この恋が繋がる時 俺の恋が終わる

日ノ丸太郎

1.5話 最近の悩み

 蝉達の奏でる愛の大合唱が、部屋の沈黙をつれていった。だが、ペラ、ペラとページをめくる音が、蝉達の合唱の邪魔をする。 確実にペースがあわないのは、 テンポの差が激しいからだろう。

「うーん…うーーん…わからん…まったくもってわからない…どうすればフラグやイベントってやつは立つんだよ」

漫画を机の上に置き紅葉は椅子に寄りかかった。 そこからしばらくは天井を意味もなく見つめていた。

ちなみに、三月の恋を実らせると決心した日からは既に3日経っている。

ふと、時計を見ると時刻は17時30分。 まだ、読みはじめてから30分もたっていないことに気づく。

(恋愛漫画を買ったのはいいが、見てもまったくわからん…というか、恋愛系は最初に好きなった人が勝ちっていうか、ヒロインの区別がちゃんとついてて参考にならねぇ)

「はぁ~」

「おにいー!」

ドアを開く音が消えるぐらい大きな声で朝海はそう言った。
紅葉は朝海のほうに椅子を180度回した。

「何のようだ妹よ、おにいは今凄く悩んでて暇じゃないんだ」

「んなもの知らないけどさ、て! おにいどうしたのさ机の上にあるやつ! 病んだ?」

首をかしげて可愛らしく言う朝海に対して

「いや! 何で恋愛ものの漫画を読んだら『病んだ』認定されなくてはいけないだ俺は!」

と、激しくつっこんだ。

「いや、おにい読まなそうだし、まぁ いいや」

「よくないぞ!?」

「それよりさ、明日 真理ちゃんと先日できた流れるプールに行くんだけどさ、おにいも来ない?」

(俺にイベントが発生してどうするんだよ……ん? イベント発生したじゃん)

「おい、妹よ」

「ど、どうしたのおにい?」

「ナイスアイディアだ!」 

「え?」

(そうだよ、起きないのら起こせばいい。 何でこんな簡単なこともわからなかったんだ俺は)

「お兄ちゃん気分がいいから明日のプール代、飲み物及び食い物代はお兄ちゃんが出してやろう」

紅葉は椅子から立ち上がり腰に手を当てそう言った。

「マジ! おにい太っ腹~真理ちゃんにも言っとこ~と 」

朝海はその場で携帯を取り出すと5秒もたたずに文字をうち終えた

「じゃ、おにい  明日は10時のバスに乗る予定だから、9時45分には家出るからね。 それまでに準備終わらせといて~」

そう言いながら妹は部屋を出ていった。

「嵐のようなやつだったとは、こういうやつのことを言うのかもな」

そんなことを口に出しながら紅葉は椅子を180度回転させ、再び恋愛漫画を手に取った。 

彼の貯金は残り1万5000円である。

コメント

  • 日ノ丸太郎

    ですね!

    0
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