとね!」
凜は大きく深呼吸をすると立ち上がる。僕達も立ち上がってキッチンへと向かう。そして、それぞれ担当に分かれた。
信也は米を洗って炊く。僕は野菜と肉を切る。鈴佳と凜はそれぞれ、肉を焼いて煮込み材料を柔らかくしたり、スープをつくったり、サラダをつくったりと忙しく動いている。
凜は野菜が柔らかくなったところで、カレールーを入れて溶かしていく。それと同時にカレーの匂いが鼻孔をくすぐる。
それから、数十分後、米も炊き上がりそれぞれ盛り付けて、食卓へ運んでいく。読書に集中していて気がつかなかったけど、お腹が空いていたようだ、お腹がぐぅ~と鳴いた。
準備が終わると僕達は席について手を合わせる。
「いただきます!」
僕達の声が重なった。僕は美味しそうに湯気をたてるカレーを一口食べる。とても美味しい!きっとみんなで食べている分更にそう感じているのだろう。僕はこの瞬間に幸せを感じていた。
食後、僕達は食器を洗って少し休むと再び書斎にいた。ここからが読書感想文本番だ。それぞれがうーんと悩みつつ書き進めていく。僕も途中、ペンを止めながらもなんとか書き終えた。
僕が最初に終わったらしい。一人でボーッとするのもいいし、違う本を読むのもいいけど、さっきからペンを止めて考えこんでいる信也の手伝いをしよう。
信也は「手伝ってくれるのか?ありがとう!」と手を握って喜んでくれた。まぁ、信也の読んでた本の中身は知らないけど、何かしら手伝えることがあるだろう。
その後、自分の分が終わった鈴佳と凜の協力もあり、みんなの読書感想文が終わった。つまり、夏休みの課題は全て終わったのだ。その達成感に少しだけ浸っていよう。
僕達は課題が終わったということで、ジュースで乾杯をする。
「いやぁ~、信じられないよ!いつもなら、最後の2日ぐらい死ぬ気でやるからさ、なんか気分が軽い!これもみんなのおかげだよ!一生感謝します!」
信也は大袈裟に喜んでいる。まぁ、僕もいつもより楽しく終わらせることが出来た。これもみんなと一緒だったからだ。
時間は22時になっていた。
「よし、じゃあお風呂でも入ってこようかな~。鈴佳ちゃんも一緒に入ろうよ!」
凜は鈴佳と手を繋ぎ立ち上がる。
「信也たちも入ったら」
そうだな俺達も……っては!?それはどういう意味ですか?
僕と鈴佳は目を合わせて顔を赤く染める。
「い、いゃあ!な、何を言ってんですか!?一緒に入ろうってことですか!?い、いやさすがにそれは………」
珍しく信也も顔を赤くしてテンパっている。
「え!?い、いや違くて!ここは、お風呂が2つあるの!男湯と女湯にわかれてんの!だから、男湯に入ればってこと!」
僕達の勘違いの意味に気づいて、凜もあたふたとしている。
「あ、そういうことか」
それを聞いて僕達は安堵する。いや、ちょっと期待したかもしれないけど。
凜はいたたまれなくなって、鈴佳を連れて女湯へと足早にでていく。
「はぁー、びっくりした。まさか2つあるとはね……。ん?てか2つも風呂あんの!?」
確かに、普通に考えたらあり得ないことだ。そうだった、ここは普通ではなかった。
「まぁ、とりあえず僕達も行こうか」
僕の言葉に信也も頷いてお風呂場へと向かった。
お風呂の位置を教えてもらってなかった僕達は少し迷いながらも、青い暖簾をみつけた。こんな洋館のような風景の中に暖簾も違和感があるが、とりあえず見つかってよかった。
僕達はドアを開けて中にはいる。そこは脱衣場だ。まるで温泉旅館のような広々とした空間だった。鏡やドライヤーもある。これは凄い。
僕達は服を脱いで、浴場へのドアを開く。
「うっひょーーー!なんじゃこれーーー!」
信也は浴場の光景を見て変な声をあげる。僕も気になって中を覗く。
浴場、いや大浴場だ。もう、温泉旅館のような広さ。なんでも、使用人を何人か雇って掃除をしてもらっていたようで、手入れもキチンとされている。
僕達は体と頭を洗うと、信也はお風呂に飛び込む。僕はゆっくりと入っていく。二人で入るにはもったいないぐらい広い。隅から隅まで3~40メートルはありそうだ。僕達はポツーンと中央で入浴していた。
「いやー、でも気持ちいいなぁ~、こんだけ広くて気持ちがいいお風呂だったら、朝も昼も夜も深夜でも入りたいよ」
信也が深夜に入浴?我ながらつまらないダジャレだ。まぁ、それはさておき確かに気持ちがいい。
「しかも、課題も終わったし、夏休みもまだまだあるし、楽しみもたくさんあるから気分的にも晴れやだよね」
僕はハァーとため息をついて、至福の時を満喫する。
「まぁ、お前にとったら勝負の夏休みになるかもな!鈴佳ちゃんのこと」
信也はニコニコと楽しそうに笑う。
「何いってんだよ!」
僕は動揺をうまく隠しきれずにいた。
「いや、ずっとこの関係でいてさ、いきなり恋人になるのは変な感じかもしれないけどさ、いつかは言わないといけないことだぜ」
信也は珍しく真面目な表情で話す。
「言わないといけないって何のことだよ」
嘘だ。本当は痛いほど分かっている。たった2文字。
「ふん。分かってるくせに。じゃあさ、まず素直になってみようぜ!最初に、鈴佳ちゃんが好きって俺に言ってみろ」
信也は僕の正面へと移動する。
「え?」
僕も分かっている。まずは自分に、そして友達にぐらい素直にならなければいけないことを。
裸の付き合いというのか、服を着ていないと全てを見抜かれている気がして、隠すのも意地をはるのも面倒になる。僕は意を決して口を開く。
「ぼ、僕は。鈴のことが好きだ」
僕はいい終えると急に恥ずかしくなって、手でお湯を救って顔にバシャッとかける。
「うん!分かってた!よし!俺が応援する!すぐじゃなくてもいい!夏休み!この夏休み中にきめてやろうぜ!」
信也はそう言うと手を僕の前につきだす。
僕はその言葉がなによりも力強かった。
「ああ!絶対に伝える!好きって伝える!」
僕は信也と力強い握手を交わした。
―――私は凜ちゃんの目の前にいた。正確には凜ちゃんが私の目の前に移動してきたのだ。凜ちゃんは私に、この夏休み中に素直になるために、まず私に素直になってと私を見つめてくる。
私は意を決して口を開く。
「私は蓮くんが好き」
「うん。分かってた」
そう言ってちゃんはニコリと笑った。
―――僕たちがお風呂を出るとちょうど鈴佳と凜も出てきた。僕は鈴佳と目が合った。僕はさっきのこともあり恥ずかしくなって目を反らす。気のせいか鈴佳も逆上せたのか、顔が赤かった気がした。
最初はこういう物語の主人公と自分を重ねて自分はどう行動するか、どう感じるかを書けばそれらしくなるかなと思い選んだが、なかなか面白くて時間も忘れて読んでしまった。
時刻は15時。そろそろ、物語の中身もよく分かってきた。最初から比べて技術的にも精神的にも強くなる主人公。友情、恋、そして平和な世界に向けて奮闘する主人公を途中から僕は尊敬していた。
自分の力に未来を切り拓こうとしている姿は僕にはないものだ。それから、クライマックスまで僕は一気に読んでしまった。普段読書をしない僕がここまでハマってしまうとは驚きだ。
それは、僕だけじゃなく、鈴佳と凜、それから信也までもが時間を忘れて読書に更けていた。
気づいたら時計は17時を指していた。
「あ、もうこんか時間になっていたのか」
僕は背伸びをして、首をポキポキと鳴らす。
みんなもそれに続いて背伸びやら、ストレッチをする。約4時間ぐらいずっと本とにらめっこなのだ、疲れて当然。
「ふぅ~、よし!じゃあ、ご飯の準備をしないとね!」
凜は大きく深呼吸をすると立ち上がる。僕達も立ち上がってキッチンへと向かう。そして、それぞれ担当に分かれた。
信也は米を洗って炊く。僕は野菜と肉を切る。鈴佳と凜はそれぞれ、肉を焼いて煮込み材料を柔らかくしたり、スープをつくったり、サラダをつくったりと忙しく動いている。
凜は野菜が柔らかくなったところで、カレールーを入れて溶かしていく。それと同時にカレーの匂いが鼻孔をくすぐる。
それから、数十分後、米も炊き上がりそれぞれ盛り付けて、食卓へ運んでいく。読書に集中していて気がつかなかったけど、お腹が空いていたようだ、お腹がぐぅ~と鳴いた。
準備が終わると僕達は席について手を合わせる。
「いただきます!」
僕達の声が重なった。僕は美味しそうに湯気をたてるカレーを一口食べる。とても美味しい!きっとみんなで食べている分更にそう感じているのだろう。僕はこの瞬間に幸せを感じていた。
食後、僕達は食器を洗って少し休むと再び書斎にいた。ここからが読書感想文本番だ。それぞれがうーんと悩みつつ書き進めていく。僕も途中、ペンを止めながらもなんとか書き終えた。
僕が最初に終わったらしい。一人でボーッとするのもいいし、違う本を読むのもいいけど、さっきからペンを止めて考えこんでいる信也の手伝いをしよう。
信也は「手伝ってくれるのか?ありがとう!」と手を握って喜んでくれた。まぁ、信也の読んでた本の中身は知らないけど、何かしら手伝えることがあるだろう。
その後、自分の分が終わった鈴佳と凜の協力もあり、みんなの読書感想文が終わった。つまり、夏休みの課題は全て終わったのだ。その達成感に少しだけ浸っていよう。
僕達は課題が終わったということで、ジュースで乾杯をする。
「いやぁ~、信じられないよ!いつもなら、最後の2日ぐらい死ぬ気でやるからさ、なんか気分が軽い!これもみんなのおかげだよ!一生感謝します!」
信也は大袈裟に喜んでいる。まぁ、僕もいつもより楽しく終わらせることが出来た。これもみんなと一緒だったからだ。
時間は22時になっていた。
「よし、じゃあお風呂でも入ってこようかな~。鈴佳ちゃんも一緒に入ろうよ!」
凜は鈴佳と手を繋ぎ立ち上がる。
「信也たちも入ったら」
そうだな俺達も……っては!?それはどういう意味ですか?
僕と鈴佳は目を合わせて顔を赤く染める。
「い、いゃあ!な、何を言ってんですか!?一緒に入ろうってことですか!?い、いやさすがにそれは………」
珍しく信也も顔を赤くしてテンパっている。
「え!?い、いや違くて!ここは、お風呂が2つあるの!男湯と女湯にわかれてんの!だから、男湯に入ればってこと!」
僕達の勘違いの意味に気づいて、凜もあたふたとしている。
「あ、そういうことか」
それを聞いて僕達は安堵する。いや、ちょっと期待したかもしれないけど。
凜はいたたまれなくなって、鈴佳を連れて女湯へと足早にでていく。
「はぁー、びっくりした。まさか2つあるとはね……。ん?てか2つも風呂あんの!?」
確かに、普通に考えたらあり得ないことだ。そうだった、ここは普通ではなかった。
「まぁ、とりあえず僕達も行こうか」
僕の言葉に信也も頷いてお風呂場へと向かった。
お風呂の位置を教えてもらってなかった僕達は少し迷いながらも、青い暖簾をみつけた。こんな洋館のような風景の中に暖簾も違和感があるが、とりあえず見つかってよかった。
僕達はドアを開けて中にはいる。そこは脱衣場だ。まるで温泉旅館のような広々とした空間だった。鏡やドライヤーもある。これは凄い。
僕達は服を脱いで、浴場へのドアを開く。
「うっひょーーー!なんじゃこれーーー!」
信也は浴場の光景を見て変な声をあげる。僕も気になって中を覗く。
浴場、いや大浴場だ。もう、温泉旅館のような広さ。なんでも、使用人を何人か雇って掃除をしてもらっていたようで、手入れもキチンとされている。
僕達は体と頭を洗うと、信也はお風呂に飛び込む。僕はゆっくりと入っていく。二人で入るにはもったいないぐらい広い。隅から隅まで3~40メートルはありそうだ。僕達はポツーンと中央で入浴していた。
「いやー、でも気持ちいいなぁ~、こんだけ広くて気持ちがいいお風呂だったら、朝も昼も夜も深夜でも入りたいよ」
信也が深夜に入浴?我ながらつまらないダジャレだ。まぁ、それはさておき確かに気持ちがいい。
「しかも、課題も終わったし、夏休みもまだまだあるし、楽しみもたくさんあるから気分的にも晴れやだよね」
僕はハァーとため息をついて、至福の時を満喫する。
「まぁ、お前にとったら勝負の夏休みになるかもな!鈴佳ちゃんのこと」
信也はニコニコと楽しそうに笑う。
「何いってんだよ!」
僕は動揺をうまく隠しきれずにいた。
「いや、ずっとこの関係でいてさ、いきなり恋人になるのは変な感じかもしれないけどさ、いつかは言わないといけないことだぜ」
信也は珍しく真面目な表情で話す。
「言わないといけないって何のことだよ」
嘘だ。本当は痛いほど分かっている。たった2文字。
「ふん。分かってるくせに。じゃあさ、まず素直になってみようぜ!最初に、鈴佳ちゃんが好きって俺に言ってみろ」
信也は僕の正面へと移動する。
「え?」
僕も分かっている。まずは自分に、そして友達にぐらい素直にならなければいけないことを。
裸の付き合いというのか、服を着ていないと全てを見抜かれている気がして、隠すのも意地をはるのも面倒になる。僕は意を決して口を開く。
「ぼ、僕は。鈴のことが好きだ」
僕はいい終えると急に恥ずかしくなって、手でお湯を救って顔にバシャッとかける。
「うん!分かってた!よし!俺が応援する!すぐじゃなくてもいい!夏休み!この夏休み中にきめてやろうぜ!」
信也はそう言うと手を僕の前につきだす。
僕はその言葉がなによりも力強かった。
「ああ!絶対に伝える!好きって伝える!」
僕は信也と力強い握手を交わした。
―――私は凜ちゃんの目の前にいた。正確には凜ちゃんが私の目の前に移動してきたのだ。凜ちゃんは私に、この夏休み中に素直になるために、まず私に素直になってと私を見つめてくる。
私は意を決して口を開く。
「私は蓮くんが好き」
「うん。分かってた」
そう言ってちゃんはニコリと笑った。
―――僕たちがお風呂を出るとちょうど鈴佳と凜も出てきた。僕は鈴佳と目が合った。僕はさっきのこともあり恥ずかしくなって目を反らす。気のせいか鈴佳も逆上せたのか、顔が赤かった気がした。
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