俺が頼んだ能力は神達の中での普通じゃない!!

白林

壊れる音。

ーパリンッ。

 そんな音が鳴った。
何かが割れる音。

はっとして後ろを振り返った。

私の……私の張った結界が壊されて、中からあの男が出てきた。

 どうして?なんで?私の頭の中はパニックでいっぱいだった。

あの男は、だって、あの男は、魔法も使ってなかったし、剣だって持ってなかった!

 なのに……なのになんで。

「あはは……。私の作った結界、壊しちゃったんですね……。でも、私、次は手加減しませんよ?」

「手加減……か。強がるなよ。今お前は手を口に当てて俺と話してた。笑うときだけならまだ知らずそのあともだ。本当は内心焦ってるんだろ?」

「まさかそんなわけないじゃないですか!自分より実力の低いものに。ただ少しだけびっくりしただけです。」

「そのわりには口調が荒いような気がするぞ。」

なんなの。この男なんでも私を知っているような口を聞いて。

 私は、杖を男に向ける。

「少しいたい思いしてください。中・光の怒り」

 私の杖に集められていた光の粒子が男に向かって放たれる。

これで……これで私の勝ち……。

「なんで!?」


 私の勝ちのはずだった。
男はそのまま意識を失うはずだった。

なのに、男は、無傷で、私の中級の光魔法を受けて立っている。

「あっぶね。この剣で切れて良かった。」

「剣なんてどこにも……な……。」

 なにもなかったはずの男の手に大きな剣が握られている。
いったいどこから……。

「あははははは。あははははは。」

私は狂ったように笑った。
大きな声で。
だっておかしいでしょ?おかしいよ。

「こんなことで、あなたが、私の上に、立ったとでも思っているんですか?本当にバカ。あははは。」

 男は私が話している間、剣を構え私をみている。

隙があれば踏み込んでくるだろう。

「私、1つだけ上級魔法使えるんです。それに当たって生きてた人はいない。」

「それは、遠慮したいな。」

私は最後にもう一度杖を構えなおす。

「もう、死んでもいいよ?上・光の大爆発」

 光は大きな音を立てて男に迫った。

そして、その光が男の剣に当たったと思った瞬間、造作もなく二つに割れる。

「ありえない。ありえない。ありえない。」

私は魔力が切れその場に座りこんだ。
男は私に一歩一歩近づいてきた。

「ごめん。」

剣を私の腹に刺した。
そして、引き抜く。

「グハッ。」

口から、腹から血が出てくる。
止まらない。

「お兄さんは、何者なのかな?」

「俺は何者でもない。」

「そっか……。じゃあ、名前……教えてよ。」

「悠太。それが名前だ。」

 ……悠太か。こんなに強くても、聞いたことのない名前。

「私は、そろそろ……死ぬかな?」

「ああ。そうだな。」

「冷たいんだね。まぁ当然か。」

 お兄さんが私を見つめる。
その目は、無機質でこの世界も私も、きっとなにも映してはいない。

もう、声は出なくなった。

『ギルドはあっちだよ。』

私は最後にいやがらせに真逆の森に繋がる方を指差し、口パクでそう伝える。

お兄さんは私をチラッとみると指差した方向へ歩いていった。

お兄さんはきっと、世界に絶望してて、それを支えてくれる人がいなくて、寂しいんだ。

私とお兄さんは似てる。

でも、私はまだ自分が寂しいってことに気付ける。

お兄さんは、きっとそれに気付いてない。

あの目はそういう目……。
朦朧とする意識のなか私はそう思った。






カツ、カツ、カツ
次に路地裏に現れたのは引取り手でもない、一人の男だった。

「シェラは失敗したか、そうか。」

男がシェラにそっと触れる。
その瞬間、シェラは灰も残らずに消滅した。

「結局役にたたなかったか。」

男は残念そうにため息をつく。

「待っていろよ。必ず見つけて、オレの元へ連れ戻してみせるからな。」

そう呟くと男はその場から姿を消した。

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