choice02~球体の楽園~
死人(しびと)
祥子の告白にしばらく場は静まり返ったが、有紀がその均衡を破った。
「すでに死んでるだと?…何を言っている?」
祥子は言った。
「そのままの意味よ…、そう、私は…死んだの…。そして、この世界にきて生き返った…」
この世界は、怪我や病気はおろか…死者まで生き返させるのか?…。
葵は言った。
「とことん…人を冒涜してますね…」
祥子は言った。
「でも私は…救われた…」
葵は言った。
「どうして…死んだのです…」
祥子は儚い表情で言った。
「怪我のせいよ…右手の怪我のせいで、私の画家人生は終わったの…」
祥子は続けた。
「左手で絵を描いたけど…到底納得のできる出来ではなかったわ…心底絶望したわ…」
そして、祥子は言った。
「そして、私は…あの日、手首を切った…」
祥子のその言葉の意味は全員が理解した。つまり、自殺したのだ。
皆は衝撃を受けて言葉がでなかったが、葵は違った。
葵は祥子の事を気にした様子もなく言った。
「それで、今を生きる者を殺してまで、この世界にいたいと?…随分勝手な言い分ですね…」
祥子の表情は険しくなった…
葵は続けた。
「自分勝手に人生をドロップアウトしし、あげく、この世界であなたは神になろうとしている…。そして、自分の価値観と合わない者を排除し、理想の世界を造る…」
祥子は言葉を振り絞った。
「だ、だまれ…」
葵は止めない。
「たちの悪い独裁者ですね…。エゴイストもそこまでいくと、見苦しいですね…」
祥子は激昂した。
「だまれって…言ってるでしょっ!」
葵は言った。
「僕は、今まで一度たりとも命を軽んじた事はありません…。したがって、命を軽んじた者を許しません…、それが例え自殺であっても…」
葵はまっすぐ祥子を見ている。
祥子は目を見開いて呆然とした。
そして、それと同時に月島葵という人間に恐怖を覚えた…。
葵の精神力の強さに、ぶれない心に恐怖したのだ。
そして、祥子は確信した。
葵は祥子を見殺しにしてでも、脱出すると…。
葵は言った。
「さぁ、おとなしくして下さい…。死人のあなたに、出る幕はありません…」
葵の言葉に祥子はその場で、崩れさった…。
葵は言った。
「亜美さん、マリアさん…こっちへ」
葵の呼び掛けをきっかけに、我に帰った二人は、葵たちの方へ走ってきた。
葵と五月は二人を解放した。
解放された亜美はその場で気を失った。
気を失った亜美を、有紀は支えた。
亜美を確認して有紀は言った。
「極限の緊張から解放されたんだな…、大丈夫だ気を失っただけだ…」
亜美は気を失ったが、マリアに至っては、相変わらずボーっとしている。
五月が言った。
「終わったの?…」
葵が答えた。
「後は…脱出です…」
皆が安堵したその時だった。
教会の天井の装飾品が落下した。
そして、それは…。
祥子を直撃した…。
一瞬の出来事だった…。
祥子は落下した装飾品の下敷きになり、血が流れ出した。
葵は走った。
「祥子さんっ!」
葵は装飾品をすぐに退けた、装飾品自体さほど大きくはなかったので、退けるのは容易だった。
葵はすぐに祥子を抱えた。
「祥子さんっ!…くっ…」
祥子は傷だらけになり、頭や腹など…様々な箇所から血を流している…。
葵は悟った…。
この出血量では…。
もう…助からないと…。
すると祥子は言った。
「ふふふ……て、天罰…、ね…」
今にも消えそうな声だった。
「い、生きる…事、から……、逃げた…か、ら……バチが、あた、ったのね…」
葵は言った。
「もう…喋らないで…」
「つ、月島…君、脱出…して、あなた達…は、ゴフッ……生きて…」
祥子は息絶えた…。
祥子は死んだ…。それはこの場にいる全員に複雑な気持ちを運んだ。
殺人犯がいなくなった安心感と、仲間が死んだ悲しみが入り交じった複雑な気持ちを…。
葵は皆に背を向けて、震えていた。
有紀も下を向き、五月は涙した。
葵は祥子を抱えたまま言った。
「これで…満足ですか?…」
有紀や五月は、葵が誰に向かって言ったのか、わからなかった。
葵は続けた。
「どれだけ人を弄べば…気が済むのですか?…」
葵の問いかけに返事はない。
だか、葵は続けた。
「僕や歩さんが苦しんだら終わるのですか?…。それとも、死んだら…終わるのですか?…」
そんな葵の姿を見て有紀は呟いた。
「…葵……」
葵は言った。
「そろそろ出てきたらどうですか?…赤塚さん…」
有紀は驚いた。
「赤塚だと?…まさか…」
有紀は反射的に入口の方を見た。
そこには赤塚が立っていた。
皆は反射的に距離をとった。
赤塚は不適な笑みを浮かべている。
「フフフ…やはり気づいてましたか…」
葵は立ち上がった。
「少し時間はかかりましたが…」
有紀が言った。
「葵…まさか、こいつが?」
葵は言った。
「そうです…。彼が、アマツカです…」
赤塚が言った。
「さすがですね…月島葵君…。そして、お久しぶりです…何故、私がアマツカだと?」
葵は言った。
「消去法ですよ…。まず、前回の『島』を経験した人間と、僕と接点のある五月先輩はあり得なかった…」
赤塚は言った。
「さすがですね…しかし、私がこの世界に来ない可能性もあったと思いますが…」
葵は首を横に振った。
「今回の事件…実は引っ掛かる事がありました…」
赤塚が言った。
「ほぉ…聞きましょう…」
葵は言った。
「今回の犯行はこの世界のルールを熟知していないと出来ません…。あなたが祥子さんをそそのかしたから、祥子さんは犯行に及んだ…。理由はそれだけで十分じゃないですか?」
赤塚は言った。
「フフフ…、確かにそうです…」
葵はさらに言った。
「一つ付け加えるなら、僕と歩さんに挑戦状とも、とれる物を渡しておいて…あなたがこの世界に来ない事は、ありえません」
赤塚は言った。
「フフフ…やはり君は面白い…」
葵は赤塚を睨んだ。
「何故、祥子さんを殺したんです?…」
赤塚は笑みを崩さず言った。
「この世界に、心の弱い人間は必要ありません…」
「あなたは…いったい何なんですか?」
赤塚は言った。
「フフフ…では、少し話しましょうか…」
「…世界について……」
「すでに死んでるだと?…何を言っている?」
祥子は言った。
「そのままの意味よ…、そう、私は…死んだの…。そして、この世界にきて生き返った…」
この世界は、怪我や病気はおろか…死者まで生き返させるのか?…。
葵は言った。
「とことん…人を冒涜してますね…」
祥子は言った。
「でも私は…救われた…」
葵は言った。
「どうして…死んだのです…」
祥子は儚い表情で言った。
「怪我のせいよ…右手の怪我のせいで、私の画家人生は終わったの…」
祥子は続けた。
「左手で絵を描いたけど…到底納得のできる出来ではなかったわ…心底絶望したわ…」
そして、祥子は言った。
「そして、私は…あの日、手首を切った…」
祥子のその言葉の意味は全員が理解した。つまり、自殺したのだ。
皆は衝撃を受けて言葉がでなかったが、葵は違った。
葵は祥子の事を気にした様子もなく言った。
「それで、今を生きる者を殺してまで、この世界にいたいと?…随分勝手な言い分ですね…」
祥子の表情は険しくなった…
葵は続けた。
「自分勝手に人生をドロップアウトしし、あげく、この世界であなたは神になろうとしている…。そして、自分の価値観と合わない者を排除し、理想の世界を造る…」
祥子は言葉を振り絞った。
「だ、だまれ…」
葵は止めない。
「たちの悪い独裁者ですね…。エゴイストもそこまでいくと、見苦しいですね…」
祥子は激昂した。
「だまれって…言ってるでしょっ!」
葵は言った。
「僕は、今まで一度たりとも命を軽んじた事はありません…。したがって、命を軽んじた者を許しません…、それが例え自殺であっても…」
葵はまっすぐ祥子を見ている。
祥子は目を見開いて呆然とした。
そして、それと同時に月島葵という人間に恐怖を覚えた…。
葵の精神力の強さに、ぶれない心に恐怖したのだ。
そして、祥子は確信した。
葵は祥子を見殺しにしてでも、脱出すると…。
葵は言った。
「さぁ、おとなしくして下さい…。死人のあなたに、出る幕はありません…」
葵の言葉に祥子はその場で、崩れさった…。
葵は言った。
「亜美さん、マリアさん…こっちへ」
葵の呼び掛けをきっかけに、我に帰った二人は、葵たちの方へ走ってきた。
葵と五月は二人を解放した。
解放された亜美はその場で気を失った。
気を失った亜美を、有紀は支えた。
亜美を確認して有紀は言った。
「極限の緊張から解放されたんだな…、大丈夫だ気を失っただけだ…」
亜美は気を失ったが、マリアに至っては、相変わらずボーっとしている。
五月が言った。
「終わったの?…」
葵が答えた。
「後は…脱出です…」
皆が安堵したその時だった。
教会の天井の装飾品が落下した。
そして、それは…。
祥子を直撃した…。
一瞬の出来事だった…。
祥子は落下した装飾品の下敷きになり、血が流れ出した。
葵は走った。
「祥子さんっ!」
葵は装飾品をすぐに退けた、装飾品自体さほど大きくはなかったので、退けるのは容易だった。
葵はすぐに祥子を抱えた。
「祥子さんっ!…くっ…」
祥子は傷だらけになり、頭や腹など…様々な箇所から血を流している…。
葵は悟った…。
この出血量では…。
もう…助からないと…。
すると祥子は言った。
「ふふふ……て、天罰…、ね…」
今にも消えそうな声だった。
「い、生きる…事、から……、逃げた…か、ら……バチが、あた、ったのね…」
葵は言った。
「もう…喋らないで…」
「つ、月島…君、脱出…して、あなた達…は、ゴフッ……生きて…」
祥子は息絶えた…。
祥子は死んだ…。それはこの場にいる全員に複雑な気持ちを運んだ。
殺人犯がいなくなった安心感と、仲間が死んだ悲しみが入り交じった複雑な気持ちを…。
葵は皆に背を向けて、震えていた。
有紀も下を向き、五月は涙した。
葵は祥子を抱えたまま言った。
「これで…満足ですか?…」
有紀や五月は、葵が誰に向かって言ったのか、わからなかった。
葵は続けた。
「どれだけ人を弄べば…気が済むのですか?…」
葵の問いかけに返事はない。
だか、葵は続けた。
「僕や歩さんが苦しんだら終わるのですか?…。それとも、死んだら…終わるのですか?…」
そんな葵の姿を見て有紀は呟いた。
「…葵……」
葵は言った。
「そろそろ出てきたらどうですか?…赤塚さん…」
有紀は驚いた。
「赤塚だと?…まさか…」
有紀は反射的に入口の方を見た。
そこには赤塚が立っていた。
皆は反射的に距離をとった。
赤塚は不適な笑みを浮かべている。
「フフフ…やはり気づいてましたか…」
葵は立ち上がった。
「少し時間はかかりましたが…」
有紀が言った。
「葵…まさか、こいつが?」
葵は言った。
「そうです…。彼が、アマツカです…」
赤塚が言った。
「さすがですね…月島葵君…。そして、お久しぶりです…何故、私がアマツカだと?」
葵は言った。
「消去法ですよ…。まず、前回の『島』を経験した人間と、僕と接点のある五月先輩はあり得なかった…」
赤塚は言った。
「さすがですね…しかし、私がこの世界に来ない可能性もあったと思いますが…」
葵は首を横に振った。
「今回の事件…実は引っ掛かる事がありました…」
赤塚が言った。
「ほぉ…聞きましょう…」
葵は言った。
「今回の犯行はこの世界のルールを熟知していないと出来ません…。あなたが祥子さんをそそのかしたから、祥子さんは犯行に及んだ…。理由はそれだけで十分じゃないですか?」
赤塚は言った。
「フフフ…、確かにそうです…」
葵はさらに言った。
「一つ付け加えるなら、僕と歩さんに挑戦状とも、とれる物を渡しておいて…あなたがこの世界に来ない事は、ありえません」
赤塚は言った。
「フフフ…やはり君は面白い…」
葵は赤塚を睨んだ。
「何故、祥子さんを殺したんです?…」
赤塚は笑みを崩さず言った。
「この世界に、心の弱い人間は必要ありません…」
「あなたは…いったい何なんですか?」
赤塚は言った。
「フフフ…では、少し話しましょうか…」
「…世界について……」
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