俺が頼んだ能力は神達の中での普通じゃない!!
精霊のいない森
「夜はまだまだこれからよ……ふふっ」
甘い声が俺がいるここまで聞こえる。
不快になった俺は、廃教会のさびて重くなったドアを蹴破った。
ズドンッという激しい音を立てて扉が倒れる。
「残念だったな。夜はもう終わりだ」
「本当に間が悪い……。あいつの時も今回も」
 ゆっくりと吸血鬼が立ち上がる。
俺を見るその赤い眼は怒りに満ちていた。
「どうやって気付かれずにこの中に入ってきたのかしら?結界が壊れた形跡はないけれど」
「結界の荒目を見つけるくらい、簡単だったよ。荒目のない綺麗な結界を作れる人は少ないからね」
 俺の背後からぴょこんと顔を出したシオンはイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべた。
「ほんと、次から次へと。邪魔をしないで欲しいわ」
「じゃあ悠太、ティナは任せたよ」
ーーさあ、作戦開始だ。
俺はこいつをシオンに任せ、ティナの元へと向かった。
■
 ティナは水の張ってある床にぐったりして横たわっていた。
「ティナ?大丈夫か?」
「ゆう……た……?」
意識がはっきりしていないのか、虚ろな目でこちらを見てくる。
「……?」
俺はティナをお姫様抱っこし、自分の着ていた上着をティナにかける。
「ティナ、帰ろうか」
「ん……」
俺がそう言うと、ティナは軽く頷き、安心したのか静かに寝息を立て始めた。
 あとは、シオンがあの吸血鬼を倒して終わりだ。
シオンと吸血鬼は何かを話していた。
 そして、その話し合いが終わったあと教会が大きく揺れた。
 元から水面に浮かんでいた教会が、二人の始まった戦いで大きく揺れているのだ。
「悠太、ティナは!?」
「無事だ!いつでもいいぞ」
 俺が完了の合図を送ると、シオンは教会から飛び出した。
 俺もその後を追う。
「ティナを、私の花嫁を返しなさい!!」
 すると、後ろから吸血鬼も追ってくる。
俺たちは内側から教会の結界を壊すと、森の奥へと進んで行った。
そして、少し経ってから足を止める。
「うん……ここなら大丈夫かな」
「花嫁をっ、返して!!」
シオンから数秒遅れて、吸血鬼も俺たちに追いつく。
吸血鬼が自分の腕を噛む。
そこから血が飛び散った。
「血液操作」
そして、その血は鎖に姿を変えると、俺とシオンに襲いかかってきた。
「炎よ鎖を燃やせ」
すかさずシオンがその鎖を魔法で塞ぐ。
「なんで、魔法が……あっ」
「そう。ここはもう貴方の結界の中じゃない。そしてここには、精霊もいる」
 そう。一回結界で精霊のいない空間を作ってしまえば、その場に精霊が帰ってくるのにも時間がかかる。
 だからある程度、場所を移動して精霊がいる場所まで来たのだ。
 人間焦っていれば周りが何も見えなくなる。ひとつのことに集中すればするほどに……それは吸血鬼も同じだったようだ。
自分が有利であると思っている人間ほど、裏をかくのは容易い。
「これで、私に勝ったつもり?」
だんだんと、周りに霧ができ始める。
その霧は……赤い。
それがどんどんと辺りを包んでいった。
「別に、精霊避けするくらいなら時間はそんなにかからないわ」
シオンの額に、嫌な汗がつうっと垂れた。
甘い声が俺がいるここまで聞こえる。
不快になった俺は、廃教会のさびて重くなったドアを蹴破った。
ズドンッという激しい音を立てて扉が倒れる。
「残念だったな。夜はもう終わりだ」
「本当に間が悪い……。あいつの時も今回も」
 ゆっくりと吸血鬼が立ち上がる。
俺を見るその赤い眼は怒りに満ちていた。
「どうやって気付かれずにこの中に入ってきたのかしら?結界が壊れた形跡はないけれど」
「結界の荒目を見つけるくらい、簡単だったよ。荒目のない綺麗な結界を作れる人は少ないからね」
 俺の背後からぴょこんと顔を出したシオンはイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべた。
「ほんと、次から次へと。邪魔をしないで欲しいわ」
「じゃあ悠太、ティナは任せたよ」
ーーさあ、作戦開始だ。
俺はこいつをシオンに任せ、ティナの元へと向かった。
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 ティナは水の張ってある床にぐったりして横たわっていた。
「ティナ?大丈夫か?」
「ゆう……た……?」
意識がはっきりしていないのか、虚ろな目でこちらを見てくる。
「……?」
俺はティナをお姫様抱っこし、自分の着ていた上着をティナにかける。
「ティナ、帰ろうか」
「ん……」
俺がそう言うと、ティナは軽く頷き、安心したのか静かに寝息を立て始めた。
 あとは、シオンがあの吸血鬼を倒して終わりだ。
シオンと吸血鬼は何かを話していた。
 そして、その話し合いが終わったあと教会が大きく揺れた。
 元から水面に浮かんでいた教会が、二人の始まった戦いで大きく揺れているのだ。
「悠太、ティナは!?」
「無事だ!いつでもいいぞ」
 俺が完了の合図を送ると、シオンは教会から飛び出した。
 俺もその後を追う。
「ティナを、私の花嫁を返しなさい!!」
 すると、後ろから吸血鬼も追ってくる。
俺たちは内側から教会の結界を壊すと、森の奥へと進んで行った。
そして、少し経ってから足を止める。
「うん……ここなら大丈夫かな」
「花嫁をっ、返して!!」
シオンから数秒遅れて、吸血鬼も俺たちに追いつく。
吸血鬼が自分の腕を噛む。
そこから血が飛び散った。
「血液操作」
そして、その血は鎖に姿を変えると、俺とシオンに襲いかかってきた。
「炎よ鎖を燃やせ」
すかさずシオンがその鎖を魔法で塞ぐ。
「なんで、魔法が……あっ」
「そう。ここはもう貴方の結界の中じゃない。そしてここには、精霊もいる」
 そう。一回結界で精霊のいない空間を作ってしまえば、その場に精霊が帰ってくるのにも時間がかかる。
 だからある程度、場所を移動して精霊がいる場所まで来たのだ。
 人間焦っていれば周りが何も見えなくなる。ひとつのことに集中すればするほどに……それは吸血鬼も同じだったようだ。
自分が有利であると思っている人間ほど、裏をかくのは容易い。
「これで、私に勝ったつもり?」
だんだんと、周りに霧ができ始める。
その霧は……赤い。
それがどんどんと辺りを包んでいった。
「別に、精霊避けするくらいなら時間はそんなにかからないわ」
シオンの額に、嫌な汗がつうっと垂れた。
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