悪役令嬢はモブキャラになりたい
大雨の夜
イアンのおかげでお昼は室内だけどとても楽しく過ごせた。
けど、もんだいはこれからだ。
───ゴロゴロ
「うぅ……。」
そう、雷が怖い。たぶん、アリア本人の性格だと雷とかは怖いわけではないと思うけど、前世の私の性格と記憶が残ってるから……。前世だといろいろあって雷嫌い。
それに、子供の体は涙袋が浅くてこまる。もうすでに、怖くて目がうるうるしてよく見えない。
こういうときに、イアンが来てくれたらけっこう励みになるんだけどな。
(……そっか!私がイアンのところに行けばいいのか!)
そうと決まれば、とりあえず枕を持って出発。
お昼はまだそこそこ明るくて少し寂しいくらいだったけど、雷と大雨の音が響いて明かりはちゃんとついているけど、お化け屋敷みたいな感じで怖い。
そこまで遠くないはずのイアンの部屋もすごく遠く感じる。なんなら、メイドさんの部屋でもいいからとりあえず1人になりたくない。でもこの時間はまだメイドさんは仕事中だと思うし、こんなくだらない子供の事情で仕事を妨げるのはかわいそうだ。
「あれ、アリア?」
『ひぃっ!?』
怖さのあまり叫んでしまったけど、冷静になってちゃんと前を見たらイアンが枕を抱えていた。
「ごめん。………アリアなにしてるの?」
『え、えーと………。』
雷の音が怖くてイアンの部屋に行こうと思ってた。…なんて恥ずかしくて言えない。
どうやって誤魔化すべきか……。
「……アリアって小さい頃から雷苦手だって言ってたからアリアの部屋に行こうかなって思ってたんだ。」
………なんで、私が雷を苦手なことをイアンが知ってるのか。知ってるのは私の家族とメイドのリーナくらいだけなのに。
『えと………。』
「あ、こんな所で喋らないで僕の部屋行こう!」
『え、あ、うん。』
さすが王子様、優しいな。
「アリア?寝れないの?」
雨がうちつける音とときどきなる雷の音以外、なにも聞こえない静かな部屋でイアンの声が響く。
『うん、まあね。』
当然、イアンの部屋にはベッドは1つしかないので、最初は私が床に寝ようと提案したけど、イアンが「一緒に寝よう。」と上目遣いで言ってきたため、断れずにベッドに2人向き合って寝ている。
このときも、向き合うのはちょっと恥ずかしいからイアンに背を向けていたが、これもまたイアンの「寂しい。」の一言で断れずに向き合うことになった。
正直、雷どころじゃない。
「……大丈夫?雷怖いよね…。」
イアンの優しい声が聞こえたと思ったらすぐさま雷がゴロゴロと鳴る。
声は出さなかったけど、体がビクッと震えた。
『………。』
すると、あったかい手が私の頬に触れた。
すごく優しい。
「大丈夫だよ。」
優しい声。それだけですごく落ち着いた。
イアンも雷がへっちゃらではないと思うのに…。
『ありがとう。』
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