ドラゴンさんは怠惰に暮らしたい
第9話ホワイト
(俺の代わりに、街でフェリックスに関する情報を集めてほしい)
クレアに高圧的な態度が取れる理由、それを知りたい。まぁ、間違いなく政略結婚だとは思うが、それが分かったからといって何かできるわけでもない。相手とクレアの関係、それぞれの状況がまで理解しなければ、効果的な対策を立てようがないからだ。
今でも、夢の国では争いと無縁でいたいと思っている。
情報を集めきったら、穏便にクレアと別れていただく方法を見つける方法を探そう。最悪は実力行使になるかもしれないが……やはり気が乗らない。体は化け物でも心は人のまま。魔物を殺すのは良いが、人は殺したくないのだ。
下を見ると笑顔を貼り付けたまま、微動だにしないホワイトが、膝をついて待っていた。
彼は、俺の想像を超えた確かな人格をもっている。だからなのだろうか、身勝手な目的のために創りだし、利用しようとしているその事実に、後ろめたさを覚えてしまう。
だが、そうでもしなければ、力尽くで解決する方法しかなかった。夢の国でドラゴンが暴れまわるのと、生命の創造、どちらがマシか火を見るより明らかだろう。
(ホワイト、できるな?)
生命を勝手に作りだしてしまった罪悪感を押し殺して、意識して期待するような声を伝える。せめて君の人生が無意味、無価値ではないと証明する義務があるからだ。
まぁ、なんとも身勝手な話ではあるがな。
「はい! それでは行ってきます!」
指示を聞いたホワイトは、両手を上げて全身で歓喜を表現した。
生まれたばかりだというのに、創造主への忠誠心が高いとは、なんとも都合の良い、いや罪作りな魔法だな。傲慢なドランゴンにはお似合いだこと。
さて、そんなことより、もう少し具体的な指示を出すか。
もう一度、念話を送ろうとホワイトを見ると、走り出そうとしていた。
(ま、まて!)
慌てて行動を制止する。不自然なほどピタッと、キレイに動きが止まった。
「なんでしょう?」
意欲が高いのは買う。買うが、そのまま街に行ってどうするつもりだ。フェリックスがどういう男なのか説明をしていないし、他にも準備が整っていない。
なにより、
(裸のままで行くつもりか?)
股間の一物をぶら下げたまま街で情報収集してはダメだ!
そんな恰好で外に出たら、成果を出す前に牢獄行きだ。これはアホな子というよりかは常識が足りないだけだろう。なんせ、創造したばかりだからな。
これから人としての最低限の知識を叩き込まなければいけないのか…。
ホワイトを創造するのに体内の魔力を根こそぎ持っていかれて全身がだるい。頭も回らないのですぐに寝たいが、これは創造主の勤めでもある。義務は果たすべきだろう。
(街に出る前に常識とフェリックスについて伝える。上手く活用するんだ)
「はい!」
時には理解度を図るために問題をだし、夜が明け始めるまで人として大切な常識を叩き込んでいった。
◆◆◆
シロ様が魔法で創造した服を身につけ、私は、人目につかないように城内から抜けだして人の住む街を歩いていた。
開店したばかりの店の横を抜けて、人の少ない小道へと入る。
土がむき出しの道の左右には石造りの家があり、二階から恰幅の良い女性が洗濯物を紐でぶら下げていた。今日は天気が良いので、同じような光景が目の前に広がっている。
朝特有の澄んだ空気は、少し冷たく、それが心地よい。
道行く人が少ないのは、まだ早朝と言われる時間帯だからだろうか?
人が多くなるのは昼頃と教わったので、これからどんどん増えていくのかもしれない。どんな人に出会えるのか、楽しいで仕方がない!!
「これが、人の街!」
外に出てから、気持ちの高鳴りが止まらない!!
体の底から興奮が湧き上がってくる!
家の中はどうなっているか見てみたい!! 道を歩くだけでこんなに楽しいんだ。探索すればもっと楽しめるだろう!!
家の前に立ち、木製のドアに手をかけて、ドアノブを回す。ガチャガチャとたてるだけで開くことはなかった。
「カギが、かかっている?」
何のためにカギをかけるんだっけ? 思い出せない、覚えていないとうことは、重要なことではないのだろう。
貧素なドアにかけられたカギなど、ドラゴニュートの私にかかれば、こじ開けるのは容易だ。探索して楽しみながら、家主に話でも聞いてフェリックスのクソ野郎の情報を集めるとしよう!
なんて素晴らしい考えだ! 私の自主的な行動に、きっとシロ様も喜んでくれるだろう!!
(やっと視界がつなが――って、おい! もう、俺の話を忘れたのか!!)
ドアを蹴破ろうとした瞬間に、シロ様の焦燥した声が脳内に響いた。
母親に叱られた子供のように、先ほどまで高まっていた気持ちが急速にしぼんでいく。何だかわからないけど、泣いてしまいそうだ。
(シ、シロ様!! も、申し訳ございません!)
理由はわからないままだけど、謝った。怒られたら謝る。先ほど教わった人としての常識だ。間違った行動ではないはず!
(お前なぁ……)
なぜか、呆れたような声が脳内に届いた。
また何か失敗してしまったのだろうか? 不安が私の心を覆ってくる。
(まぁ、謝罪できたのは偉い。そこは褒めよう)
だが、そんなもの、シロ様の一言で吹き飛んでしまた!
やはり私の行動は間違っていなかったのだ!
(もう一度言おう。人の家に勝手に入ってはいけない、人の物は勝手に壊してはいけない。ドアを蹴破るのは、この二つに反する。やってはダメだ)
(はい!)
とりあえず返事をしてから、さっき教えてもらえたことを思い出そうとする。
……あぁ! 確かに言われてました! 他にも盗んではいけないんですよね!
(ホワイトの視界は俺にも共有されるようにした)
少し呆れたような声だったけど、そんな些細なことより、一緒に行動できる喜びの方が大きい。
シロ様が私を見てくれている。それだけで、全てが満たされたような感覚に満たされた。
(慣れるまで付き合ってあげたいが、そろそろ限界だ。少し寝させてもらう。先ずは外に出て魔物を狩り、お金を手に入れるんだ。それから酒場で……噂話を……集……)
話の途中でシロ様との念話が途絶えてしまい、孤独感に襲われる。
寂しい……いや、こんなことで寂しがってはダメだ! 私はシロ様の期待に応えたい! それが生まれた意味なのだから。
私は歩きながら、教えていただいたことを思い出す。
最終目標はフェリックスの情報を集めることだが、その前に活動資金が必要らしい。私なら魔物を狩って、素材を売るのが一番簡単とのことだったので、教えていただいた狩場に向かう予定だ。
外壁にある門に到着すると、街を出るときとにシロ様からもらった紋章を見せる。警備していた兵士たちが慌てながら、丁寧に外へ案内してくれた。
流石はシロ様!! 末端にまで、その素晴らしさが伝わっているとは!! 少し恐れの感情が見えたけど、気のせいだろう。
外にでると体を大きく伸ばす。ここまでくれば、人のルールに縛られる必要はない。
背中にある翼を大きく広げて、魔力を注ぎ込み、羽ばたかせると全速力で走るような速度で上昇した。
眼下には先ほどまで滞在していた街があり、中心には少し古ぼけてはいるが、堅剛そうに見える城がある。開けた空間に、うっすらと白い塊が見えるから、あそこにシロ様がいるのだろう。
私は祈る様に一礼してから、視線を北部の地平線に向ける。
木々が生い茂る森がうっすらと見えた。人が訪れることが少なく、多種多様な魔物が生息しているらしい。シロ様は入ったことがないのだが、城の兵士たちが噂していたので、稼げるのは間違いはないとのことだった。
生まれたての私がどこまで通用するかわからないが、期待されて送り出されたのだ。死力を尽くして勝ち残るべきだろう。
見ていてください! シロ様のために必ずや勝利をもぎ取ってきます!!
          
クレアに高圧的な態度が取れる理由、それを知りたい。まぁ、間違いなく政略結婚だとは思うが、それが分かったからといって何かできるわけでもない。相手とクレアの関係、それぞれの状況がまで理解しなければ、効果的な対策を立てようがないからだ。
今でも、夢の国では争いと無縁でいたいと思っている。
情報を集めきったら、穏便にクレアと別れていただく方法を見つける方法を探そう。最悪は実力行使になるかもしれないが……やはり気が乗らない。体は化け物でも心は人のまま。魔物を殺すのは良いが、人は殺したくないのだ。
下を見ると笑顔を貼り付けたまま、微動だにしないホワイトが、膝をついて待っていた。
彼は、俺の想像を超えた確かな人格をもっている。だからなのだろうか、身勝手な目的のために創りだし、利用しようとしているその事実に、後ろめたさを覚えてしまう。
だが、そうでもしなければ、力尽くで解決する方法しかなかった。夢の国でドラゴンが暴れまわるのと、生命の創造、どちらがマシか火を見るより明らかだろう。
(ホワイト、できるな?)
生命を勝手に作りだしてしまった罪悪感を押し殺して、意識して期待するような声を伝える。せめて君の人生が無意味、無価値ではないと証明する義務があるからだ。
まぁ、なんとも身勝手な話ではあるがな。
「はい! それでは行ってきます!」
指示を聞いたホワイトは、両手を上げて全身で歓喜を表現した。
生まれたばかりだというのに、創造主への忠誠心が高いとは、なんとも都合の良い、いや罪作りな魔法だな。傲慢なドランゴンにはお似合いだこと。
さて、そんなことより、もう少し具体的な指示を出すか。
もう一度、念話を送ろうとホワイトを見ると、走り出そうとしていた。
(ま、まて!)
慌てて行動を制止する。不自然なほどピタッと、キレイに動きが止まった。
「なんでしょう?」
意欲が高いのは買う。買うが、そのまま街に行ってどうするつもりだ。フェリックスがどういう男なのか説明をしていないし、他にも準備が整っていない。
なにより、
(裸のままで行くつもりか?)
股間の一物をぶら下げたまま街で情報収集してはダメだ!
そんな恰好で外に出たら、成果を出す前に牢獄行きだ。これはアホな子というよりかは常識が足りないだけだろう。なんせ、創造したばかりだからな。
これから人としての最低限の知識を叩き込まなければいけないのか…。
ホワイトを創造するのに体内の魔力を根こそぎ持っていかれて全身がだるい。頭も回らないのですぐに寝たいが、これは創造主の勤めでもある。義務は果たすべきだろう。
(街に出る前に常識とフェリックスについて伝える。上手く活用するんだ)
「はい!」
時には理解度を図るために問題をだし、夜が明け始めるまで人として大切な常識を叩き込んでいった。
◆◆◆
シロ様が魔法で創造した服を身につけ、私は、人目につかないように城内から抜けだして人の住む街を歩いていた。
開店したばかりの店の横を抜けて、人の少ない小道へと入る。
土がむき出しの道の左右には石造りの家があり、二階から恰幅の良い女性が洗濯物を紐でぶら下げていた。今日は天気が良いので、同じような光景が目の前に広がっている。
朝特有の澄んだ空気は、少し冷たく、それが心地よい。
道行く人が少ないのは、まだ早朝と言われる時間帯だからだろうか?
人が多くなるのは昼頃と教わったので、これからどんどん増えていくのかもしれない。どんな人に出会えるのか、楽しいで仕方がない!!
「これが、人の街!」
外に出てから、気持ちの高鳴りが止まらない!!
体の底から興奮が湧き上がってくる!
家の中はどうなっているか見てみたい!! 道を歩くだけでこんなに楽しいんだ。探索すればもっと楽しめるだろう!!
家の前に立ち、木製のドアに手をかけて、ドアノブを回す。ガチャガチャとたてるだけで開くことはなかった。
「カギが、かかっている?」
何のためにカギをかけるんだっけ? 思い出せない、覚えていないとうことは、重要なことではないのだろう。
貧素なドアにかけられたカギなど、ドラゴニュートの私にかかれば、こじ開けるのは容易だ。探索して楽しみながら、家主に話でも聞いてフェリックスのクソ野郎の情報を集めるとしよう!
なんて素晴らしい考えだ! 私の自主的な行動に、きっとシロ様も喜んでくれるだろう!!
(やっと視界がつなが――って、おい! もう、俺の話を忘れたのか!!)
ドアを蹴破ろうとした瞬間に、シロ様の焦燥した声が脳内に響いた。
母親に叱られた子供のように、先ほどまで高まっていた気持ちが急速にしぼんでいく。何だかわからないけど、泣いてしまいそうだ。
(シ、シロ様!! も、申し訳ございません!)
理由はわからないままだけど、謝った。怒られたら謝る。先ほど教わった人としての常識だ。間違った行動ではないはず!
(お前なぁ……)
なぜか、呆れたような声が脳内に届いた。
また何か失敗してしまったのだろうか? 不安が私の心を覆ってくる。
(まぁ、謝罪できたのは偉い。そこは褒めよう)
だが、そんなもの、シロ様の一言で吹き飛んでしまた!
やはり私の行動は間違っていなかったのだ!
(もう一度言おう。人の家に勝手に入ってはいけない、人の物は勝手に壊してはいけない。ドアを蹴破るのは、この二つに反する。やってはダメだ)
(はい!)
とりあえず返事をしてから、さっき教えてもらえたことを思い出そうとする。
……あぁ! 確かに言われてました! 他にも盗んではいけないんですよね!
(ホワイトの視界は俺にも共有されるようにした)
少し呆れたような声だったけど、そんな些細なことより、一緒に行動できる喜びの方が大きい。
シロ様が私を見てくれている。それだけで、全てが満たされたような感覚に満たされた。
(慣れるまで付き合ってあげたいが、そろそろ限界だ。少し寝させてもらう。先ずは外に出て魔物を狩り、お金を手に入れるんだ。それから酒場で……噂話を……集……)
話の途中でシロ様との念話が途絶えてしまい、孤独感に襲われる。
寂しい……いや、こんなことで寂しがってはダメだ! 私はシロ様の期待に応えたい! それが生まれた意味なのだから。
私は歩きながら、教えていただいたことを思い出す。
最終目標はフェリックスの情報を集めることだが、その前に活動資金が必要らしい。私なら魔物を狩って、素材を売るのが一番簡単とのことだったので、教えていただいた狩場に向かう予定だ。
外壁にある門に到着すると、街を出るときとにシロ様からもらった紋章を見せる。警備していた兵士たちが慌てながら、丁寧に外へ案内してくれた。
流石はシロ様!! 末端にまで、その素晴らしさが伝わっているとは!! 少し恐れの感情が見えたけど、気のせいだろう。
外にでると体を大きく伸ばす。ここまでくれば、人のルールに縛られる必要はない。
背中にある翼を大きく広げて、魔力を注ぎ込み、羽ばたかせると全速力で走るような速度で上昇した。
眼下には先ほどまで滞在していた街があり、中心には少し古ぼけてはいるが、堅剛そうに見える城がある。開けた空間に、うっすらと白い塊が見えるから、あそこにシロ様がいるのだろう。
私は祈る様に一礼してから、視線を北部の地平線に向ける。
木々が生い茂る森がうっすらと見えた。人が訪れることが少なく、多種多様な魔物が生息しているらしい。シロ様は入ったことがないのだが、城の兵士たちが噂していたので、稼げるのは間違いはないとのことだった。
生まれたての私がどこまで通用するかわからないが、期待されて送り出されたのだ。死力を尽くして勝ち残るべきだろう。
見ていてください! シロ様のために必ずや勝利をもぎ取ってきます!!
          
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