SCPー花言葉

明里

ストック

アオイside
「…そう…なんだ。」
ヒスイは床に散らばっている人形のうち、右手に一番近かった今にも破れそうなボロボロの羊の人形を掴みながらそう呟く。
静かな雰囲気に俺も黙り込むと、ヒスイが俺の袖をクイッと掴み、視線を集中させるように羊の人形を突き出す。
人間が俺の服に触れることすら抵抗があったはずなのに、ヒスイに触られるのは全く抵抗がなかった。
逆に嬉しいという気持ちとまた甘ったるい動悸が俺を支配し、よく集中しないと顔が真っ赤になりそうだった。
「…僕…の、ここ…に来た…原因…ひとつ。」
ぽつりぽつりと呟くヒスイは俺に向かって話しているはずなのに、やはりこちらに視線を合わせなかった。
目の前に突き出された羊はヒスイを見ているうちに拳銃に変わっていた。
近距離で拳銃があったから少したじろいだけど、何故か彼女が俺を撃つという考えは浮かばなかった。
「それ…拳銃だよね。拳銃をどうするの?」
ビビったという事実を隠したかったから、話を促した。

その瞬間、時が止まったようだった。
彼女が俺を初めて見てくれた。

とにかく嬉しかった。たまたまだとしても、彼女の翡翠色の視界に映るのは俺の姿。
頭が真っ白になって、喜びで心が埋め尽くされた。
「一回…だけ…見て…」
ヒスイの発言で我に返り、ヒスイの発言に頷いて肯定すると、ヒスイは拳銃を自分の頭に押し付ける。
自殺?いや、でも話の途中に自殺なんてするのか?
グルグルと混乱していると、彼女は躊躇いもなく銃で自分の頭を貫いた。
簡単に彼女はその場にパタリと倒れて、頭からは大量の鮮血が流れた。
血の気が引いたように、俺の頭は冷たくなっていった。
長い髪に血が浸されている光景をただ見つめ続けるしかできなかった。








長い時間見ていたと思ったが、実際には30秒程度しか経っていなかったらしい。
ヒスイの頭からはいつの間にか血も銃痕も消えていて、倒れて動かないはずの彼女はムクリと起き上がって虚ろに左右へゆれていた。
「え、な、あ、え?」
言葉が詰まって言葉が出てこない俺を、ヒスイは気にせずに見つめ続ける。
「…死にたくないと思えば死なない。…ね?…怖いで…しょ…?」
赤くなったベッドをヒスイは手で撫でる。撫でて行った所から、鮮血で赤くなったベッドは白く変わっていき、それはヒスイの艶やかな長い髪も同様だった。
「…それが施設に来た理由?」
やっと思うように動いた口から、疑問の言葉がでる。
施設に来るのは異常者だと思っていたから答えが意外すぎたのだ。
とすると、ヒスイはきっと特別な存在なんだ。
使えると思って連れてきたのだったら、この無表情も納得ができる。
この部屋は真っ白で、なんの面白みも持ってないから。
「…そう…かな。」
少しの間が空いて返ってきた肯定の言葉。
悲しいという感情に似ても似つかないような、諦めの気持ち。
ヒスイは俺とは異なる正常の人間。
だから









_もっと知りたい。
















閲覧ありがとうございました。
探究心というものは時に人を殺してしまうこともあれば、未来を良い方へ変える原動力でもあります。
つまりはどう捉えるかということですね。

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