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新説・カチカチ山

神野守

新説・カチカチ山

 熱かった! あれは本当に熱かった! 今まで生きてきた中で、これほどの熱さを味わった事がなかった。乾いた枝は良く燃えると言うが、本当だったんだな。身に沁みてわかったよ。

 今にして思えば、あいつが言ってたあんな名前の鳥なんているはずがない。あの時は山の名前からして納得してしまったが、とんだペテン師だな、あいつは。

 それに何だよ、あの薬は。火傷やけどによく効くって聞いたから塗ったのに、かえって火傷がひどくなったじゃないか。何だったんだあれは。

 まあでも、大好きな魚をたくさん獲れる海に連れてきてもらった。しかも、この茶色い船は大きいからたくさん持って帰れるぞ。今日は思う存分魚を食ってやる。

 あれ? おかしいな。この船、沈んでないか。やばい! よく見ると底に穴が開いて、そこから水が入ってくる。

 えっ? 人間の指のようなものが出てきたぞ。わっ! 手首だ! 俺の足を掴んでやがる。おい、やめろ! 放せ! 誰だ、お前は?

 ん? 顔が出てきた。その顔、どこかで……。あっ、もしかしてお前は、あの婆さんか? 死んだんじゃなかったのか?

 やめろ! 放せ! 引っ張るな! ぶくぶくぶく……。た、助けてくれー! おーい、ウサギさーん! た、助けてくれー! ぶくぶくぶく……。

 俺はもうダメか……。あのウサギの奴、俺を指差して笑ってやがったな。くそ、あいつめ。

 しかしこの婆さん、どこまで俺を引っ張っていく気だ。ん? 違うじゃねえか。これはあの婆さんじゃねえ。顔はそっくりだが、ほくろの位置が違う。

 そうか、双子か。姉と妹が入れ替わってたのか。なるほど。あの爺さんを巡って、姉と妹が対立してたんだな。あの爺さんに横恋慕した妹が姉を俺に殺させ、まんまと姉の代わりになるつもりなのか。そして、俺を口封じに殺す。ウサギも騙されて利用された口だな。

 しかしこの婆さん、泳ぎが上手いな。海女あまなのかな? 全てはこの婆さんの狙い通りか。こいつは参った。俺のお株を奪われて、すっかりかされてしまったようだ。ぶくぶくぶく……。

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