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神の玩具となった英雄の末路(仮名)

関 青葉

《こんにちは商人さん》


「ねぇ…アオイ。」

リンは不安そうに碧の後ろについてまわる。
流石にボロボロの格好だと奴隷だと丸わかりなので市場で買ったちょっと大きめの白いコートを着せている。
お金の方は倒れてる青年からスった。

「何?」

「アオイはどうにかするって言ってくれたけど…どうするつもりなの…?」

貴族、飼い主、リンの身分。
確かにここに来たばかりの碧には厄介すぎる案件だ。
だが宛がない訳では無い。

「知り合いの店がこの先にあるから、そこで相談するつもり」

すまないコット。
いきなり面倒事に巻き込もうとして。


「コットさん、居る?」

ひょっこりと店の奥から小太りした中年のおじさんが出てくる。
ヴァーヴ・コットだ。

「おぉ、アオイくん  いらっしゃい!
っと…その子は奴隷だね…」

「そう、ちょっと市場の方で絡まれてたから助けちゃったんだけど」

コットの顔が険しくなる。

「確かに奴隷制度には賛同しがたいがこの街のルールには他人の所有物を奪う事は禁止されている。
郷に入っては郷に従え、だ。
直ぐに持ち主に返してきなさい。」

「…その件で手伝って欲しい」

「あぁ…僕も友人の頼みとあれば聞かずに断るのは失礼だ。聞かせてもらおう」

真剣な表情。
お説教されている気分だ。
いや、実際されているのだろう。

「この子…リンって言うんだけど。
リンが絡まれていたのは貴族なんだ」

コットの顔色が一気に悪くなる。
それもそうだ、貴族は軍人、軍人は帝国を仕切っている。
そう教えてくれたのはコット自身なのだからよおくわかっている。

「それは…謝りに行っても許してもらえない可能性がとても高いね…。」

「あぁ、だからリンの飼い主からリンを買い取って匿うことにした。」

「…買い取る。なるほど。その資金援助をして欲しいと…?」

そう、コットに頼みたいのは資金援助。
貴族の青年から財布はスってあるが流石に奴隷を買えるほどとは思えない。

「担保や売れるものがあればまだしも、アオイくんがその手のものを持っているとは思えないが?」

まぁそう来るだろうと予想していた。
確かに俺が切れる手札は少ない。
把握しきれてないこの状況でその少ない手札を切るのは無謀だろう。
だがなんの為にわざわざ裏通りを使わず大通りからコットの店に向かってきたと思う。
ちゃんとこの世界を観察して、これまで聞いた話から仮定を建てている。

「コットさん…この世界。いや、少なくともこの街では鉄が足りてないよね  市場の様子をパッと見た感じ鉄が使われていると思われる商品はほとんどみない、銅で作られた物であればチラチラ見かけたけど、それでも高額だ。となるとその手の素材は不足している。
理由は単純、帝国兵の武器や鎧に当てられているからだね
さっきら寝かしつけた貴族の坊ちゃんも懐に銃を所持してた」

あぁ、そうだ。
市場をずっと見ていたが鉄などの鉱石はほとんどが武具に使われ市場に卸されることなど滅多にないようだ。
ガラス等の装飾も雑
ある程度に見えればいいと熱のない作品ばかりだった。
それだけじゃない、料理のレベルもかなり低かった。
カエルの様な生き物の単純な丸焼きや、草の詰め合わせ
香辛料などの存在は塩のみ確認出来ている
ただこれに至っては値段が商会が定めている相場より明らかに高い事は確認済みだ。
ブラックマーケットの存在可能性が非常に高い。

「たしかにこの国では鉱石類のほとんどを武具や貴族の装飾品に変えられてこっちには基本おりては来ないが。
アオイくんが鉄を持っているようには見えない
なにより鉱石を持っているなら現物交換でリンちゃんと変えれるだろうしね」

その通りだ。
僕は鉄や銅などの鉱石類は持っていない
だが今の言葉で確信を得た。
これは……勝てる…。

「別に鉱石なんて無くても行けるさ
この市場をざっと見たけど存在する装飾品とかのデザインを見たけど、どれもこった作品は見れなかった。貴族の身につけるものであれば多少はマシかもしれんと思ったが基本ここには上からおろされたものしか存在しない、それでこのレベルなら僕の持つ技術であればより細かく、より美しく仕上げることが出来る」

疑いの目。
それはこっちに来てからコットとの間で初めて向けられる物。

「ほう、確かに上の御方達が身につけている装飾品は基本的にはここのものとそう変わらない
もしアオイくんの持つという技術でより美しい装飾品が出来るのであれば貴族様達は迷い無く大金をはたくだろう
うちの店もそこそこ大きく上とのコネクションは多少ある…ふむ……ふむふむ…」

コットの瞳にギラギラと光る物を見る。
彼は初めて会った時に「見慣れない格好」と言った。
僕の着ている制服自体はごく一般的な見た目のものを使用している。
そう、それでさえ見慣れないデザインなのだ。
それならば多少の知識しかない僕であってもこの世界ではかなり特質したデザインとなり注目を集める事はできる。
誰も作れない物を作った時の利益は計り知れない。
さらに言えばこの言い方なら鉄の加工方法や宝石の加工も含まれるため、ただでさえ高額な商品をさらに高額に、どれだけ値が上がろうと貴族のような人間は見栄のためにそれらを手に入れようとする。
つまりこれは言い値で売れる物の作り方をレクチャーしてやると言っているのだ。

「……試しに作ってみてくれアオイくん」

「わかった、ただ今回は時間も素材も足りない状態だから、僕が持ってる物で代用したい」

あぁ、構わない、とコットの了承を得る。

実際に作っている時間はない
リンを助けてから少なくとも2時間は経っている。
流石に坊ちゃんも目を覚ましてこちらを探しているだろう
となれば俺の持ち物をそのまんま出すのが手っ取り早い。
ハンカチサイズの布でここまでの細かい裁縫されている物は確認できなかった。

「これが僕が持ってる今出せるものだよ  ハンカチ…んー。手ぬぐいと言うべきか?ポケットサイズの手を拭いたりする布だよ  これは持ち歩き前提でね  柄等も拘って作ってある」

コットの反応は予想以上のものだった。
目がギラギラと輝く。
ハンカチ1枚でここまで興奮されるのは予想外だ。

「…アオイくん…この刺繍は凄く細かく出来ている…現在この街で貴族が持っていたとしてもこれ程の繊細な物は持ち合わせてないだろう、そしてこの布の質だ  圧倒的に滑らかすぎる。このレベルの驚きがまだあるというのであれば…これは…」

あぁ料理に関しても鉱石に関しても多大なる驚きを与えるだろう。
問題は素材自体もそこそこ値が張る事だが、そこは商人の見せどころ。

「これ以外にも色々な食材のこの街の人間は知らない調理方法、鉱石類にもこのハンカチ以上の繊細な加工まで、これなら担保とは言えないが等価交換としてリンくらい買ってくれるんじゃないか?」

等価とは言えない。
明らかにあちらに有利な条件だ。
貴族にこの技術を応用した商品を売り込めば莫大な富を手に入れることは夢ではない。
一商人が扱う奴隷程度であれば些末な事だ。

だがコットは悩んでいる。
あぁ、そうだろう、君と言う人間をある程度は理解しているつもりだ。
君はこの取引がコットの得る利益に対し僕に利益が少ない事が不満なんだろう。

「この取引は…

「対等じゃない。
そんな事は分かってる、だが今の僕に提供できるのはこれが最善だ。
それでも不満なら、そうだな。僕は住む場所がないし寝る場所の提供もしてくれ」

これでも釣り合いはしないかもしれないが僕が望んでいるのはこれだけだ。

「わかった。あまり文句を言うのは提供してもらってる側としては失礼だな。
その技術の例としてその子を買い取るのに手を貸そう。
寝る場所の提供だけとは言わず衣食住提供しよう。交渉成立だ」

いい結果だ。あぁ…とても…!
この世界でも人間の精神構造はある程度同じと見れるな。
常識がこちらと少しズレている分の修正は必要だろうがそれはおいおい調整するとしてコットの信頼とついでに衣食住をおまけで貰えた。
こちらとしてはこの程度のカードであればお釣りが来る。

「ありがとう!コットさん!」

「コットでいいよ  こちらもアオイと呼ばせてもらうよ  
これから一緒に住むんだ、敬称は不要だし  対等な関係でいよう」

コットの笑顔は優しい
本当に歓迎してくれているんだろう

あとの問題は…リンの飼い主だ。
どんな人間なのか…
今は心配してもしょうがないな。

「アオイ…つまり…」

「あぁ、リンの権利を買い戻す事は出来そうだ
後は君の飼い主の所へ行って話し合いをするだけだ」

リンのホッとした顔、安心するのはまだ早いが…
今は素直に喜ばせておこう。

「それで、アオイ
リンちゃんの飼い主についてはもう分かっているのか?」

「あぁ、分かってるよコット
南街のアズル商店の店主アズル
リンをこっちに連れてくる際に身元の確認は済ませてる」

感心した様だ。
こっちだって完全に無策で突っ込んでるわけじゃない。
確かにリンを助けてしまったのは誤算だった。
感情で動いてしまうのは僕と言う人間の悪い癖だ。
だからこそ助けてしまったからにはそこからの最善策を考える切り替え。
これは僕のいい所だな。

「ふむ、相手がわかっているなら今から交渉のテーブルにつくか?
獣人の奴隷しかも女の子となれば力仕事に向かない点でかなり安く見積もられると思うが」

ふむ…この街じゃ獣人だとメスは安いのか。
在り来りな世界であれば高額で愛玩として置かれているものと思っていたが。
力仕事に向かない点…つまり獣人のメスはオスほど力が強くない。
人間程ではないがそれでも、と言った所か。
安く済むのであればそれにこした事は無い。
なにより相手も手放しやすい。

「そうだね、出来れば外が暗くなる前に終わらせておきたいね    リンは今からでも大丈夫?」

「うん…!奴隷を辞めれるなら…いつでも!!!」

「良い返事だ
コット、今から向かおう  少しでも早くリンの権利を買い戻す!」

リンの権利を買い戻す交渉をすべく碧、リン、コットは南街のアズル商店へ出向く。

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コメント

  • さすらいの骨折男

    僕も小説書くのは初心者です!同じマイペースで楽しく投稿していきましょう!これからも応援しています!
    良ければ、僕の作品の方もよろしくお願いします!

    1
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