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神の玩具となった英雄の末路(仮名)

関 青葉

《こんにちは貴族様》


「おやおや、ヴァーヴ商会のコット様でいらっしゃいますね。お初にお目にかかりますアズル商店 店主アズル・ライダルと申しますぅ。 本日はどの様なご要件で?」

コット、リン、碧の3人はリンを買い取るためアズル商店へと足を伸ばしていた。

「おやおや、おやおやおや、おやぁ?
そこの少女の後ろに隠れているのはうちの奴隷ですねぇ?…こいつァ…どういう事ですかねェ…?コットさん?」

あぁこいつは不味いタイプだ。
非常にまずい。
アズルのイラついた態度に完全にリンが飲まれている。
最悪の事態が起こった場合逃げるつもりだったがリンがこうも腰を抜かして僕の袖を掴んでいては動きにくい。

コットは…?

碧は驚いた。
いつもニコニコしていたコットが真面目な顔をして睨みつけてくるアズルを前に全く怯んでいない。

「えぇ、アズルさん。
その事で今回はこちらへ足を運ばせていただきました。ここにいる私の友人、アオイくんがこの奴隷の事をとても気に入りまして、私としても友人の頼みは是非聞きたい。
それでこの奴隷を売って頂こうと思いましてね?」

「ほぅほぅ…ふぅむ。ま、いいでしょう」
 
アズルは多少悩みはするものの軽い返事で話に乗る。

「メスの獣人の子供は使い道が少ないですからねぇ…荷物持ちにと飼ってみたのですがまともに荷物も運べない役立たずなので買い取って頂けるのであればこちらも大助かりです」

コットはアズルの言い方が気に食わないようだ。
だがこの話はこちらにとっても助かる
あまり時間はない。
この場所にいつあの貴族が来るかもわからない状況なら早めに取引を済ませた方がいい。
アズルも商人だ。
売った相手の情報を売るほど馬鹿ではないだろう。
そうすればこいつは周りからの信用を落とす。

「わかった。
値段は獣人奴隷子供メスの相場でいいんですね?」

「えぇ、構いません。金貨12枚と銀貨31枚です」

この世界の通過は金銀銅貨なのか。
ふむ、31枚の銀貨。
銀貨50or100‪で金貨と言った所だろう。
そう考えれば結構いい値段だ、商店街での買い物には基本的に銀貨数枚か銅貨数枚で取引していた、奴隷は思ったより安いものでは無い…のかな。

「えぇ、確かに。
では、こちらを。」

アズルから渡されたのはスクロール。
恐らく契約書のようなもの、リンの全ての権利を形にした物だろう。

「これで14番はあなた方の奴隷です
獣人のメスガキに魔法契約で使役するのは少し勿体ないと思ったのでソイツにはしていません。このまま持ち帰っていただいてよろしいですよ」

…!
魔法…!
存在している可能性は考えていたが本当にあるのか…!
これは見直しが必要だが…この世界の魔法がどれ程の物か確認しない限りは安全とは言えないな。

「アオイ、早く行こう。
急いだ方がいい」

コットの呼びかけに碧はふと、我に返る。
声の方を見るとコットとリンは既に店を出る直前だ。
後を追うように碧も少し歩むが直ぐに足を止める。

「アオイさん、と言いましたか
貴方とはまた会えそうです」

薄気味悪い笑顔だ。

「そうだね、アズルさん
次の機会を楽しみに待ってるよ」

こいつ…何者だ…?




「リン、フードをかぶれ」

「嫌だよ…耳が擦れてこしょぐったい。」

リンの言葉を無視してアオイはフードを被せようとする。

「まぁまぁアオイ、リンが嫌がってるしよしなよ」

「まぁ…コットがそう言うならいいよ。」

少し気難しそうな顔をする碧にコットが心配そうに尋ねる

「どうかしたかい?アオイ」

「いや、なんでもない。
ねぇコット、アズルってどんな奴なの?」

「どんな奴…か。
実は俺もよく知らないんだ。
ここ1ヶ月で一気に勢力を伸ばしてる商人さ、ここへ来たのもつい最近
もし実力だけでこれなら、尊敬出来る人だと思うよ」

実力だけで…
何か知ってるようだが、今はいい。
あの貴族に見つかる前にさっさとコットの店に身を隠したい。

「…!」

リンが急に止まる。
その顔には恐怖が映る。
一体何に?

その正体はすぐに分かる。
さっきからチラチラ見えていた殺気。
だが今、リンへと一筋のつるぎとなった。
見つかった。

「おじさん!すぐにホームへ!
リン!!お前は僕と来い!!」

碧の一言に一瞬反応が遅れたコットだが
意図を察しすぐに店のある方向へと駆けた。

「アオイ…」

「うるさい黙れ。走ることに集中しろ。」

碧の厳しい言葉にリンはシュンとする。

不味い。
思ったより見つかるのが早かった。
最低限の配慮としてコットの名前を呼ばないことしか出来なかったがここからどうするか。
僕には土地勘はない。
リンに頼る…?いや恐らく決められた道しか通った事はないだろう。
この街についてあまり知らないのは確認できてる。
手詰まりか。

「アオイ………きつい……」

リンが肩で息をしている。
かなり疲れているようだ。

「確かに。
あいつからは結構離れれた。
少し休憩したらコットの店へ向かおう」

リンは返事の代わりに頷き、座り込む。
さて…ここからどうしたものか。
あの殺気。
大きい大きいとは思ってはいたが向けられてようやくわかった。
デカすぎる。
どれだけキレてんだあの貴族。
しかしあんなデカい殺気、あんな青年に出せるものか…?
まぁそれは、今はその事はいい。

「アオイ、」

「分かってる、殺気が近くなってる。
結構適当に走ってきたつもりだったけど…
追いつくのが速いな。」

とりあえず、距離をとるしかない。
そう思いアオイがリンの手を握り歩もうとした時…

ドゴォン!!

その爆音と共に右側にあった少し大きめの塀が破壊される。

「ッ…!ぐっ…」

爆風により碧とリンは反対側へと吹っ飛ばされ。
それと同時に爆発で舞った破片が碧の左目に入る。

「アオイ!!大丈夫?!アオイ!」

リンは咄嗟に碧が庇ったおかげでほとんど無傷だったが碧はつよくあたまをうったようだ。

「…(ってぇ……意識が朦朧としてる。
あぁ…畜生。頭を思いっきり打ったな。
左目、これは破片で切れてんな
この世界の技術の進歩具合的に治療は望めねぇ。
なんとか治癒魔法かなんか探すしかないな。)」

「アオイ!アオイ!」

リンの呼びかけに碧の応答は無い。
強いショックと爆音でまだ耳鳴りがやまず聞こえていない。



「よォ、害獣また会ったな」

貴族の青年の声だ。
リンはそちら側へ恐る恐る視線を向ける。
涙を流し声も出ない様子だ。

「なんだァ?そいつが死にかけてるんで泣いてんのか?獣人が?人間様を心配してんのか?
ハッハッハッ!こいつは傑作だ!
よもや人間が!獣人に心配される!
無様だなァ。
テメーだろ、俺様の事不意打ちで攻撃してきたの、探したぜぇ〜…お前にさぁいきなり意識落とされてほんとビックリしたよ〜

この俺様に!!クソガキが舐めた真似しやがって!!おかげでこっち大恥かいたじゃねぇか!!テメーは絶てぇ殺す!!殺して殺してその服ひっぱらって顔面にテメェのクソ塗ったくってから街のど真ん中に晒してやる!!!」

完全に頭に血がのぼりきって沸騰している。
碧の意識も話の途中から徐々に鮮明になる

「やめて!!!アオイに…アオイに手を出さないで!」

リンが碧の前に立ち塞がる。
その脚は震えている。

「どけ害獣…お前にはもう用はねぇよ」

その言葉が終わると同時にリンを横へ突き飛ばす、瓦礫の山へ。

「おいおい、レディはもっと大切に扱うものだろ、お坊ちゃん」

碧がクッションとなりリンは叩かれた場所以外は無傷だった。

「お前…まだ動けたのか。
でも瀕死だなぁ、分かるぞ?
左目は潰れて爆発時に壁になったせいで背中にやけど、壁にぶつかる時も庇って肋が数本、左足も折れてるな」

的確に言い当てる。
確かに言われた箇所は折れていてかなり痛い。

「なに…お坊ちゃん軍医でも目指してんの?」

「そんなもんテメーの魔力の流れ見りゃわかんだよ、そんなんも知らねぇのか
ただの一般人だな。
もしかしたら、と思って魔道具持ってきたが、この程度ならその必要もなかったな」

まったく…予想外だ。
想定より魔法ってのは強い。
こいつのこの歳でこれだけの威力の魔法が使えると言うならもっと歳食って魔法の訓練をしてきたヤツらはどんなもんなんだ。
予想もできない。

「あぁ、そうかい。
参考程度に聞きたいんだがお坊ちゃんの魔法。
今のが一般的な威力なのかな?」

「あぁそうだ。
と、言いたい所だが俺は今、お前を殺せると思うと気分がいい教えてやる。 今のは元の爆発魔法にさらに熱の魔力を足して威力を上げている 微合成魔法だ割合的には9:1の簡単なものだがな
それに魔法道具、この指輪とコートで魔法の威力が倍増してるのさ」

前言撤回
今のは何倍にも増幅された威力だと言う。
逆にそれでこれなら元の威力はそこまで強いとはいえない。

「へぇ…そりゃ勉強になる。
それじゃここまでだな。」

「フッ、潔いいのは褒めてやるよ」

青年が手を天高く上げる。
恐らく手刀。
手に風の刃物でも纏わせているのだろう。
さっきから微妙に彼の手から風が切る音がしている。

青年は手を振り下ろす。

「死ね平民」

血が吹き出す音とともに腕が宙を舞う。

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