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捻くれ男子とボクっ娘

きりんのつばさ

4話目






夏川と恋人の偽の恋人の関係をする事に決めた後僕らは一緒に登校していた。

「にしてもキミ凄いじゃないか」

「何がだ?」

「キミが現れた瞬間、周りの人がさぁーと避けていくのを見てボクは感動したよ」

声のトーンや口調で分かる。
……こいつ僕を見た人が逃げていくのを面白がっている。しかも僕がただ歩いているだけというのも含めてだろう。

「あぁ?」

「……今の発言はボクが全面的に悪かった。謝ろう、そしてその怖い顔を止めよう。周りの人が泣きそうだよ、ちなみにボクもちょっと怖い」

……じゃあ下手な事を言うなよ、思ったが口に出しても意味は無いと思うので言わない事にした。


夏川と話しながら(と言っても専ら夏川が話を振ってきて、それに対して僕が適当に相槌を打っている)登校していると目の前には高校の門があった。

「なんて話をしていたらもう校門じゃないか。話をしながら登校するのは中々楽しいことなんだな〜」

「それはいつも1人で帰る俺に対する嫌味か?」

「いやいやこう見えてボクも大体1人で帰っているよ?だってクラスメイト待つと長いし」

「意外だな、お前」

僕の勝手な予想だと彼女はいつもクラスメイトと一緒に登校して下校すると思っていたので素直に告げると夏川は

「ギャップ萌えはどうーー」

何か言いかけていたが喋らすと面倒だと思い僕は先程よりも歩くスピードを上げた。

「さて遅刻遅刻」

「話を最後まで聞いて欲しいなぁボクは!?」

と後ろで夏川はそう情けない声を出しながら、僕に追いつこうと彼女自身もスピードを上げてきたのであった。



なんて言う夏川曰く“カップルがしそうな会話”をしながら僕達は自分達の教室に着き、夏川が教室のドアを開けてクラスの連中全体に聞こえる様に挨拶をした。

「みんな、おはよう」

だが彼女が挨拶をした瞬間、さっきまで友達と話していた奴ですら僕達の方を一斉に向いてきた。

「「ッ!?」」

そんなクラスメイト達を不思議に思ったのか夏川は僕の方を向いて

「おやおや、どうしたんだい? みんなボク達の方を見て固まっているけど?」

……その固まっている理由を話していいものかと1人で悩んでいると僕達の比較的近くにいた女子がやや怯えながら尋ねてきた。

「ね、ねぇ葵ちゃん」

「ん? なんだい?」

「な、なんで今日は八雲君と一緒に登校しているの?」

「何を言っているんだい? そりゃ恋人なんだから学校まで一緒に登校は当たり前じゃないか」

「「……」」

夏川がいつもの様に堂々と答えるとクラス中が更に静かになり、固まった。

「……だよな、こりゃ」

僕は1人でそう呟くしか無かった。

「ん? どうしたんだいみんな再び固まって?」

「あ、葵ちゃん?」

そしてその沈黙を破ったのは先程と同じ女子生徒だった。
……こいつ意外と勇気あんな。

「はい、どうぞ」

「葵ちゃんと誰が?」

「ボクと流唯が」

「はっ?」

僕は驚き、隣の夏川を見た。
今、こいつ僕の事を“流唯”って呼んだ?
まぁ確かに恋人なら互いに下の名前で呼ぶだろうけど、いきなり呼ばれたものだから一瞬驚いた。
何せ下の名前で呼ぶ人は今まで家族と親戚以外いなかったからである。

だがクラスは別の事で話題になっている様で……

「る、ルイ? そんな人いたっけ……?」

多分彼らの頭の中ではフランスの昔の王様の名前が挙がっているに違いない。
……要するに誰も僕の下の名前を“流唯”だと言うことに気づいていないのである。

「流唯って彼の事だよ、八雲流唯」

そんなクラスの雰囲気を察したのか夏川は僕の名前を改めて口に出した。

「「あっ……」」

そしてその言葉を聞いて一斉に納得するクラスメイト。

「……はぁ、まさか名前覚えられてない気がしていたがその勘が当たるなんてな」

そしてその状況に渋々納得する僕。
だがその表情が怖かったのか僕達に話しかけてきた女子生徒は僕の顔を見て表情を強張らせて

「ひ、ヒィ!? ご、ご、ごめんなさい!!」

全力で謝ってきた。
……個人的にお前だけじゃなくて夏川以外も同罪だろうから謝る必要は無いと思うが。
そんな様子を見ていた夏川は腰に手をあてながら

「こら、流唯。怖がらせちゃいけないだろ?
キミは元々顔が怖いんだから気をつけないとダメだよ」

とまるで説教の様に言ってきた。
彼女の言っている事は間違いでは無いのであまりきつく言い返せない。だがどうにかして一泡吹かせたいと思った僕に丁度良い案が頭に浮かんだ。

「……ちっ、分かった
ーー葵」

まぁ下の名前で呼ぶ程度なのだが。
流石に葵が僕の事を下の名前で呼んでいるのに対して“夏川”と呼んでいると不自然だろうし恋人っぽくない。
僕が下の名前で呼ぶと葵は一瞬キョトンとした表情を浮かべていたが徐々にニヤニヤした表情になってきた。

「おっ、やっとかい。ボクの事を名前で呼んでくれたね。感心感心〜頭撫でてあげようか?」

と言いながら僕の頭に手を伸ばしてくる。僕はその手を避けながら葵に対してクラスメイト達がいる方を指指した。

「「本当に付き合っているの!?」」

……ワンテンポ遅くないか?
どうやら僕達が下の名前で呼びあった事が僕達が本当に付き合っているとクラスメイトに認識させたようだ。

「あぁさっきから行っているだろ? ボクと流唯は付き合っていると、彼氏彼女の関係だと」


「う、嘘だろ……」

「夏川が取られた……」

「あぁ……マイエンジェル……」

葵が自身の言葉で“付き合っている”と言うと一気に膝から崩れる男子陣。まぁ確かに男子陣から葵の人気は凄かったと僕も記憶があったので当たり前か。
一方女子陣はというと……

「あ、葵ちゃんが付き合うなんて……」

「絶対八雲が弱みを握って言う事を聞かせているに違いないよ……だってあいつ不良だもん……」

「そうね……そうじゃないと、葵が付き合う訳ないよね。
ーーあんな怖い奴となんて」

……まぁ安定の“僕が何かか悪事をした”という結論でまとまりつつあった。この両極端な状況を見ていると改めて女子って大人だなと思わされた。

「まぁ……慣れたもんだな」

僕個人は悪者扱いされるのに慣れているため、別にこれぐらいどうって事は無い。

「……なんかキミは強いんだかよく分からないね。その強がりを見ているとさ」

「何年もやられたら慣れる」

「何とも言えないね」

「ーーちょっと待ってくれ夏川さん」

「……村井君」

崩れていた男子の中で1人、葵に声をかけてきたのはクラスメイトの村井勇助であり葵のこの反応を見ると、この村井という男子が今回の僕達の関係のきっかけみたいだ。

「夏川さん、君は俺が前から言っているのを知っていて、この男と付き合うのか?」

「だから前から言っているけどさ、ボクはキミが告白してきたら毎回断りを入れているはずだよ? その後、ボクが誰と付き合おうとボクの勝手だろ?」

「それでもだ!! それでも夏川さんはこんな不良と付き合ってメリットは無いだろ」

「赤の他人であるキミはボクのこれからに何故あれこれと口を出すんだい?」


「俺はただ夏川さんの事を思ってーー」

「それまでにしておけ」

僕は2人の間に身体を押し込んだ。
2人とも徐々にヒートアップしていたのを見て、流石に止めないと後が面倒だと思ったからである。

「……おい不良、お前に話は聞いてない」

村井は僕が間に入ったのが癪に触ったらしく、僕を睨みつけてくる。だが僕からすればその程度はまだ可愛いものだとすら思ってしまう。なので不思議と次の言葉が出てきた。

「人の事を不良と決めつけないでもらえねぇか?さっきから話を聞いていればお前は葵の話を聞こうとしてないだろが」

「お前が不良じゃないって? 笑わせんな。お前が不良だって事はみんな知ってるだろうが」

……村井は余程“不良の僕”が気にいらない様だ。
さて、こいつにはどの様にすれば黙るだろうかと頭の中で考えているとふと、時計が目に入った。
……そろそろだな。

「まぁそれぐらいにしておけよ優等生。
ーー先生来たし、先生に言っちゃうぞ〜?」

と僕がわざと煽る様に言ったと同時に担任が入ってきた。

「ほらお前ら座れ〜出席取るぞ」

「くっ、不良め……」

と悔しそうに言いながら村井は自分の席に戻っていった。

「……言っておいて律儀だな、あいつ」

僕は1人で聞こえない様に呟くと、葵の方に向いた。

「おい、葵」

「えっ」

「……あまり挑発するな面倒だ」

あのまま止めなかったら2人ともヒートアップして今以上に面倒な事になっていただろう。この場では僕のクラスにおける好感度は更に下がったが、元より低いので今更という感じである。

「そ、それはすまなかった。
ーー流唯、助かったありがとう」

葵はそう恥ずかしそうに言うと自分の席に戻っていった。

「なんか今日は……厄介な日になりそうだ……」







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