choice02~球体の楽園~
衝撃
皆での朝食を終え、屋敷を出た葵は五月を連れて植物館に向かった。
意外にも葵が五月に申し出た。
五月は機嫌良く言った。
「あんたから誘ってくるとは、やっと私の実力を…」
遮るように葵が言った。
「カメラに収めてほしいだけです…」
五月は何か言いたそうだったが、こらえた。
「ぐっ…、まぁいいわ…」
植物館に到着し葵はさっそく植物を物色し、五月は写真を撮りまくっている。
すると葵は何かに気付いた。
「鏡…」
初日に来た時は気付かなかったが、植物の中に、少し大きい正方形の鏡が確かにあった。
「初日の違和感はこれか?…」
葵が呟いていると、五月も何か見つけたようだ。
「月島葵っ!上、上見て…」
「上?…」
五月に言われるまま葵は天井を見た。
天井には、何もない空が見える穴と、そのそばに1枚の鏡が付いていた。
「鏡…、また…」
五月が不思議そうに言った。
「何に使うんだろ?…」
葵は髪をクルクルし始めた。
「併せ鏡か…しかし、何のために…。それに初日に感じた違和感と少し違う…まだ感じる、違和感を…」
五月が言った。
「何ブツブツ言ってんの?」
葵は呆れて言った。
「緊張感の無い人ですね…、僕に協調性が無いと言う前に、あなたは緊張感を少し持った方がいい…」
五月は怒りの表情で言った。
「なぁにぃっ!」
葵は気にすることなく言った。
「次へ行きますよ…」
二人は植物館を後にした。
植物館を出た二人は、教会へ向かった。
教会は屋敷の部屋の丁度裏側で、植物館からは役100m程の距離だ。
教会に入りさっそく葵はある物を探し始めた。
葵を見て五月が言った。
「ここ、写真だいぶ撮ったからな…何を探してるの?」
葵は入り口を指差し言った。
「ありました、鏡です…」
五月は不思議そうだ。
「またぁ?」
「ええ、また鏡です…」
その鏡は入り口の真上にあった。
正方形で70~80cm程の長さで、植物館にあったのと大きさは変わらない。
葵は天井を見た。
「また鏡だ…」
天井には植物館と同じく穴が空いていて、また鏡が備え付いてある。
葵は髪をクルクルしながら言った。
「繋がっているのか?…入り口の鏡は祭壇を写している…」
五月が葵に言った。
「どうしたの?考え込んで…」
「少しカメラを貸して下さい…」
五月は嫌そうな顔で言った。
「別にいいけど…壊さないでよ…」
葵は五月からカメラを受けとると、祭壇の上に置いた。
鏡はカメラを写している。
葵は口角を上げた。
「フッ、なるほど…」
「どうしたの?」
不思議そうな五月を、気にすることなく、教会を出て行こうとした。
教会を出る間際に五月に言った。
「カメラはそのままに…」
何がなんだかわからない五月は、葵を追いかけた。
「ちょ、ちょっと…まちなさいっ!」
教会を出た葵は、植物館に向かって走り出した。
植物館に到着した葵は、真っ直ぐに植物の中に混じっている鏡へ向かった。
鏡を確認した葵は口角を上げた。
「フッ、やはり…」
その頃五月も到着して葵に言った。
「なによ……、急に走り出して……」
葵は何かブツブツ言っている。
「…後は…、あの球の正体を…、しかし、あの球はいったい…」
五月が言った。
「何をブツブツ言ってんの?…」
五月に気付いた葵は鏡を指差した。
「来ましたか…鏡を見てください…」
「鏡?…どれ…」
五月は鏡を覗き見た。
中に写っている物を確認して言った。
「これっ!私のカメラ…なんで?」
葵は言った。
「教会の鏡と植物館の鏡は…繋がっているんですよ…」
「何のために?」
葵は言った。
「それはまだ、はっきりとはわかりません」
五月は口を尖らせた。
「なんだ…」
「でもこれだけは言えます…」
五月はまだ口を尖らせている。
「なによ?…」
葵は口角を上げた。
「脱出に関わる事は間違いないでしょう…」
五月は表情を明るくして言った。
「だったらもうすぐ帰れるんじゃ…」
「まだピースが揃っていません…」
「ピース?…」
「確証が無いので、何とも言えません…」
五月は残念そうに言った。
「そっか…」
「しかし、そう遠くは無いです…。さぁもう12時20分です、屋敷へ戻りましょう…」
二人は植物館を出て屋敷に戻る事にした。
すると植物館を出て屋敷に向かう最中だった。
反対の芸術館の方からその声は聞こえた。
「キャーッ!…だ、誰かきてっ!…誰かっ!」
反射的に葵は五月に言った。
「先輩っ!カメラを取りに行ってすぐに、悲鳴の聞こえた方へっ!」
五月は表情を強ばらせて言った。
「わっ、わかったっ!」
葵は悲鳴の聞こえた方へ走って行った。
「何が?…まさか…」
屋敷から歩と有紀が出てきて、葵と合流した。
歩が葵に言った。
「聞こえたか?」
「はい…、誰の悲鳴かは…」
有紀が言った。
「おそらく…亜美だ、亜美の悲鳴だ…とにかく行くぞ」
3人が向かった先、小さな湖のほとりに亜美がいた。
亜美の足元に誰か倒れている。
歩が言った。
「亜美ちゃんっ!いったいどうし…」
歩も倒れている人がいる事に気付いたようだ。
有紀が言った。
「歩っ!亜美を頼む…、葵…」
「わかってます…」
うつ伏せに倒れている男性がいる。
男性の下には大きな血溜まりがあった。
葵は男性に近づき、男性の確認をした。
陸だった。
葵は脈をとった。
「くっ、だめだ…」
呼吸に心音も確認したが…、陸は既に息絶えていた。
有紀が言った。
「葵…」
「ええ…死んでます…」
亜美は呆然としてその場で崩れた。
歩が亜美を支えた。
「亜美ちゃん、しっかり!」
やがて、五月、九条が現場に到着し、祥子と愛、マリア、赤塚が到着した。
葵は地面を思いっきり殴った。
「くそっ!…また…、また繰り返すのか…。くそっ!」
目の前で起こった人の死に、皆は呆然とするしかなかった…。
静かなこの球体の世界で、葵が地面を殴る音が虚しく響いていた…。
意外にも葵が五月に申し出た。
五月は機嫌良く言った。
「あんたから誘ってくるとは、やっと私の実力を…」
遮るように葵が言った。
「カメラに収めてほしいだけです…」
五月は何か言いたそうだったが、こらえた。
「ぐっ…、まぁいいわ…」
植物館に到着し葵はさっそく植物を物色し、五月は写真を撮りまくっている。
すると葵は何かに気付いた。
「鏡…」
初日に来た時は気付かなかったが、植物の中に、少し大きい正方形の鏡が確かにあった。
「初日の違和感はこれか?…」
葵が呟いていると、五月も何か見つけたようだ。
「月島葵っ!上、上見て…」
「上?…」
五月に言われるまま葵は天井を見た。
天井には、何もない空が見える穴と、そのそばに1枚の鏡が付いていた。
「鏡…、また…」
五月が不思議そうに言った。
「何に使うんだろ?…」
葵は髪をクルクルし始めた。
「併せ鏡か…しかし、何のために…。それに初日に感じた違和感と少し違う…まだ感じる、違和感を…」
五月が言った。
「何ブツブツ言ってんの?」
葵は呆れて言った。
「緊張感の無い人ですね…、僕に協調性が無いと言う前に、あなたは緊張感を少し持った方がいい…」
五月は怒りの表情で言った。
「なぁにぃっ!」
葵は気にすることなく言った。
「次へ行きますよ…」
二人は植物館を後にした。
植物館を出た二人は、教会へ向かった。
教会は屋敷の部屋の丁度裏側で、植物館からは役100m程の距離だ。
教会に入りさっそく葵はある物を探し始めた。
葵を見て五月が言った。
「ここ、写真だいぶ撮ったからな…何を探してるの?」
葵は入り口を指差し言った。
「ありました、鏡です…」
五月は不思議そうだ。
「またぁ?」
「ええ、また鏡です…」
その鏡は入り口の真上にあった。
正方形で70~80cm程の長さで、植物館にあったのと大きさは変わらない。
葵は天井を見た。
「また鏡だ…」
天井には植物館と同じく穴が空いていて、また鏡が備え付いてある。
葵は髪をクルクルしながら言った。
「繋がっているのか?…入り口の鏡は祭壇を写している…」
五月が葵に言った。
「どうしたの?考え込んで…」
「少しカメラを貸して下さい…」
五月は嫌そうな顔で言った。
「別にいいけど…壊さないでよ…」
葵は五月からカメラを受けとると、祭壇の上に置いた。
鏡はカメラを写している。
葵は口角を上げた。
「フッ、なるほど…」
「どうしたの?」
不思議そうな五月を、気にすることなく、教会を出て行こうとした。
教会を出る間際に五月に言った。
「カメラはそのままに…」
何がなんだかわからない五月は、葵を追いかけた。
「ちょ、ちょっと…まちなさいっ!」
教会を出た葵は、植物館に向かって走り出した。
植物館に到着した葵は、真っ直ぐに植物の中に混じっている鏡へ向かった。
鏡を確認した葵は口角を上げた。
「フッ、やはり…」
その頃五月も到着して葵に言った。
「なによ……、急に走り出して……」
葵は何かブツブツ言っている。
「…後は…、あの球の正体を…、しかし、あの球はいったい…」
五月が言った。
「何をブツブツ言ってんの?…」
五月に気付いた葵は鏡を指差した。
「来ましたか…鏡を見てください…」
「鏡?…どれ…」
五月は鏡を覗き見た。
中に写っている物を確認して言った。
「これっ!私のカメラ…なんで?」
葵は言った。
「教会の鏡と植物館の鏡は…繋がっているんですよ…」
「何のために?」
葵は言った。
「それはまだ、はっきりとはわかりません」
五月は口を尖らせた。
「なんだ…」
「でもこれだけは言えます…」
五月はまだ口を尖らせている。
「なによ?…」
葵は口角を上げた。
「脱出に関わる事は間違いないでしょう…」
五月は表情を明るくして言った。
「だったらもうすぐ帰れるんじゃ…」
「まだピースが揃っていません…」
「ピース?…」
「確証が無いので、何とも言えません…」
五月は残念そうに言った。
「そっか…」
「しかし、そう遠くは無いです…。さぁもう12時20分です、屋敷へ戻りましょう…」
二人は植物館を出て屋敷に戻る事にした。
すると植物館を出て屋敷に向かう最中だった。
反対の芸術館の方からその声は聞こえた。
「キャーッ!…だ、誰かきてっ!…誰かっ!」
反射的に葵は五月に言った。
「先輩っ!カメラを取りに行ってすぐに、悲鳴の聞こえた方へっ!」
五月は表情を強ばらせて言った。
「わっ、わかったっ!」
葵は悲鳴の聞こえた方へ走って行った。
「何が?…まさか…」
屋敷から歩と有紀が出てきて、葵と合流した。
歩が葵に言った。
「聞こえたか?」
「はい…、誰の悲鳴かは…」
有紀が言った。
「おそらく…亜美だ、亜美の悲鳴だ…とにかく行くぞ」
3人が向かった先、小さな湖のほとりに亜美がいた。
亜美の足元に誰か倒れている。
歩が言った。
「亜美ちゃんっ!いったいどうし…」
歩も倒れている人がいる事に気付いたようだ。
有紀が言った。
「歩っ!亜美を頼む…、葵…」
「わかってます…」
うつ伏せに倒れている男性がいる。
男性の下には大きな血溜まりがあった。
葵は男性に近づき、男性の確認をした。
陸だった。
葵は脈をとった。
「くっ、だめだ…」
呼吸に心音も確認したが…、陸は既に息絶えていた。
有紀が言った。
「葵…」
「ええ…死んでます…」
亜美は呆然としてその場で崩れた。
歩が亜美を支えた。
「亜美ちゃん、しっかり!」
やがて、五月、九条が現場に到着し、祥子と愛、マリア、赤塚が到着した。
葵は地面を思いっきり殴った。
「くそっ!…また…、また繰り返すのか…。くそっ!」
目の前で起こった人の死に、皆は呆然とするしかなかった…。
静かなこの球体の世界で、葵が地面を殴る音が虚しく響いていた…。
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