捻くれ男子とボクっ娘

きりんのつばさ

8話










「うむ中々キュンキュンする話じゃないか」

僕達は映画を見終えたあと建物の中をブラブラ歩いていた。

「……お前も女子らしい感情あるんだな」

「何を言っているんだい流唯。ボクだってこう見えてJKなんだよ? 同年代の女子の感情ぐらいあるさ」

「まぁそうか」

「あのヒロインには共感できるね。自分の思いを中々相手に告げる事が出来ない気持ちは良く分かる、分かる」

と大げさに頷く葵。

「共感出来るって事は葵もそんな感情を抱いた事あんのか?」

「まぁ昔だがね、ボクにも初恋というものがあったのだよ。まぁ結局何も言えずに終わってしまったが」

「へぇ……」

葵がその昔を思い出しているのだろうか懐かしむ様な表情を浮かべているのを横目に僕はこいつをそんな感情にさせた人間を見てみたいと思っていた。

「あっ今キミ、昔のボクの好きだった相手に嫉妬したのかい?」

「いや別に全く全然興味無い」

「……そこまで強く否定しなくていいと思うんだよね、ボクは」

「なんなら今のこの関係を譲ってやる」

正直その相手の方が葵も心から楽しめるだろうし、僕もこの引き受けると言ったが面倒な役割を外れるからお互いにとって悪くない手段だと思う。
……その男子の事はだって? 知らん。

「そこまでかい……と、とりあえずそろそろお昼にしようじゃないか、何食べたい?」

「特に決めてないが……お前、さっきポップコーンたらふく食べたのにまだ食べるのか?」

映画が始まるまでに1袋、映画の最中に1袋食べているのだから合わせて2袋食べている。
……僕は今までこんなにポップコーンを食べる奴を見たことも聞いたこともない。

「はっはっはっ〜
ポップコーンとご飯は別腹だよ」

と葵は自分の腹を触りながら言った。こんな細い身体の中にどうやってあんな量のポップコーンが入るのか知りたい。

「……スイーツと飯は別腹ってのは聞いた事あるがポップコーンとは聞いた事ねぇな」

「まぁボクは好き嫌いないからキミが食べたいので良いよ」

「まわらない寿司」

「……ねぇキミはボクの財布を破産させたいのか?」

とジト目で見られた。

「冗談だ」

「……キミの表情からだと冗談が分かりにくいな。とりあえずフードコート行こうか」

「そうだな。そこなら互いの好きな物を食えるからな」

「じゃあ行こうか」




と僕達は映画館のコーナーからフードコートのエリアに向かった。席は案の定だが結構一杯だった。

「うわぁ……人多いね」

「まぁ昼どきだからな」

「こんなに人がいると席見つけるの大変だね……どうする少し時間ずらすかい?」

「いや、少し待て」

僕は会場全体を見渡した。

「流唯?」

「ーー見つけた」

「えっ?」

「空いている席だよ。僕は昔から空いている席を見つけるの得意なんだよ」

僕は昔からこういう満席の場所から空いているところを見つけるのが何故か得意であった。

「わぉ、目立たない特技」

「率直な感想どうも、行くぞ」

「分かったよ」

と席の合間を横切りながら僕達は目的の場所向かって歩き出した。そしてここでも僕の見た目のせいか周りの人が僕達を避けていく。

「おぉ……やっぱり流唯って凄いね〜」

僕にとって恒例の光景を見ながら葵はクスクスと笑っていた。

「……馬鹿にしてんだろお前」



僕達は昼食を食べた後、再び施設内を歩いていた。

「で、何するんだ次は?」

基本的に今日のデートの計画は葵に殆ど投げているので僕自身何も考えていない。すると葵は顎に指を当てながら少し悩んだ後

「そうだね……ゲーセンなんてどうだろうか?」

「ゲーセンか……まぁいいか」

「では行こうじゃないか。フフフ、見せてあげようボクの超絶ゲームテクニックを……!!」

「誰も見たいとは言ってないがな」

「なんだい? ボクに負けるのが怖いのか?怖いの?怖いんでしょ? もうなら素直に言ってくれていいんだよ?」

「……」

……ウゼェ、とりあえずウゼェ。
何よりもこのドヤ顔がイラッとする。
自身があるのは良いことなのだろうけどここまで自慢気に言われると癪に触る。
そんな思いを抱きながら僕達はゲーセンに着いた。
そこには休日なのも相まって沢山の同年代がいた。

「じゃあまずはこれで見せてあげよう〜」

と葵が指を指したのがリズムゲームだった。
太鼓を付属のバチで叩き、2人で対戦出来てゲーセンの中でも人気のゲームである。

「分かった、僕もやるか」

「おっ、いいね。ボクが操作方法を教えてあげようか?」

「いや、いい。流石に分かる」

「そうかい? じゃあいくよ難易度は1番高いのを選んで……」

「じゃあ僕も同じ難易度で」

と僕もバチを使い、葵と同じ難易度を選んだ。

「えっ……本当にいいのかい?」

葵が若干不安そうに聞いてきた。それもそうだろうだって葵が選んだ難易度はクリアするのもかなり大変な難易度であり、選んだ曲も最高難易度のものである。

「あぁ大丈夫だ。それに……」

「それに?」

「さっきのお前の発言にちょっとイラッとしているからストレス発散になるだろ」

と僕は太鼓を叩きながらバチの感触を確かめていた。
……うん、これなら行けるな。

「あ、あれ……まさかさっきの発言根に持ってる?」

「いや全く。ほら始まるぞ?」

「う、うん……まぁボクが負けるはずがーー」

「さてやるか……
ーーとことん叩きのめしてやる」

「待って今リズムゲームであまり聞かない発言を聞いたんだけど気のせいかい!?」









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