夕陽のロマンス~オフィスラブ~

雪華月ふわり

綻び~涼宮side~

幾色の雑景から彼の姿を探す。こう言うとドラマのワンシーンみたいだが、季節の変わり目はどうしても体力を消耗しやすい。
人が密集している所を掻い潜り、噴水を目指す。
早いところ落ち着いて取材をしたいというのが本音だが家族連れや友達グループでごった返しており、思うように身動きがとれない。
彼の姿を認めようと必死に視線を動かすがさ、忙しなく人の流れが変化し、ぶつからないようにするので精一杯だ。
(この特集は話題になるだろうな。)漠然とだが直感的にそう感じた。
既に賑わっている分、コアなお得情報に視点を置いて、シンプルかつ内容の濃い特集にすれば売り上げも期待出来る。過去の取材経験から分析し、取材の段取りを頭の中で組み立てた。後は日比谷さんとその事で擦り合わせをして‥一人シュミレーションをしているとあっという間に流されてなんとか噴水にたどり着いた。
「お待たせしました!」直ぐに気付いてくれたことに安堵し、いつも通りに挨拶をして駆け寄った。
「ああ。おはよう。」
華やかな顔立ちにスラッとした長身が一際目をひく。
チラチラと視線を感じるが気にしないことにした。
「お待たせしてしまってすみません。」
「全然大丈夫だよ。」
凄い人で僕も此処にたどり着くのに結構手間取ったよ。
苦笑する様でさえ絵画のようだな。と思った。
「はい。きっと此処につくまでに喉がカラカラになると思って。」
お茶で申し訳ないけど。言うが早く、彼は中性的な指先でペットボトルを差し出した。
有り難く受け取り、気温の割りに冷えていることに彼の細やかな気遣いを感じた。
一瞬で緊張がほどけた自分が不思議だったが、なんだかくすぐったい感じがして、自然と口元が綻んだ。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品