気分は下剋上 アメリカ学会編

こうやまみか

29

「何故あんなに血とか内臓が生理的に嫌悪感を抱くほどのレベルで医学部を優秀な成績で出たな……としみじみ思いますよね。
 国家試験はペーパーテストだけだから全く問題はなかったでしょうが……」
 祐樹も理解出来ないといった感じの表情を浮かべている。
「優秀な成績だったのか?」
 医学部は臨床などのカリキュラムも有るので、文系の学部のように講義を聞いているだけとかレポートや論文提出だけで成績が出るわけでもない。だから、論文系はともかく臨床とか実験などが必要な単位取得はそれほど良い成績ではなかったのでは?と漠然と思っていた。
「厚労省で貴方が講演中に和泉技官とかに聞いたので確かですよ。
 何でも他の省庁でも大歓迎なほどの好成績だったそうです。
 ああ、もしかして一卵性双生児の兄弟でも居て、入れ替わったのかも知れませんね……」
 祐樹が冗談っぽく言った。森技官の兄弟構成はお姉さんが一人いるだけなのは祐樹も知っているハズで、つまりは自分を笑わせるためだけに言ってみたという感じだろう。
「森技官はそういう手段を平気で取りそうだからな……。
 ただ、祐樹の留守中に二人を誘って食事にでも行こうとは思っているが、焼肉は避けることにする。
 柏木先生もこの際だから声を掛けようかとも思うが……?」
 二人の関係を知っている呉先生と森技官は祐樹がアメリカに行っているので、夕食を一緒に摂るというのは自然な流れだが、柏木先生の場合はそもそも祐樹との特別な関係を言っていないのを祐樹も知っている。だから柏木先生を誘っても不自然な流れにならないかを祐樹に聞く意味も込めている。
 自分の判断は――職務上のことはともかく――当てにならないのは自覚している。
「奥さんが夜勤の時などは良いのではないかと思います。あ、手術室は夜勤ナシでしたっけ。
 しかし、あのご家庭は割と二人がバラバラに動いているような感触なので、奥さんがお友達と――ほら、ナースはなまじ経済力も有りますよね。だから離婚率も高いです――夕ご飯を食べに行くとか有りそうです。 
 そういう時なら誘いやすいと思います。
 で、何を召し上がりますか?」
 祐樹と一緒なら何を食べても美味しいが、数日間だけとはいえアメリカに行く祐樹のことを考えて、「お寿司が食べたい、な」と言ってみた。
 すると。
 

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