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豆腐メンタル! 無敵さん

仁野久洋

二日目欠席入浴中①

 入学二日目。俺は始業十分前には席につき、またグラウンドをぼーっと眺めていた。他の生徒たちも教室に入るとまずは自分の席につき、隣や後ろといった近場の人間と当たり障りの無い会話をしている。
 それは、見知らぬ環境に放り込まれた動物が「ここは安全だろうか? 危険な生物はいないだろうか?」と確認している様子に似ていると思う。今は居場所を確保するべき時なのだ。早く慣れた方が楽だから。


 そんな中、俺はどうしているかというと、ぶっちゃけ何もしていない。温い日射しの降り注ぐ窓際の席で、登校してくるやつらとかを、ただぼーっと眺めている。
 いつもそうなのだが、俺は新しいクラスになっても、自分から誰かに話しかけたりはしない。誰かが話しかけてくるのを待っている。人にはなにかしら共通点のある同属を見抜く力でもあるのか、そうしているとたいていなぜか気の合うヤツが話しかけてくるのだ。


 しかし、今回は少し違う展開になりそうだ。なぜなら、まだ誰も俺に話しかけてくれていないのだから。俺って結構人目を引くタイプだから、いつもならもうとっくに声をかけられていても不思議じゃない。
 まぁ、理由は分かっている。分かりたくはなかったけど、理解している。


「あ。八月一日ホズミだ」


 さっき教室に入るなり、明らかに敵意のこもった女子の声がしたからだ。俺は聞こえなかったふりをして着席し、すぐに窓の外に目を向けた。


「あいつ、昨日のさ」
「あー。ひどかったよねー。あんなにおどおどしている無敵さんに『死ね』とかさ。おめーが死ねよって思ったー(笑)」


 それは俺への陰口だった。
 ちょっと席が離れているし、俺は窓の外を見ているから平気だとでも思ったんだろう。仲良くなりたての彼女たちは、期せずして得た格好の話題に花を咲かせている。それはもう、キャッキャウフフと俺のことをボロクソに言っていた。
 ちょっとプルプルときてじわっときたけど、素知らぬふりを決め込んで、さらにデビルイヤーを行使した。すると。


「なにあいつ? 初日から目立ちたがりすぎじゃね?」
「連れてくるのを口実に、昨日初めて会った女子の手握るとか。セクハラセクハラ。あいつのあだ名、『ハラスメン』にしようぜ」
「なにそれちょっとかっこいい(笑)。ウケル(爆)」


 あっちはあっちで、男子が俺を楽しげにいじり倒していやがった。
 なんだこれ? おかしいな、雨も降っていないのに、なんだか窓ガラスが滲んでいるぞ。見えるもの全てがぼやけているけど、教室の中にまで降り込んでんの?


 こうして俺の「友達なんていらねーぜ」という願いは容赦なく叶っていた。
 無敵さん、マジ神。願い事を伝えなくても全力で叶えてくれるとか、最高神天照大御神級の神通力だろ、これ。
 自分、『無敵』舐めててすみませんでした。ちょっとだけ緩めにしてください。さすがにこれは酷いです、無敵神様。俺は額をゴンと机にぶつけた。
 しかしまぁ、これはこれでいいとも言える。因果応報。現状は甘んじて受け入れるのが俺の主義だ。なぜなら、それが反撃への第一歩となることを、俺は嫌というほど知って来たのだから。


 それに。
 ポジティブに考えれば、客観的に見て、こんなの本当にコメディだ。笑える余地がある分、まだマシだ。
 中学の頃の俺は、そんなの失くしてしまっていた。


 あんなシリアス展開は、もうごめんなのだから――




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