君が見たものを僕は知っている
第10話 悪魔アビス
次の日。僕と鈴佳は先にバス停に着いていた。
「おはよう!俺はさっき彼女に起こされて幸せな目覚めをしたぜ!今、こっち出たから、あと10分ぐらいしたら着くわ!いやぁ~朝起きて彼女がいるのは最幸だよ!お前も鈴佳ちゃんに起こされる幸せな時間のために頑張れよ!」
これが数分前に僕に届いたメールだ。最後の一言は多いが遅刻しないで無事に到着できそうだ。
「読書感想文、どうしようかな~。あっちに着いてから選べいいんだけど、ある程度どういうのがいいか決めておけばスムーズに進むよね~」
鈴佳の言いたいことはよく分かる。だいたいジャンルぐらいは絞っておいた方がいいかもしれない。
「やっぱり伝記物とかは書きやすいかもしれないな。その人の説明とそれに対しての意見を書けばいいだけだし」
僕の考えには鈴佳も同意らしい。
「うん。あとは、ドラマ化としてるやつだといいかも。内容もだいたい分かるし、まぁ、読書とは言えないかもしれないけど」
なるほど。それも悪くない。でも、ドラマと原作が少し違うパターンもあるし、そこは気をつけなくてはならないな。
その後も僕達は意見を出し合った。結論から言うとまったく最初とは変わらず、あっちに着いてから探すことになった。何の時間だったのだろう?でも、それぞれのジャンルの書きやすそうな所、難しい所など把握できたので無駄ではなかったのかもしれない。
「おっはよー!いやぁ、いい朝ですな!」
そこに朝からハイテンションの信也と、温度差のある鈴佳がやってきた。今の信也との温度差で言ったら、僕達も相当あると思う。
数分後、バスが到着し僕達は乗り込んだ。ここから約1時間。バスがどんどん進むにつれ窓の外の景色が変わっていく。
目的地のバス停まで残り二駅ぐらいになると、お店はおろか民家もない山奥へと入っていた。本当にこの先に別荘なんてあるのかと不安になる。
目的地のバス停に降りてもその不安は無くならなかった。見渡す限り木。森で迷子になった気分だ。
「よし、じゃあ行こうか!ここから徒歩10分ぐらいかな?」
そう言って凜は森の中を進んでいく。僕達はここに居るわけにもいかず、恐る恐る着いていく。
周りの景色に圧倒されてしまっていたせいか、凜が進んでいる所が道になっているのに気がつかなかった。こういう所にいると、こんな人工的なものでもホッとする。
それから、何の問題もなく僕達は進んでいった。歩き始めて7分ぐらいが経っただろうか。急に目の前に大きな建物が見えてきた。まるで、洋画に出てくる洋館みたいな建物だ。凜の親戚以外にも別荘を建ててた人がいたようだ。
「よし!着いたよ!」
凜はそう言いと大きく深呼吸をする。
「え?着いたって別荘は?」
信也が僕と鈴佳の気持ちを代弁してくれる。
「え?いや、それだよ。目の前の建物」
そう言いって凜が指差したのは、その大きな建物だった。
「えーーーーー!!」
3人の声が重なって森に響きわたる。
それはこんな反応にもなる。だって目の前の建物、一般人なら到底手の届かないものだ。つまり、凜の親戚ってお金持ち!?
「え?凜の親戚って何者?」
またまた、僕達の代弁をしてくれる信也。
「え?まぁ、お金持ちなのかな?なんかの社長って言ってたっけ?マンションもたくさん持ってるって話もしてたような?」
こ、これはリアルなお金持ちだ!僕達はしばらくその別荘?を唖然と見つめていた。
別荘に入ると映画でしか見たことのない大きなホールが出迎えてくれた。なんかもう、あれだけの外観なんだ、何も驚かないよ。
「よし!まずは荷物をどうにかしなきゃだね!階段を上がって右に行けば部屋がいくつかあるから、好きな所使っていいよ。あと、ここから右の部屋に行けばリビングとキッチン。左に書斎があるからそこで本を探してね」
そう言いって凜は階段を上がっていく。
僕達の思考は驚きで停止している。僕達は言われるがままそれぞれ部屋に入っていった。
部屋には大きなクローゼットに大きな机、テレビにこれまた大きなベッド。本当にこれが別荘なのかと疑問に思うほど豪華なものばかり、僕は非日常に放り込まれた感覚でいた。
信也は順応が早く、いや好奇心が旺盛なだけなのか、別荘中を見て回っている。僕と鈴佳はとりあえずリビングとキッチンを見回っていた。
キッチンは僕の家よりも大きくて綺麗で何でも揃っている。リビングも僕の家の3倍以上の広さはあるだろう。なんかもうお腹一杯だ。
「よし!じゃあ、読書感想文終わらせちゃおうか!」
凜はパンっと手を叩く。もう、読書感想文のことなんて忘れていた。凜が言うまで気づかなかった。もともと、読書感想文のために1日増やしたのだからしっかりやらないと。
凜は歩き回っていた信也を連れくると出でていった。僕と鈴佳はさっき教えてもらった書斎へと向かった。
書斎の扉を開くと、そこの景色にもまた僕達は唖然とした。もう書斎というより図書館だ。数えきれないほどの本に、椅子と机。コーヒーのマシン。シックで落ち着いた雰囲気だ。
僕達はしばらく入口で立ち尽くしていた。
それから、僕達はまず読書感想文のための本を探していた。
「なにか、面白そうなものないかな?」
僕は棚を眺めていると、一冊の本に目が止まった。
「悪魔辞典?」
少し分厚いその本を僕は手に取ってペラペラとペースをめくる。
「なんか面白そうなもの見つかった?」
そこに鈴佳が近づいてくる。
「ん?いや、なんか目に止まって。アビス?」
僕はあるページで手を止めた。一つだけ願いを叶えてくれる悪魔アビス。
「アビス!?」
僕の見ているページを覗きこんで驚いた声を漏らす鈴佳。
「え?知ってるの?」
「ん?あ、いや知らない」
鈴佳は首を傾げる。
僕はそのページに書いてあるアビスの説明を読み上げた。
「悪魔アビス。彼は人々の強い想い産まれる。強い想いに反応したアビスは、その想いを発した人の前に現れて一つだけ願いを叶えてくれる。その代わりにアビスが出した代償を支払わなけれならない。その代償は重いものだという。まだ、アビスは色んな姿になり、人、動植物にその姿を変える」
なんというか天使のような悪魔だ。そこで僕はある話を思い出した。
「そういえば、家の母さんが昔悪魔にあったって話てたな。なんか、その時流行ってた願いが叶う都市伝説みたいことを試したら、悪魔が現れたらしい。そして、その悪魔に願いを一つだけ叶えてくれると言われて、母さんは父さんと将来結婚したいっね願ったんだって。それで悪魔にその代償にお前の大切なものを奪うって言われて了承したんだって。そこで目が覚めて、夢だったのかなんだったのか分からないって話してた。まぁ、実際に父さんとは結婚できたし、別に大切なものを無くした訳でもないから夢だったんだろうけどってさ」
僕は一通り話すとパンっと本を閉じて棚に戻した。
「さぁ、そんなことより読書感想文をやらなきゃね!」
僕はそう言って本探しに戻った。しばらくその場で何か考えているような表情を浮かべて、鈴佳も本探しへと戻っていった。少し気になったけど、早く読書感想文を終わらせたいのでそこからは集中して本探しに取り組んだ。
―――「アビス」その言葉に私は言葉をなくした。アビスってあの時の悪魔の名前と同じだ。
するの蓮くんがアビスについての説明を読み上げてくれた。私はそれを聞いて確信した。あの時出会った悪魔と同じだ。あの時は黒猫だったけど、姿を変えることができるなら納得がいく。
その後、蓮くんがお母さんと悪魔の話を聞かせてくれた。私はその話のあるところに引っかかった。それは「都市伝説」という部分だ。なんでも、アビスは人の想いに反応するらしい。都市伝説は人が作った、言わば都市伝説は人の想いから出来たものだ。あの日のサークルも、確か都市伝説になっていて………。
つまり、アビスはサークルというよりは、都市伝説に反応したのかもしれない。願い事が叶ってほしいという想いから生まれ都市伝説。私はしばらくその場に立ち尽くした。
そんな私を蓮くんは心配そうにチラチラと見てくる。私は心配させないように読書感想文の本探しに戻った。
「おはよう!俺はさっき彼女に起こされて幸せな目覚めをしたぜ!今、こっち出たから、あと10分ぐらいしたら着くわ!いやぁ~朝起きて彼女がいるのは最幸だよ!お前も鈴佳ちゃんに起こされる幸せな時間のために頑張れよ!」
これが数分前に僕に届いたメールだ。最後の一言は多いが遅刻しないで無事に到着できそうだ。
「読書感想文、どうしようかな~。あっちに着いてから選べいいんだけど、ある程度どういうのがいいか決めておけばスムーズに進むよね~」
鈴佳の言いたいことはよく分かる。だいたいジャンルぐらいは絞っておいた方がいいかもしれない。
「やっぱり伝記物とかは書きやすいかもしれないな。その人の説明とそれに対しての意見を書けばいいだけだし」
僕の考えには鈴佳も同意らしい。
「うん。あとは、ドラマ化としてるやつだといいかも。内容もだいたい分かるし、まぁ、読書とは言えないかもしれないけど」
なるほど。それも悪くない。でも、ドラマと原作が少し違うパターンもあるし、そこは気をつけなくてはならないな。
その後も僕達は意見を出し合った。結論から言うとまったく最初とは変わらず、あっちに着いてから探すことになった。何の時間だったのだろう?でも、それぞれのジャンルの書きやすそうな所、難しい所など把握できたので無駄ではなかったのかもしれない。
「おっはよー!いやぁ、いい朝ですな!」
そこに朝からハイテンションの信也と、温度差のある鈴佳がやってきた。今の信也との温度差で言ったら、僕達も相当あると思う。
数分後、バスが到着し僕達は乗り込んだ。ここから約1時間。バスがどんどん進むにつれ窓の外の景色が変わっていく。
目的地のバス停まで残り二駅ぐらいになると、お店はおろか民家もない山奥へと入っていた。本当にこの先に別荘なんてあるのかと不安になる。
目的地のバス停に降りてもその不安は無くならなかった。見渡す限り木。森で迷子になった気分だ。
「よし、じゃあ行こうか!ここから徒歩10分ぐらいかな?」
そう言って凜は森の中を進んでいく。僕達はここに居るわけにもいかず、恐る恐る着いていく。
周りの景色に圧倒されてしまっていたせいか、凜が進んでいる所が道になっているのに気がつかなかった。こういう所にいると、こんな人工的なものでもホッとする。
それから、何の問題もなく僕達は進んでいった。歩き始めて7分ぐらいが経っただろうか。急に目の前に大きな建物が見えてきた。まるで、洋画に出てくる洋館みたいな建物だ。凜の親戚以外にも別荘を建ててた人がいたようだ。
「よし!着いたよ!」
凜はそう言いと大きく深呼吸をする。
「え?着いたって別荘は?」
信也が僕と鈴佳の気持ちを代弁してくれる。
「え?いや、それだよ。目の前の建物」
そう言いって凜が指差したのは、その大きな建物だった。
「えーーーーー!!」
3人の声が重なって森に響きわたる。
それはこんな反応にもなる。だって目の前の建物、一般人なら到底手の届かないものだ。つまり、凜の親戚ってお金持ち!?
「え?凜の親戚って何者?」
またまた、僕達の代弁をしてくれる信也。
「え?まぁ、お金持ちなのかな?なんかの社長って言ってたっけ?マンションもたくさん持ってるって話もしてたような?」
こ、これはリアルなお金持ちだ!僕達はしばらくその別荘?を唖然と見つめていた。
別荘に入ると映画でしか見たことのない大きなホールが出迎えてくれた。なんかもう、あれだけの外観なんだ、何も驚かないよ。
「よし!まずは荷物をどうにかしなきゃだね!階段を上がって右に行けば部屋がいくつかあるから、好きな所使っていいよ。あと、ここから右の部屋に行けばリビングとキッチン。左に書斎があるからそこで本を探してね」
そう言いって凜は階段を上がっていく。
僕達の思考は驚きで停止している。僕達は言われるがままそれぞれ部屋に入っていった。
部屋には大きなクローゼットに大きな机、テレビにこれまた大きなベッド。本当にこれが別荘なのかと疑問に思うほど豪華なものばかり、僕は非日常に放り込まれた感覚でいた。
信也は順応が早く、いや好奇心が旺盛なだけなのか、別荘中を見て回っている。僕と鈴佳はとりあえずリビングとキッチンを見回っていた。
キッチンは僕の家よりも大きくて綺麗で何でも揃っている。リビングも僕の家の3倍以上の広さはあるだろう。なんかもうお腹一杯だ。
「よし!じゃあ、読書感想文終わらせちゃおうか!」
凜はパンっと手を叩く。もう、読書感想文のことなんて忘れていた。凜が言うまで気づかなかった。もともと、読書感想文のために1日増やしたのだからしっかりやらないと。
凜は歩き回っていた信也を連れくると出でていった。僕と鈴佳はさっき教えてもらった書斎へと向かった。
書斎の扉を開くと、そこの景色にもまた僕達は唖然とした。もう書斎というより図書館だ。数えきれないほどの本に、椅子と机。コーヒーのマシン。シックで落ち着いた雰囲気だ。
僕達はしばらく入口で立ち尽くしていた。
それから、僕達はまず読書感想文のための本を探していた。
「なにか、面白そうなものないかな?」
僕は棚を眺めていると、一冊の本に目が止まった。
「悪魔辞典?」
少し分厚いその本を僕は手に取ってペラペラとペースをめくる。
「なんか面白そうなもの見つかった?」
そこに鈴佳が近づいてくる。
「ん?いや、なんか目に止まって。アビス?」
僕はあるページで手を止めた。一つだけ願いを叶えてくれる悪魔アビス。
「アビス!?」
僕の見ているページを覗きこんで驚いた声を漏らす鈴佳。
「え?知ってるの?」
「ん?あ、いや知らない」
鈴佳は首を傾げる。
僕はそのページに書いてあるアビスの説明を読み上げた。
「悪魔アビス。彼は人々の強い想い産まれる。強い想いに反応したアビスは、その想いを発した人の前に現れて一つだけ願いを叶えてくれる。その代わりにアビスが出した代償を支払わなけれならない。その代償は重いものだという。まだ、アビスは色んな姿になり、人、動植物にその姿を変える」
なんというか天使のような悪魔だ。そこで僕はある話を思い出した。
「そういえば、家の母さんが昔悪魔にあったって話てたな。なんか、その時流行ってた願いが叶う都市伝説みたいことを試したら、悪魔が現れたらしい。そして、その悪魔に願いを一つだけ叶えてくれると言われて、母さんは父さんと将来結婚したいっね願ったんだって。それで悪魔にその代償にお前の大切なものを奪うって言われて了承したんだって。そこで目が覚めて、夢だったのかなんだったのか分からないって話してた。まぁ、実際に父さんとは結婚できたし、別に大切なものを無くした訳でもないから夢だったんだろうけどってさ」
僕は一通り話すとパンっと本を閉じて棚に戻した。
「さぁ、そんなことより読書感想文をやらなきゃね!」
僕はそう言って本探しに戻った。しばらくその場で何か考えているような表情を浮かべて、鈴佳も本探しへと戻っていった。少し気になったけど、早く読書感想文を終わらせたいのでそこからは集中して本探しに取り組んだ。
―――「アビス」その言葉に私は言葉をなくした。アビスってあの時の悪魔の名前と同じだ。
するの蓮くんがアビスについての説明を読み上げてくれた。私はそれを聞いて確信した。あの時出会った悪魔と同じだ。あの時は黒猫だったけど、姿を変えることができるなら納得がいく。
その後、蓮くんがお母さんと悪魔の話を聞かせてくれた。私はその話のあるところに引っかかった。それは「都市伝説」という部分だ。なんでも、アビスは人の想いに反応するらしい。都市伝説は人が作った、言わば都市伝説は人の想いから出来たものだ。あの日のサークルも、確か都市伝説になっていて………。
つまり、アビスはサークルというよりは、都市伝説に反応したのかもしれない。願い事が叶ってほしいという想いから生まれ都市伝説。私はしばらくその場に立ち尽くした。
そんな私を蓮くんは心配そうにチラチラと見てくる。私は心配させないように読書感想文の本探しに戻った。
「恋愛」の人気作品
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