好き同士ってめんどくさい

Joker0808

第18話

「あー! あの影の薄い!」

「喧嘩売ってるのか」

 クラスメイトからの俺への評価ってそんな感じだったんだ……。
 若干俺がショックを受けていると、美月とか言う女子生徒はどこかに行ってしまった。

「クラスで影薄いの?」

「まぁ、あんまり目立つ方でもないしな……」

 だからって本人の前で、影の薄い奴発言はやめて欲しい。
 俺がそんな事を思っていると、今度は俺より背の少し高い男子生徒がやってきた。

「あぁ、康一(こういち)君も来てたんだ」

「よお……陸上部皆で来ててな……」

 今度は男か……西井は人気があるんだな……。
 俺がそんな事を思いながら、飲み物を飲んでいると、康一と呼ばれた男子生徒は俺の事を見てきた。
 いや、見ていると言うよりも睨んで来ている。
 なんだこいつ? 俺に何か用か?
 あぁ……もしかして西井が好きとか?
 だから一緒に居る俺が邪魔なのか……。
 安心しろよ、俺と西井はそんな関係じゃないから。 まぁ、いくらそう考えても彼には伝わらないか……。 俺がそんな事を思っていると、康一は俺に耳打ちをしてきた。

「おい、ちょっと来い」

 驚きはしたが、この手の奴にはなれている。
 彩と幼馴染みと言うだけで、絡まれることは多かったし、嫌がらせも良くされる。
 まぁ、今回は彩絡みじゃないけど……。

「悪い、ちょっと席を外すわ」

「え? どうしたの? 二人とも知り合い?」

 一連の康一の行動から、西井は何かヤバイ雰囲気でも察したのか、俺と康一を不安そうな表情で見ていた。
「まぁちょっと待っててくれ」

 俺は西井にそう言って、康一君と共に店の裏側の路地へ……。

「お前……緒方悠人だよな?」

「そうだけど、なんだよ」

 睨んでくる康一の顔を見ながら俺は尋ねる。
 相当怒っている様子の康一に俺はまず、要件を尋ねる。

「俺を覚えてるか?」

 何言ってんだこいつ?
 俺と康一は初対面だ。
 覚えるも何も無い。

「初対面だと思ったが?」

「っつ!!」

 そう言ったら、康一は俺の胸ぐらを掴んできた。

「覚えて……ないだとぉ!?」

「誰かと間違えてんじゃねーの?」

 俺は落ち着いてそう尋ねる。
 そう言うと康一は、俺の胸ぐらから手を離した。

「……俺はお前が嫌いだ……それだけ覚えておけ!」

「は?」

 そう言うと康一は俺を残して店に戻って行った。
 一体なんだったんだ?
 俺は一体何だったんだろうかと考えながら、そのまま店の中に戻り、西井の居る席に座る。

「何やってたの?」

「いや……別に……何も」

「え? じゃあ何しに行ったの?」

「知らん」

 実際そうだから、そう答えるしかない。
 あいつとどっかで会ったっけかな?
 陸上部には変な奴しか居ないのだろうか?
 そんな事を思いながら、俺と西井は食事を終えて店を出た。

「康一君が?」

「あぁ、俺の事が嫌いなんだと」

 俺は帰る道すがら、何があったのかを西井に話していた。
 
「康一君はそんな怒るような人じゃ無いけど?」

「そうは言っても、俺にはマジギレだったぞ?」

「緒方君何かしたの?」

「だから、俺はあいつと初対面だっての!」

 まぁ、考えられる原因としては、あいつが西井を好きで、一緒に居る俺を邪魔に思ったんだろうな……。
 そんな事よりもだ……。

「お前……いつまでついて来る気だ?」

「え? 家まで?」

「なんでだよ!」

「また緒方君の部屋に行きたいから」

「ダメに決まってんだろ!」

「えぇー!! なんでよ!」

 やっぱり付いてくるつもりだったか……。
 まぁ、西井は俺にアピールしようと必死なのだろうが、部屋に女の子を連れ込んでいるのを彩に見られたら、色々とまずい。

「さっさと帰れ」

「ぶー」

 頬を膨らませて不満そうな顔をする西井。
 気がつけば俺の家はもう直ぐそこだ。
 こんなところに彩なんかがやってきたら修羅場だろうなぁ……。
 なんて事を考えていると、一台の車が俺と西井の前を通過する。
 そして、彩の家の前で止まる。
 俺はなんだか嫌な予感がした。
 そして、その予感は当たってしまった。

「……」

「あ、彩……」

 車からは彩が下りて来た。
 しかもバッチリ俺と西井の方を見ている。
 西井も彩に気がついたらしく、彩の方を見る。

「……」

「……」

 冷たい視線を交わしながら彩と西井の背後には、竜と虎が見える気がした。

「ほ、ほら! 西井はソロソロ帰れって、そろそろ暗くなるし……」

「……うん、じゃあね緒方君」

「あぁ、じゃあ……な?」

 俺が西井に別れを告げた瞬間、俺は頬になにかが当たるのを感じた。
 そして直ぐに気がついた。
 触れていたのが西井の唇だと言うことに……。

「じゃあね!」

 西井は俺にそう言い顔を赤くして去っていった。
 俺は、先ほどまで西井の唇が触れていたであろう箇所を触りながら西井の後ろ姿を見ていた。
 しかし、余韻に浸る間も無く、背後からとてつもない威圧感を感じる。
 俺は恐る恐る後ろを振り返る。

「………」

 無言でこちらを見つめながら、俺に目で何かを訴えかけている。
 怖い……すげー怖い……でも……そんな彩も可愛い!!

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