好き同士ってめんどくさい

Joker0808

第19話

 いや、今はそんなアホな事を考えている場合では無い!!

「あ、彩! こ、これは……」

 俺は言い訳をしようと彩に話しを掛ける。
 しかし、彩は俺から視線を外し、そのまま家の中に入っていった。
 車の中からマネージャーらしき人も俺の事を見ていた。
 恥ずかしいから見ないでくれ……。
 俺は肩を落としてため息を吐き家の中に入って行く。
「はぁ……ただいま……」

「まったく、君は何をしているんだい!!」

「おわっ!! 急に出てくるな! しかもなんでエプロン姿なんだよ!!」

 俺を出迎えたのは、なぜかエプロン姿のユートだった。
 こいつはなんで毎日家に来てるんだ……。

「いや、これは料理を……ってそんな話しはどうでも良いんだよ!! なんであんな修羅場になってるのさ!」

「み、見てたのかよ……」

「見てたよ! 彩ちゃんに嫌われたらどうするつもりだい!!」

「いや……多分嫌われたかも……」

 あんなところ見られたら嫌われて当然だろうな……。 悔しいがユートの言うとおりだ、俺が油断してたのが悪いな……。

「はぁ……俺は部屋で寝るよ」

「そんな事より、彩ちゃんのフォローに行かないと!!」

「今はあいつも話しなんて聞いてくれねーよ……昔からそうだ」

 彩は怒るとこちらの話しを一切聞かなくなる。
 昔もそうだった。
 約束を俺が忘れて、彩を泣かせてしまった事があった。
 その時は三日くらい口を聞いてくれなかった。
 俺は部屋のベッドに寝転がり、ため息を吐く。

「はぁ……」

 折角両思いだとわかったのに……こんな調子じゃ、一歩も前に進めない。
 俺がため息を吐きながら、ベッドの上をゴロゴロしていると、突然ベッドの横の壁に大きな魔方陣が出現した。

「え!? な、なんだ?」

 赤く光る魔方陣を見て、俺は直ぐに起き上がり魔方陣から離れる。
 明らかに嫌な予感がしたからだ。
 少しして、魔方陣から誰かが出てきた。
 その容姿に俺は驚き、思わず声を出した。

「に、西井!?」

 魔方陣から出てきたのは、西井だった。
 しかし、西井本人で無いことは直ぐにわかった。
 まずは来ている衣服が違った、ユートやアーネ達が着ていたような服で、この世界の人間では無いことがわかった。
 そして、一番の違いは……頭に角が生えていることだ。

「……君がこっちの世界のユート………」

「お、お前! もしかして、あっちの世界の西井か!」

「そっか、あの子とは面識があるのよね……初めまして悠人君。私はレイミー、この世界の西井麗美よ」

「お、お前が……」

 この女がユートとアーネに呪いを掛けた本人……。
 俺は彼女から発せられる威圧感のようなものを感じた。
 ユートの話しでは、このレイミーは勇者時代のユートも苦戦を強いられるほどの強者だったらしい。
 発せられる威圧感は強者のものなのだろうか?
 しかし、それ以上に………えっろ!!
 なんだ! その下着みたいな格好!!
 肌出し過ぎだろ!!
 俺はレイミーのセクシーな格好にドキドキしながら、彼女が何をしに来たかを尋ねる。

「な、なんのようだ……」

「君にお願いに来たのよ」

「何をだ……」

「あの子……麗美と結婚して」

 やっぱりか……お願いと言われた時点で薄々感づいてはいた。
 呪いを掛けた張本人。
 こいつは俺が彩と結ばれるのをなんとしても阻止したいはずだ……そしてこいつは何をしてくるかわからない。
 相手の実力がわからない以上、俺には逃げることしか出来ない。
 俺は逃げ道を確認し、隙を伺う。

「………はぁ……似てるわね……」

「だ、誰にだよ……」

「なんでも無いわ……それよりも……返事を聞きたいのだけど?」

「悪いが……断る!!」

 俺はそう言って、部屋のドアに向かった。
 しかし……。

「な……開かない!」

「ウフフ……逃げないでよ、ゆっくり話しましょう」

「……っく」

 魔法ってやつか?
 不思議な力でドアが開かなくなってるのか!
 ヤバいぞ……こいつは俺を部屋に監禁して何をする気が……。

「ねぇ……あの子じゃダメ? 結構可愛いと思うけど」

「ダメとか……そういう問題じゃない……」

 レイミーは俺の側にゆっくり近づいて来る。
 ヤバイ……俺は今まで感じた事のない恐怖を感じた。 一体何をする気だ……。
 俺は恐怖を感じながら、どうやって逃げるかを考える。
 しかし、魔法なんていう力が使える相手に、俺みたいな一般人が勝てるのか……いや、勝てる訳が無い。
 あいつは、なんでこんな重要な時に出てこねーんだよ!!
 俺は一階に居るであろうユートに不満を覚えながら、レイミーを見る。

「うふっ」

 ……エロいな……本当にあっちの世界の西井なのか?
 俺は少し頬が熱くなるのを感じながら、後ずさろうとするが、もう逃げ場が無い。

「……はぁ……やっぱりそっくり……」

「な、なんだよ……」

「ねぇ……もっと顔を良く見せて……」

「お、おい……離れろ!」

 レイミーは俺の頬に手を当てると、そのまま顔を近づけてきた。
 何を考えているんだ、こいつは……。
 
「お、お前は……なんでユートに呪いを……」

「決まってるでしょ……憎いからよ」

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