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神の玩具となった英雄の末路(仮名)

関 青葉

《こんにちはケモ耳少女》


「おっ、アオイくん  街の外壁が見えてきたぞ  
あれが帝国の街《カガヘル》だ」

大きな外壁、少なく見繕っても15mはあるだろうか。
それに横にもかなり大きい。
街と言うだけはある。

「へぇ…思ったより発展してるな。」

「なんだ、アオイくん街自体は初めてじゃないんか?」

「ん…あぁ、前にいた所でね  名前は忘れちゃったけど」

不思議そうな顔。
ちょっと苦し紛れ過ぎたろうか…。

街に近づくと見えてくる
検問所のようだ。
隣でコットがポケットポーチから手形?のようなものを出す。

「コットさん、それは?」

「これはあそこの検問所を通るために必要な証だよ、昔商人始める時に商業組合に発行してもらった身分証なんだ  これがないと商売しちゃいけんしね」

商業組合。
なるほど商人とは商業を目的とした組合から商売をする許可を貰っている存在。
合法的存在という訳だ。
話を聞く限り許可を貰っていないのに商売をするのは禁止されている。
恐らくその商業組合の出すルールには売ってはいけないものなども存在して、それに違反したものからは許可の剥奪などもあるだろう。
無法という訳ではないらしい。

コットが提示する身分証のおかげで難なく街に入れた。

「さてと、アオイくんってこれからどうするつもりなんだ?」

「どうって?」

「いや、見た感じ旅をしてるって荷物でもないし子供だしね。家出かな?もし行く宛が無いならうちに来ないか?」

おっと…いきなりのスカウトだ。
どういう事だ?
確かに見た目は子供っぽいが中身はれっきとした17歳  女の子っぽい見た目でもあるが男。
まさかそっち系…?
いや短い付き合いだがコットの人間性から考えるとそれもない。
となると単純に心配してくれている?

「考えとくよ  僕はちょっと街を見てくる」

「そうか。僕の店はあそこだから、なんかあったら寄ってってくれ」

大きい店だ。
コット自身も結構な身分をもってるのかもしれない。

「うん、ありがとうコットさん  またね!」

駆け出す碧に手を振るコット

「さて…、この世界の常識はある程度聞いた。次は色々見て確認と更新だ」

街を見て回る。
結構活気のある街のようだ
商店街らしき場所は特に賑わっている。
建物などは木造が多いが中心地に向かうほど石造りなど手間のかかっているであろう建物が増えていく。
お決まりのファンタジー街だ。

「うーん、どこ見ても奴隷がチラつくなぁ  本当に珍しいものでもないんだね」

薪運びは荷車を押しているのは奴隷だろう
首輪はついてないが足枷がある。
服装はボロボロの布…の子達もいればまともな服装をしている奴隷もいる
おそらく奴隷と言っても僕の想像していたような扱いを受けているだけでもないようだ。

「きゃぁ…!」

小さな悲鳴。
周りは気づいていないが小さな女の子の奴隷が青年に蹴飛ばされている。
その青年は周りと比べると裕福そうな服装をしている。
なるほど、気づいていないのではなく気づいていないフリ。
面倒事に巻き込まれたくないのだろう
こうも堂々と奴隷への暴力も近くにいる衛兵らしき鎧をまとった男は無視。
傷害罪などがあるかどうかは確認できてはいないが存在するのであれば奴隷には適応されないらしい。

「こっちに来いッ…!」

貴族らしき青年が奴隷少女の腕を引き人気のないせまい裏路地へ連れていく

「…どうした物かな。」

碧は跡をつける。
少し奥に行くと行き止まりになっているようだ。
そこに少女を転がし服を脱がそうとする。
まさか真昼間から奴隷を犯そうとするとは。
確かに彼の見た目は18前後に見える。
高校生くらいと言えば性欲真っ盛り穴があれば入れたい、グラビア集買って家で盛りたいお年頃だろう。
いや、盛すぎだろうと言うツッコミを堪える。

「んー。止めた方がいいんだろうけど貴族っぽいし敵に回したくないなぁ…見なかった事にしよ」

来たばかりの異世界でいきなり貴族を敵に回し逃亡生活に堕ちるのは避けたい。
ましてや帝国では貴族位を持つ人間はみな軍人ときた。
軍が指揮すると思われるこの国でそれを敵に回すのはどう考えても馬鹿。
見ず知らずの奴隷相手であれば尚更。

「ごめんね  僕はそこまで馬鹿じゃないし奴隷なら遅かれ早かれそうなるんだから変わらないよね」

そう小さな声で言い碧はそこを後にする直前に奴隷の少女のボロ布が剥がされフードで隠れていたものが明らかになる。

その奴隷は可憐な人間の少女のような容姿に明らかに異形のものであることを示すまるで猫のような耳が頭部から生えている。
それは作り物ではないという証明のようにぴょこぴょこと小さく動いている。
パッと見普通の女の子だが猫のような耳、黄金の瞳、そして白く美しくうねる尻尾。
コットの話から聞いた獣人の様だ。

刹那。
碧は青年の背後まで駆け込む。
音で気づかれたのか青年はこちらに顔を向けようとするがその前に両足の膝窩しっかを軽く蹴り跪かせる。
間を置くことなく髪を強く握り顎が胸につくように思いっきり頭を下げさせ瞬時に後ろが見えるほどに頭を上げる。

「構造上は一緒か。」

その一言と共に青年はバタリと倒れる。
ケモ耳少女は何が起こったのか理解ができないようだ。

「あの…その人は…」

「気絶してるだけだよ、軽く身体をびっくりさせただけだからすぐ起きるかもしれないけど」

さて、助けてしまった。
幸い貴族の坊ちゃんは僕の顔を視認する前に落とせたから敵に回さずには済む。
問題は彼女だ。
彼女は奴隷と言う立場上誰かの所有物であることは間違いない。
ただ貴族の奴隷と言うには少し格好がボロボロだったためその可能性は低い。
となるとこの街の商人の誰かだろう。
貴族と商人、立場が上なのは言わずもがな。
このまんまこの子を離してもいつか見つかりこいつの玩具にされるか最悪殺される。
さっき見た感じ奴隷には一般適応の法は恐らく適応されない。
殺す事に抵抗はないだろう。

「ごめんなさい…」

どういう意味だ?
ケモ耳少女からの言葉を一瞬碧は理解できなかった。

「女奴隷は大抵みんなこんな風になります。貴族様に手を出したとなれば貴女も彼らの玩具にされるか最悪処刑されてしまいます…。それは人間の女の子でも例外ではありません。」

どうやら碧を女の子と勘違いしているらしい。
なるほど、市場ではほとんどが男の奴隷だったのは力仕事のためかと思っていたが部屋での奉仕がメインの女奴隷は大抵そのまんま監禁しているわけだ。

「それならご心配なく  僕は彼に顔を見られてないし今何事も無かったかのように去ってしまえば追っ手が来る可能性はほぼ0%  仮に来たとしても…まぁそれは良いとして  それに僕は男だ」

少女は安心したようにホッと息をつく。
自分の方が危ない状況だと言うのに知らない人の心配をしてくれる子のようだ。
それとも理解していないのか?

「良かった…。それならはやk

「人の心配するより自分の心配をした方がいいんじゃないか?」

食い気味に言う碧に少女は戸惑う。

「えっ…それは…どういう…」

「君にとっての最悪の状況、それは僕が彼に認識されていなかった事。
この状況だと僕の顔を見ていない彼は起きたら怒って探し始めるだろうね」

「…何を…?」

「君を」

君を。
この一言で理解した様だ。
全身の毛が逆立ち顔色が悪くなる。
確かに碧は青年に見られていない。
だがそれが問題だ。
見られていない、知られていないのであれば調べて探し出そうとするだろう。
その過程でもっとも最初に訪れられるのは情報を持っている事が確定している彼女の元だ。
貴族に手を出してまで獣人の奴隷を助けたとなれば仲間であると勘違いされる可能性が高い。
最悪な事に奴隷に対して法は適応されない。
生かそうが殺そうが自由というわけだ。
彼女は碧の事を知らない。
そうなれば仲間をかばっているのかと勘違いされ拷問が悪化
殺される可能性が高まる。
ほぼ確実な死が待っている。

「そんな…。そんなぁ…」

少女は涙を流す。

「まぁ助けちゃったのは僕だし、しょうがない    ねぇ、取引しない?」

碧の言葉に少女は反応する。

「僕の提示する条件をのんでくれたら助けてあげるよ」

ケモ耳少女の目に少し光が戻る
見ず知らずの少年からの条件。
もしかしたらとても辛い事かも知れないし恥ずかしいことかもしれない。
それでも…生きる可能性があるのなら…

「…その条件…グスッ。って…」

碧はニッコリと笑う。

「その耳と尻尾、触りたい時にいつでも触らせてくれたら助けてあげるよ」

馬鹿だと思った。
笑っちゃうくらい馬鹿な提案に少女は本当にクスッと笑ってしまう。
自分が笑った事に気づいた少女は恥ずかしそうに顔を隠す。
何年ぶりだろう…何年ぶりに私は笑ったのだろう。

「…分かりました。その条件。…のみます!
だから…助けてください!」

少女の目には希望が溢れていた。

「僕は来栖 碧」

握手を求めながら名乗る碧に少し困惑しているようだ。

「私は…14番…」

「14…?本名は?」

少女は言葉に詰まる。

「無いなら、リン、ってのは?」

「リン……リン!私はリンです…!」

とても喜んでくれているようだ。
耳のぴょこぴょこと尻尾のうねうねが加速している。

「おーけ、よろしくリン!」

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