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神の玩具となった英雄の末路(仮名)

関 青葉

《自称美食家シスター・その1》

まだ見ぬ料理。私の食べた事がない味。
心が高鳴る。
ここ何十年も感じなかった高揚感。
私は既に飽きていたのかもしれない。
だからこそこの探究心を止めるすべを今の私は持ち得ない。いや、止めたくない。

マリアはコットの店へと朝早くから向かう。
気分の高揚によりその足取りはとても軽い
まるでスキップをしているかのような不思議な浮遊感。浮かれているのだろうか

——コンコン

店のトを叩く
そして心地よいベルの音と共に空いたドアの先には品揃え豊富な明るい店内
彼女も見た事が無いものが多く揃えられている
まず興味を引いたのは本の数だ。
教会にも本はあるがここまで多いとまるでここが本屋であるかのように錯覚させる
次に花
商店などで花を売っているのは珍しい
それも萎れずに最高の状態を保っている
専用の設備があったようにも見えないが恐らく魔法道具の力だろう

「いらっしゃいませ  ……おや?
おやおや、シスターマリアじゃないですか
今日はどのようなご要件でしょう?」

この店の店主、コット・ヴァーヴ。
ここまで大きい店にも関わらず店の従業員はコットを含め3人しかいない。

「コットさんおはようございます
すみません、今日はちょっと買い物じゃなくてアオイくんに会いに来たんです」

「アオイ…ですか。ふむ。」

コットは少し渋っている様に思える

「安心してください、別に彼を捕まえに来たわけじゃないんです。
今日は…そう…私の個人的な用事です」

「アオイー!起きてるだろー?
シスターがお前に用があるらしいから早く来なさーい!」

2階にいるであろう碧が呼ばれたのに気づいたのか上から小走りするような足音が聞こえる。
そして階段からひっこりと顔を出したパッと見女の子のように見える少年、碧だ。
昨日見た不思議な服装と違い今日は黒をベースとした一般的な服装だ

「おはようございます、アオイくん
昨日の今日で申し訳ないんですが来ちゃいました」

パァっと碧の表情が明るくなる
プレゼントを喜ぶ子供のような顔をする

「おはよう、ヴェルフェルさん
そういえば昨日ちゃんと話さなかったけど料理は食べに行くんじゃなくて僕が作るよ」

自分の料理はこの街の1番よりはるか上にいると言いたいのだろうか
だが彼の瞳は本気だ
まったく嘘をついているようには思えない
気になる。

「アオイくんが作るんですか?!
これはまた…。そういえばアオイくんは旅をしてるって言ってましたが何処から?」

「日本」

ニホン?…何処かの国の名前だろうか?
でもそんな国は聞いたことが無い…
だとすると街か村だろうか
少なくともこの辺のではないだろう。

「すみません…聞いたことが無いですね。
どんな場所なんですか?」

「どんな場所。んー。
退屈な場所だよ。実力主義で見合った実力が無ければ直ぐに捨てられる、そんな場所。
逆に実力がある人間にとっては天国だろうね」

実力が無ければ捨てられる…?
捨てるとは追放なのでしょうか…それとも。
ですが食事の場に暗い話題は不要ですね。

「そうですか…
所でどのような料理を作るのでしょうか!」

キラキラとしたマリアの表情に一瞬だけ顔をしかめた碧に彼女は気づくことは無かった

「んー。あんまり食材も無いし、ってかわかる食材があんまり無いからとりあえず魚料理になるかな」

魚料理。昨日お誘いした食事の場でも魚料理でしたがあれより美味しいと言うのをわかりやすくするための選択でしょうか?
となれば…これは期待できます。

「…来ないの?」

「え?」

考え込んでいる時に碧に突然声をかけられて驚いたのか変な声が出てしまった。

「いや、作る所見ないのかなって
あ、ごめんコット。勝手にキッチン使う話になってた、借りるよ」

「じゃあ俺の分もお願いしようかな」

わかったよと軽く笑ってキッチンへと潜る
作る所は確かに気になるがそれよりも色々気になる所があるのでコットと共に待つことにした。

「…コットさんとアオイくんはどのようなご関係で?」

急な質問に驚いたのかコットが目を見開く
少し悩んだ顔をしたが

「ふむぅ…商売仲間と言いますか。取引相手といいますか。共に暮らしているのであれば家族とも言えますね  なんとも難しものです」

と、よく分からない答えが返ってくる

「家族?…たしかコットさんのお子さんは二人とも女の子では?」

「えぇ、ですが彼との取引で両者承諾の上で共に暮らすことにしました 
っと言ってもこの店の2階を貸してるんでずが、家族には明後日帰った時に紹介しようかと思ってます」

取引で家族に?余計意味がわからない。

「ふむ。確かにそれは難しい関係ですね…?」

マリアのよくわかってない表情を見たからかコットがはっはっはと笑いマリアもクスッと笑ってしまった

「マリア様はアオイの事を気にしてるようですが何かありましたか?
もしや気がおありで?」

「いえいえ!まさか!
聞いてませんか?昨日の事件で彼が巻き込まれてそれを治したんですが異常がないか確認しに来たんです     …ついでに料理について。」

嘘は言ってない。
確かに昨日の事件についてはまだ気になることが沢山ある。
ただ料理の方が多少気になっているだけだ。
多少だ。
多少………
……8:2くらい。

「そう言えば確かにアオイの料理は気になりますな
私もアオイについてそこまで詳しく知ってる訳では無いのですが、彼の生まれ故郷は確かニホン?とか言う場所で聞いたこともないんですよ
一体どんな料理やら楽しみです」

ニホン…確かに聞いたことが無い名前。

「昨日お誘いしたお食事もあまり口に合わなかったようですし大丈夫でしょうか…ちょっと不安になってきました。」

そう話しているとキッチンの方から何やらいい香りがし出す。
この匂いは…

「…蒸し料理ですね」

「匂いだけでわかるってどんだけだよ。
あんまり匂いしないようにしてんのに…」

マリアの一言に碧はキッチンから少し顔を出して呆れたような口調で言う

「蒸し魚ですか、確かに昨日の料理も蒸し魚でした。ふむ、これで明確にどちらが美味しいか分からせるってことですね!」

「え、あれ蒸し魚だったの?実が焼き魚みたいな感じだったからてっきり焼き魚みたいな物かと思ってた」

………………。
焼き魚みたいな物って…。

「そんなレベルですか。」

「そんなレベル」

それだけ言ってまたキッチンに潜る。
そこまで言うレベルなのか……。

「アオイが失礼を。
申し訳ございませんマリア様。」

「いえいえ、気にしてませんよ
…あんまり。
まぁあそこまで言う彼の料理さらに興味が湧いてきました。」

マリアの期待はさらに高まる。
あぁ…未知の土地からやって来た未知の少年が作る未知の料理。
未知とは最高のスパイスと言わぬばかりに気持ちは高まる。

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