夕陽のロマンス~オフィスラブ~

雪華月ふわり

トキメキ?!への道~日比谷side~

待ち合わせ場所に向かうため、普段あまり履くことの無いスニーカー に足を通した。
玄関から出ると真夏程陽射しは強くないが、初夏を感じるには十分の明るさで、室内との対比に若干目が眩んだ。
今日は待ちに待ったデート!ではなく、共同で記事を作成中の涼宮さんと雑誌特集の取材に向かう。
編集部の要ともいえる彼女とこうして仕事が出来るのは正直有り難いし、お互いにとっても新たな成長のチャンスだ。僕は割りと直感で動くタイプなので、普段黙々と的確な仕事をこなす彼女に呆れられないか心配だったりもする。
涼宮さんが溜め息をつく表情を想像してみるが、少し眉間に皺を寄せた横顔しか浮かばず、ころころと表情が変化することは少ないなと思った。
いや、赤の他人である自分にそんな隙を見せるはずがないだろう。
自分だけに魅せる表情(かお)が知りたいー無意識の内にそう思っていたのかも知れない。
ふと、腕を組ながら談笑しているカップルが目に留まった。
大学生くらいだろうか。彼女が忙しなく表情を変えながらお喋りをし、彼も楽しそうに相槌を打っていた。
自分の隣に涼宮さんが恋人として居ることを想像してみた。
別に付き合いたいとかではなくただの脳内ロールプレイングだ。特に深い意味はない。
必死に自分に言い訳をしながら待ち合わせの駅に到着した。
目印である噴水の方を見渡すが彼女の姿はまだ見当たらず、取り敢えずその周囲を囲っている大理石に腰を掛けることにした。


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