SCPー花言葉

明里

シオン

ヒスイside
真夜中のはずなのに僕の見る箱庭の景色はいつでも明るい。
睡魔に負ける大人達は僕の事を恐れ蔑むわりには何もしない。
監視もつけなければ、南京錠や僕に鎖をつける訳では無い。
なのに、外に出ると処分される。
僕は死なない身体だけれど、痛覚は正常だから痛い思いはしたくはない。
不死身になんて、なりたくなかった。
「…姉様…」
僕は僕の神様を消してしまった。
なんであんな選択をしてしまったのだろう。
姉様を殺した世界なんて、僕なんて、大っ嫌いだ。
「ヒスイ、お姉さんいるの?いつか会ってみたいな〜!」
やめて、やめて、やめて、やめて、やめて。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
姉様ごめんなさい。僕が僕が全部悪いんです。
だから、だから、死なないで。
僕を置いていかないで。
待って、待ってよ。姉様のためなら、世界を壊すことだって。
だから、だから、いかないで。
「ヒッ…ご、ごめんなさい…ごめんなさい。」
嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌。
夢も明日も何もいらない。
姉様が生きていてくれたのなら、他には何も望まないから。
『裏切り者』
最後に聞いた言葉は僕の心をポッカリと開けさせる。
僕は僕自身を呪い続ける。


__手についた生暖かい血の感覚と最後に聞いたあの言葉は一生消えることは無い。


「ヒスイ!!!」
アオイの声は僕の心に土足で踏み込んでくる。
それが嫌なはずなのに、少しだけほんのちょっとだけど心地いい。
「アオイ…?」
そういえばなんでここにアオイがいるのだろう。
今は夜。しかも普通は寝ているような真夜中だ。
「え、っ!!…ヒ、ヒスイが?!お、俺の名前を呼んでくれた〜!!」
アオイは顔を赤く染めあげて、嬉しそうな目をこちらに向け続ける。
姉様だけがいた僕の世界に、アオイが優しくノックする。
けれども、僕はもう失いたくないから。
ドアを開けたくない。
箱庭の世界で篭っていれば安全だから。
「…帰って。」
もう何も信じたくない。
何かを愛しても、それは無意味だって分かったから。
全てを嫌いになれれば、無関心になれれば、苦しまずに済むのに。
「…ねぇ、ヒスイ。俺はね、固執し過ぎだとは分かってるんだけど、ヒスイのことを本気で愛しているから。なんでも言って。」
アオイはいつもその甘い言葉で僕を誘惑するけれど、アオイは僕と違っていつかはいなくなっちゃうから。
もう、もう、やめてよ。
お願いだから…!
「…じゃあ…じゃあもう、僕に関わらないでよ…!迷惑なんだよ…」
自分でもびっくりなほど大きな声で叫ぶ。
表情は変えようと思っても変えられないのに、こういう意味の無いことだけ簡単に変えられてしまう自分に吐き気がする。
アオイも驚いたようで目を丸くして固まっていた。
アオイが僕の心に居座らないように、手遅れにならないように。
僕が化け物である限り、僕は幸せになってはいけない。
___さようなら。アオイ___






「俺はなんでも言ってって言ったけどなんでもするとは言ってないよ。だから、そのお願いは答えられない。ごめんね。」
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで。
意味がわからない、理解できない。

もう来たくないと思えるほど、壊してしまえばいいのだろうか。
大切に扱わないことぐらい簡単に出来る。

ごめんなさい。
「…ごめんなさい。」
アオイの腹部にナイフを突き立てると同時にそう呟く。
苦しいなんて言葉でこの気持ちが表せていいものか。
お願いだから、もう僕に触れないでよ。
僕を怖がって、恐れて、嫌がって、顔も見たくないほどに嫌いになってしまえばいい。
あなたは…アオイは、僕にとって眩しすぎるから。
「…ヒスイ、俺は殺されたってヒスイの傍から動かない。嫌いでもいい、殺意があってもいい、なんならいくらでも利用していい。だからね。そんな言葉、言わないでよ。そんなに躊躇って震えながら、俺を刺さないで。」
ナイフがくい込んでいるはずなのに、絶対痛いはずなのに。
アオイは僕のことを抱きしめる。
優しく丁寧に僕のことを抱きしめるんだ。
決してこの心の傷は癒えることは無い。
でも、少しだけ。
心の中にアオイがいるんだ。
ナイフをゆっくり抜くと、溜めていた涙が溢れ出す。
僕の能力でアオイの刺傷を消しているのに、視界はどうやっても不安定のままだった。
「ねぇ…アオイ。アオイの気持ちにはやっぱり答えられないけど…友達って思っても…いい?」
涙を無理やり拭いて、僕はアオイの方を真っ向から見つめる。
アオイは真っ赤な顔をして、噛みきれない表情をするけれども、僕にはこれが精一杯だ。
姉様、どうか許してください。
いいえ、姉様は必ず許してくれないでしょう。
だから、どうか今だけ見ていないでください。










これ以上踏み込んで来たら、僕は本気でアオイを遠ざけるから。




















閲覧ありがとうございます。
花言葉とか、工夫してるつもりなので調べてみると納得出来るかも知れません。
かも←ここ重要

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