絶滅危惧種のパパになりました………~だから、保護して繁殖をしようと思います~

ブラックベリィ

0242★馬車の中は………



 腕の中の重さがクンッと増えたことで、白夜が眠ったことに気付いた神護は、クスッと笑って呟く。

 「ほんとぉ~に白夜は、弟達思いで、優しいな
  その分、余計なことを考えてつらくなる

  白夜とその弟達、いや飛翔族の者達が、安心して暮らせる場所を
  作る必要があるよな

  せっかく、この世界で手に入れた《力》だ、有効に使わないとな
  白夜とホタルと【ルシフェル】がくれた《力》
  この世界が正しくあれるように………は建前だけどな

  白夜の一族や、ホタルの子供達が安心して暮らせる場所を
  かならず、俺が作ってやるな 

  それに、封じ込められた邪神とかいうのも気になるしな
  なんと言っても、封じたモノは何時か破れるのは世のことわり

  けして、明けない夜が存在し無いように、永遠なんてモノは存在しない
  神々とて、人から見たら永遠に近いだけで、死なないわけじゃない

  そうでなければ、全てが廻らないからな、停滞すれば循環しない
  魂は廻ってこそ、生きた世界だからな

  仮に、永遠に死なない時を生きるということは
  それすなわち、最初から生きていないのと一緒というコトだ

  ただ、死者が徘徊するだけの静寂な世界なんてゾッとするぜ
  工夫し、考えて、足掻いて、自分自身を昇華するから生きているんだ」

 神護は、腕の中で眠ってしまった白夜の額に優しい口付けを落として言う。

 「これも何かの廻りあわせの縁ってヤツなんだろうし
  俺が、お前の大事なモノ全てを取り戻してやる

  なんつったって、ここは……剣と魔法のファンタジー世界だからな

  願って、努力すれば、なんだって叶うはずだ
  まして、俺には別の世界の知識もある

  そして、白夜や【ルシフェル】やホタルの圧倒的な知識や《力》を
  もらっているんだからな

  ふふふふ………当座は、この砂漠を越えて街道に入り
  彩湖さいこ王国の東の端にある美里みさと街にいるらしい
  グレンとやらを、白夜の為に取り返してやろう」

 そう自分に宣言した神護は、ご機嫌で走る馬達に発破をかける為に大きめの声で言う。

 「さぁ~馬達よ…今日中に……旅の大商人・アデルのキャラバン隊に
  追いつけたなら……そうだなぁ~風糖ふうとうを三粒づつやろう」

 神護からのご褒美が聞こえた馬達は、更にやる気を出して疾走する。
 おかげで、微かに見えていた、旅商人・アデル率いるキャラバン隊の馬車の姿がはっきりと見える程に近付いていた。
 そう、米粒ほどが、今は大豆くらいに見えている。

 「よぉ~しよし、みんなイイ子だ
  そのまま、あのキャラバン隊へ追い付け
  俺は、白夜を中に入れてくるから、頼んだぞ」

 神護のセリフに、先頭を走る馬が軽く鼻を鳴らす。
 了解というコトらしい。

 神護は、入り口の大きさと、リオウの身体の大きさを見比べる。

 ふむ、この大きさなら、リオウも余裕で馬車の中に入れるな
 かなり大人になっても、入れるかもな?

 それを確認した神護は、御者台の背中の台に寝そべるリオウに声を掛ける。

 「リオウ、馬車ン中に入るから、起きて中に入れ」

 そう言いながら、神護は厚手の布をチョイっとよけてやる。

 と、それまでうたた寝していたリオウは、神護の呼び掛けに目を覚まし、クゥゥゥっと身体を伸ばしてから、その言葉に従って、馬車の中へとっそりと入って行く。

 リオウが入ったコトを確認し、神護は眠ってしまった白夜を片腕に抱きながら、御者台の足元に置いたままの幻獣【カーバンクル】の鳥籠を手にする。
 そして、リオウの後に続き、馬車の中へと入るのだった。
 



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