君が見たものを僕は知っている
第6話 勝負!
それから僕は意識しながらも普通に接するように心掛けていた。そのおかげで良くも悪くも今まで通りに話せるようになった。
それから数ヶ月がたった。
「あーあ、来週から期末テストかぁ~」
学校からの帰り道、テストの恒例の愚痴をこぼす信也。まぁ、僕だってテストは嫌いだから気持ちはよくわかる。
「お前らはいいよなぁ~、頭がよろしくて」
信也はこう言うが、僕と鈴佳は平均ぐらいだ。凜は学年トップを争うレベルだけど。
「そんなこと言うなら少しは勉強でもしてみたら」
僕は絶対に無理だと思う提案をする。
「いやぁ~、それができたら苦労しないですよ~」
信也はハァーとため息をつくと、首を横に振る。
「じゃあさ、次のテスト、全部平均超えたらなんか奢ってやるよ」
信也のやる気を出すための策。まぁ、今適当に考えたのだけれど、我ながら割りといい提案じゃないかな?いや、信也も餌で釣られるほど馬鹿じゃないか。
「本当に!何でもいいんだな!?絶対だぞ!」
前言撤回。やっぱり信也はアレでした。予想以上の食いつきに驚く。でも、信也のこういうところは嫌いじゃない。
「ああ、いいよ。何でも奢ってやるよ。まぁ、平均点とれるなんて思っていないけどね」
更にやる気を出してもらうために挑発してみる。
「なぁ!よっしやってるよ!」
見事に挑発にのった。なんか、信也の取り扱い方法がわかった気がする。
「というわけで、凜さぁ~ん。お勉強おしえて!」
信也は甘えた声で凜にお願いをする。それは予想外だった。いや、考えればわかった事かもしれない。まぁ、やる気になってくれるのは素直に嬉しい。
別に信也が勉強しなくても僕は困ることはない。でも、やっぱり友達として出来ることをしてあげたかった。
「わかった!そういうことならいいよ!でも、私が先生をしてもし、平均点を超えたら、チームプレーということで、私にも何か奢って!」
え?これはまたまた予想外の展開。まったく、凜は抜け目がないというか。くそ、ここは腹をくくるしかない。最初に提案したのも僕な訳だし。
「うん。わかった!じゃあ、もし平均点を取れなかったら僕と鈴に何か奢ってくれるってのは?」
最初は平均点を取れなかった時の罰ゲームは考えてなかった。でも、学年トップクラスの凜がついているのなら話は別だ。
「よし!やってやろうじゃないか!目にもの見せてやろうぜ!」
信也と凜は強く握手を交わす。
「え?私も奢ってもらっていいの?」
鈴佳が申し訳なそうに手をあげる。
「うん!2対2ってことでさ!」
凜がグッと親指を立てる。
「よーし!そうと決まれば早速勉強だぁ!凜の家にいっていいか?」
「うん!ビシッバシッいくから覚悟しなさいよ!」
そう言うと二人は走って帰っていった。
なんというか純粋とか言うか。しかもこの戦い、僕達は特に何もしなくていいのだ。ただ、自分のベストを尽くすだけ。あとは、信也の結果を待つだけ。ただ、それだけ。楽して勝てるかもしれない。流石にそれは悪いから、もし勝ったら駄菓子とかにしとこうかな。
僕達はゆっくりと家路を歩いていた。
「ハァー、さっきは信也くんのこと言ってたけど、私も人のこと言えないかもしれないなぁ。まったく勉強してないし」
鈴佳は深いため息をついている。
「そんなことないでしょ?なんだかんだいつも平均より上にいるじゃん。アレか?まったく勉強してなくても、前日とかテスト前に教科書暗記するタイプ?」
実際、僕はそのタイプで。僕の場合、だいたい出る内容がわかってしまうのだ。これは誇るべき特技かもしれない。
「うーん。一応人並みの勉強はしてるんだけどね。でも、やっぱり足りないから、いつもあんな成績なんだろうなぁ~。そうわかっていても、やらないんだけどね」
鈴佳はえへへっと笑う。
「まぁ、そんなもんだよね~。僕も信也みたいに餌があれば釣られるんだけどね。そこまで欲しいものとか、食べたいものとかないしなぁ」
やる気がでるような事があれば、僕も頑張れるはず。やる気が出ることかぁ~。やっぱり思い浮かばない。
「うーん。やる気が出るかは分からないけど、私も勝負してみない?」
いきなりの提案で僕は驚いた。いや、僕もさっき信也にやったけれども。
「勝負か。面白そうだし、勝負形式だとやる気は出るけど、あとは懸けるものだよね。それによってはやってもいいけどね」
勝負をするのは別に問題はない。問題は懸けるもの。さっきも言った通り僕には欲がない。
「うーん。じゃあさ!もし負けた方は、勝った方の言うことをなんでも一度だけきくってのはどう?」
「え!?なんでも!?」
僕は何を慌てているのか、何を考えているんだ。
「あ、もしかしてエッチなこと考えたでしょう?」
鈴佳はプイッとそっぽを向く。でも、すぐに呟いた。
「まぁ、でもなんでもだから、そういう事でもいいよ」
「へぇ!?」
思わず情けない声を出してしまう。みるみる体温が上がっていくのが分かる。
「フフッ。でも、蓮くんが勝てたらだけどね」
鈴佳はニコッと笑いながら、上目遣いで僕を見てくる。その表情に胸がドクッと脈をうつ。
「いや、何をいってんだよ。馬鹿じゃねぇの。なんで僕がそんなこと!」
かなり動揺してしまっている。頭がうまく回らない。
「え~、私じゃダメ?」
鈴佳は今まで聞いたことない甘い声をだす。もうヤバい。沸騰しそうだ。なんか、今日の鈴佳は変だ。
「フフッ。あははは!ごめんごめん。蓮くんの反応が面白かったからつい」
鈴佳は腹を抱えて笑う。
男の子の心を弄んで。こうなったら。
「よし!わかった!その勝負を受けよう!僕が勝ったら本当になんでしてくれるんだな!よし、楽しみだな。一日中、遊んであげるからね、朝も夜もね」
僕はサラッと鈴佳の頭を撫でながら、ニヤッと笑う。僕なりの精一杯の仕返しだ。僕だってかなり恥ずかしい。
「へ!?ど、どうしたの!?そんな、な、なにを……」
鈴佳は顔を真っ赤にして分かりやすく動揺している。
その後僕達はしばらく口を聞かなかった。ただただ恥ずかしかった。鈴佳とこんな話したこと無かったし。お互いに顔を真っ赤にしている。夕日のせいにしたいけど無理がある。
なんだかこの沈黙も恥ずかしくなって僕は口を開く。
「ま、まぁ、さっきの話は無かったことにして、勝負はいいかもね。勝ったら言うことを聞くってことでさ」
「う、うん。そうだね、じゃあ、勝負しようか」
こうして、僕達は期末試験の点数で勝負することとなった。
それから、二人はお互いの顔を見るのも恥ずかしくて、目も合わせずに「さよなら」を言って別れた。
僕は部屋になって一人で考える。なんか勢いで勝負するって言ったけど、もし勝ったらどうしよう?何でも言うことを聞いてくれると言っても正直、思いつかない。
欲しいものはない。行きたいところも特にない。そうなるとやっぱり…………。いやいや、何を考えてるんだよ!落ち着け!と、とりあえずそれは後で考えることにして、勉強でもしようかな。
僕は珍しく机に向かって勉強を始めた。
―――ハァー、今日の私、なんか大胆だったな~。私は湯船に浸かりながら帰り道の会話を思いだしていた。会話を思い出してまた顔が熱くなる。それをごまかすようにお風呂の中に潜る。
「パァ!」
私は苦しくなって顔を出す。そして天井を見上げる。
もし、私が勝ったら何でも言うことを聞いてくれるのかぁ~。実はずっと前からやりたい事があった。蓮くんとじゃなきゃ出来ないこと。でも、きっと蓮くんは恥ずかしいから嫌だって言うだろう。だったら、この際に言ってみようかな。もし、勝ったら言ってみようかな。
よし!そうと決まれば、私は湯船から勢いよく立ち上がる。
「よーし!絶対!絶対に蓮くんに勝ってやる!そして、絶対にアレを一緒にやるんだ!頑張るぞーー!!」
私の声がお風呂場中に反響していた。
それから数ヶ月がたった。
「あーあ、来週から期末テストかぁ~」
学校からの帰り道、テストの恒例の愚痴をこぼす信也。まぁ、僕だってテストは嫌いだから気持ちはよくわかる。
「お前らはいいよなぁ~、頭がよろしくて」
信也はこう言うが、僕と鈴佳は平均ぐらいだ。凜は学年トップを争うレベルだけど。
「そんなこと言うなら少しは勉強でもしてみたら」
僕は絶対に無理だと思う提案をする。
「いやぁ~、それができたら苦労しないですよ~」
信也はハァーとため息をつくと、首を横に振る。
「じゃあさ、次のテスト、全部平均超えたらなんか奢ってやるよ」
信也のやる気を出すための策。まぁ、今適当に考えたのだけれど、我ながら割りといい提案じゃないかな?いや、信也も餌で釣られるほど馬鹿じゃないか。
「本当に!何でもいいんだな!?絶対だぞ!」
前言撤回。やっぱり信也はアレでした。予想以上の食いつきに驚く。でも、信也のこういうところは嫌いじゃない。
「ああ、いいよ。何でも奢ってやるよ。まぁ、平均点とれるなんて思っていないけどね」
更にやる気を出してもらうために挑発してみる。
「なぁ!よっしやってるよ!」
見事に挑発にのった。なんか、信也の取り扱い方法がわかった気がする。
「というわけで、凜さぁ~ん。お勉強おしえて!」
信也は甘えた声で凜にお願いをする。それは予想外だった。いや、考えればわかった事かもしれない。まぁ、やる気になってくれるのは素直に嬉しい。
別に信也が勉強しなくても僕は困ることはない。でも、やっぱり友達として出来ることをしてあげたかった。
「わかった!そういうことならいいよ!でも、私が先生をしてもし、平均点を超えたら、チームプレーということで、私にも何か奢って!」
え?これはまたまた予想外の展開。まったく、凜は抜け目がないというか。くそ、ここは腹をくくるしかない。最初に提案したのも僕な訳だし。
「うん。わかった!じゃあ、もし平均点を取れなかったら僕と鈴に何か奢ってくれるってのは?」
最初は平均点を取れなかった時の罰ゲームは考えてなかった。でも、学年トップクラスの凜がついているのなら話は別だ。
「よし!やってやろうじゃないか!目にもの見せてやろうぜ!」
信也と凜は強く握手を交わす。
「え?私も奢ってもらっていいの?」
鈴佳が申し訳なそうに手をあげる。
「うん!2対2ってことでさ!」
凜がグッと親指を立てる。
「よーし!そうと決まれば早速勉強だぁ!凜の家にいっていいか?」
「うん!ビシッバシッいくから覚悟しなさいよ!」
そう言うと二人は走って帰っていった。
なんというか純粋とか言うか。しかもこの戦い、僕達は特に何もしなくていいのだ。ただ、自分のベストを尽くすだけ。あとは、信也の結果を待つだけ。ただ、それだけ。楽して勝てるかもしれない。流石にそれは悪いから、もし勝ったら駄菓子とかにしとこうかな。
僕達はゆっくりと家路を歩いていた。
「ハァー、さっきは信也くんのこと言ってたけど、私も人のこと言えないかもしれないなぁ。まったく勉強してないし」
鈴佳は深いため息をついている。
「そんなことないでしょ?なんだかんだいつも平均より上にいるじゃん。アレか?まったく勉強してなくても、前日とかテスト前に教科書暗記するタイプ?」
実際、僕はそのタイプで。僕の場合、だいたい出る内容がわかってしまうのだ。これは誇るべき特技かもしれない。
「うーん。一応人並みの勉強はしてるんだけどね。でも、やっぱり足りないから、いつもあんな成績なんだろうなぁ~。そうわかっていても、やらないんだけどね」
鈴佳はえへへっと笑う。
「まぁ、そんなもんだよね~。僕も信也みたいに餌があれば釣られるんだけどね。そこまで欲しいものとか、食べたいものとかないしなぁ」
やる気がでるような事があれば、僕も頑張れるはず。やる気が出ることかぁ~。やっぱり思い浮かばない。
「うーん。やる気が出るかは分からないけど、私も勝負してみない?」
いきなりの提案で僕は驚いた。いや、僕もさっき信也にやったけれども。
「勝負か。面白そうだし、勝負形式だとやる気は出るけど、あとは懸けるものだよね。それによってはやってもいいけどね」
勝負をするのは別に問題はない。問題は懸けるもの。さっきも言った通り僕には欲がない。
「うーん。じゃあさ!もし負けた方は、勝った方の言うことをなんでも一度だけきくってのはどう?」
「え!?なんでも!?」
僕は何を慌てているのか、何を考えているんだ。
「あ、もしかしてエッチなこと考えたでしょう?」
鈴佳はプイッとそっぽを向く。でも、すぐに呟いた。
「まぁ、でもなんでもだから、そういう事でもいいよ」
「へぇ!?」
思わず情けない声を出してしまう。みるみる体温が上がっていくのが分かる。
「フフッ。でも、蓮くんが勝てたらだけどね」
鈴佳はニコッと笑いながら、上目遣いで僕を見てくる。その表情に胸がドクッと脈をうつ。
「いや、何をいってんだよ。馬鹿じゃねぇの。なんで僕がそんなこと!」
かなり動揺してしまっている。頭がうまく回らない。
「え~、私じゃダメ?」
鈴佳は今まで聞いたことない甘い声をだす。もうヤバい。沸騰しそうだ。なんか、今日の鈴佳は変だ。
「フフッ。あははは!ごめんごめん。蓮くんの反応が面白かったからつい」
鈴佳は腹を抱えて笑う。
男の子の心を弄んで。こうなったら。
「よし!わかった!その勝負を受けよう!僕が勝ったら本当になんでしてくれるんだな!よし、楽しみだな。一日中、遊んであげるからね、朝も夜もね」
僕はサラッと鈴佳の頭を撫でながら、ニヤッと笑う。僕なりの精一杯の仕返しだ。僕だってかなり恥ずかしい。
「へ!?ど、どうしたの!?そんな、な、なにを……」
鈴佳は顔を真っ赤にして分かりやすく動揺している。
その後僕達はしばらく口を聞かなかった。ただただ恥ずかしかった。鈴佳とこんな話したこと無かったし。お互いに顔を真っ赤にしている。夕日のせいにしたいけど無理がある。
なんだかこの沈黙も恥ずかしくなって僕は口を開く。
「ま、まぁ、さっきの話は無かったことにして、勝負はいいかもね。勝ったら言うことを聞くってことでさ」
「う、うん。そうだね、じゃあ、勝負しようか」
こうして、僕達は期末試験の点数で勝負することとなった。
それから、二人はお互いの顔を見るのも恥ずかしくて、目も合わせずに「さよなら」を言って別れた。
僕は部屋になって一人で考える。なんか勢いで勝負するって言ったけど、もし勝ったらどうしよう?何でも言うことを聞いてくれると言っても正直、思いつかない。
欲しいものはない。行きたいところも特にない。そうなるとやっぱり…………。いやいや、何を考えてるんだよ!落ち着け!と、とりあえずそれは後で考えることにして、勉強でもしようかな。
僕は珍しく机に向かって勉強を始めた。
―――ハァー、今日の私、なんか大胆だったな~。私は湯船に浸かりながら帰り道の会話を思いだしていた。会話を思い出してまた顔が熱くなる。それをごまかすようにお風呂の中に潜る。
「パァ!」
私は苦しくなって顔を出す。そして天井を見上げる。
もし、私が勝ったら何でも言うことを聞いてくれるのかぁ~。実はずっと前からやりたい事があった。蓮くんとじゃなきゃ出来ないこと。でも、きっと蓮くんは恥ずかしいから嫌だって言うだろう。だったら、この際に言ってみようかな。もし、勝ったら言ってみようかな。
よし!そうと決まれば、私は湯船から勢いよく立ち上がる。
「よーし!絶対!絶対に蓮くんに勝ってやる!そして、絶対にアレを一緒にやるんだ!頑張るぞーー!!」
私の声がお風呂場中に反響していた。
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