捻くれ男子とボクっ娘

きりんのつばさ

6話







僕と葵が付き合っていると教室内で暴露?してから数日後、最初の数日こそ男子陣からの嫉妬の視線を感じたがこちらが逆に見たらビビってこちらを見なくなった。
……そんなに怖いかね僕の顔?
そんな風に思っていたら葵に

「そりゃキミはデフォルトが怖いからね〜はっはっ〜」

なんて笑いながら言われた。

そしてその日の昼


「ねぇキミ」

「なんだ?」

僕が弁当を持って席を外した時葵が近くに来た。彼女の手にも小さな袋があったので中身は多分昼食だろう。

「キミは今からどこに向かおうとしているんだい?こんな可愛い彼女ほっといて」

「昼飯だ
ーーここにいるとクラスの連中が怯えて飯を食えない」

そうなのである。
1年生の頃、普通に教室で飯を食べていたら教室から人がいなくなった。なんとクラスメイト達は別の教室に逃げていたのである。それ以降、僕は出来るだけ教室で食べない。

「あぁ……なんとも切ない悩みだね。
みんななんか怯えているみたいだ」

葵が目線で指した方を見るとクラス数人がチラチラとこちらを見ていながら昼食を取っていた。

「別に……今更慣れている」

流石に高校で1年間、こんな状況であったらこちらも慣れる。というか慣れざるおえない。

「よしボクも付き合ってあげよう彼女だし」

「いいのか? お前は人気者なんだからクラスの連中と食べた方がいいんじゃないのか?」

と僕が言うと葵は僕の耳元に口を近づけてひそひそ声で

「……何言っているんだい? 付き合っているんだから一緒にいないと怪しまれるだろ」

「……あぁ、納得」

確かに漫画やアニメでは付き合っているカップルは良く一緒に昼食を取っている場面を見る。仮とは言えども僕達は付き合っているのだからその必要はあるだろう。

「……悪いね
ーーところでどこに行くんだい? 彼女のボクが付き合ってあげようじゃないか〜」

と最初の“悪いね”以降は普通にクラスに聞こえる音量で聞いてきた。

「屋上だ」

「おぉ……流石不良らしい答え」

僕がその様に答えると葵は妙に納得した様に腕を組み、大げさに頭を振った。

「じゃ俺は行くからな」

何故かその行動がイラッときた僕は昼食を持って葵を置いていこうとした。

「ま、待ちたまえ彼女と置いていかないで欲しいな!?
ボクまだ準備出来てないのに。まったくせっかちな男は女子にモテなーー」

「……本当に行くぞ?」

「置いていかないで欲しいなボクを!?」



ガチャ

僕は屋上にあるドアを開けた。

「うわぁ……綺麗だね」

そこには丘から見える海の光景が広がっていた。
この学校がある場所は周りの立地に比べて小高い丘の上にあり、屋上から学校から見て南側に広がる海が綺麗に見える。

「この学校の屋上の景色は中々だ。それに関してはこの学校を選んでよかったと思うな」

「ボク入学してから始めて来たけど今まで何で来なかったんだろうと思ってしまうよ。ところで流唯?」

「なんだ?」

「何でこんな綺麗な景色が見えるのにボクら以外誰もいないんだい?」

葵が言うようにこの屋上に僕達以外誰もいない。

「……原因、僕だよ」

「キミが?」

「僕がいる場所に人が来ると思うか?」

「……何故だろう。
その言葉で納得してしまうボクがいるんだよね」

僕がこの場所に来た頃はまだ人がいたのだが僕が毎日来るようになると誰も来なくなった。まぁ僕もこの場所なら1人で昼食を食べれるから楽だと思い、使わせてもらっている。

「フン、今更これぐらい慣れたもんだ。早く食べるぞ」

「うむ、そうだね」

と2人とも持ってきた弁当を広げる。

「ねぇ流唯のお弁当は誰が作っているんだい?キミにしてはお弁当の中身の色が鮮やかだね」

「……一言余計だ。作っているのは母さんだ」

「ほほぉ〜あの美人のお母さんね。というかキミのお母さん何才なんだい?」

「確か30後半ぐらい40はまだいってない」

僕の答えが予想外だったのか葵は目を大きく開いて

「若っ!? というかキミ自体何歳だい!?」

「今……16だな。あと3ヶ月で17だ」

というか僕は留年してないのだからお前と同い年だと

「ま、待ちたまえ……なるとキミのお母さんは20歳ぐらいでキミを産んだのかい?」

「計算上はな」

「うわぁ……凄いとしか言えないよ……」

まぁ僕達の数年後に子供を産んでいるのだから子供ながら母さんは本当に凄いと思う。

「親曰く“デキ婚”だとさ」

「息子に言っちゃったよ!?
……でもそれなら納得だよ」

「それよりも葵の弁当は誰が作っているんだ?」

「フフフ、よくぞ聞いてくれたね。これはねボクの手作りなのだよ……」

「へぇ……料理出来るのかお前」

「まぁボクの親は帰ってくるの遅いからね。大体いつも1人で作って食べているよ」

勝手なイメージだがあの高そうなマンションに住んでいたら彼女の親はそれなりに高い立場にいるのだろう。だから帰ってくるのが遅いと思う。

「それぐらい料理が上手いなら本当の彼氏が出来た際に弁当作ってやれ」

食べたこと無いから葵の料理の腕がどういうのは分からないが弁当を見るからにそれなりの腕はあるように思える。

「そうだね、そうするとしようかな」

「なんなら村井にでも作ってやれ」

と僕がいうと葵は目を細め、見るからに不機嫌になり

「……彼とは付き合いたくないからこうしてキミといるんじゃないか、分かりたまえ」

「で、何であんなイケメンと付き合いたくないんだ葵は?お前とあいつって言えば学校内での美男美女で有名だろ」

「うるさいな、ボクが誰と付き合おうなんてボクの勝手だろう? しかも何でクラスの連中の話題の為にボクの貴重な時間を割かないといけないのさ」

確かに葵の言うことにも筋はある。クラスの連中は村井と葵が付き合っているのを見てただ楽しみたいだけなのだろう。それに絡まれる葵本人からしてみればたまったもんじゃないだろうとは思うのだが……

「……それを言うなら僕の時間はどうなんだ?」

葵はそう言うが何故関係無い僕が、こいつの問題で時間を割かれないといけないんだと思う。というか僕今回全く関係ないと思うのだが違うのだろうか?
僕の発言を聞いた

「あっ……そうだね……」

「はぁ……まぁいいか」

「この件が終わったら何か礼はするよ
ーーねぇねぇそれよりもさ」

「あぁ?」

「ボクらさ
ーーデートしない?」






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