choice02~球体の楽園~

ノベルバユーザー329392

あの時の経緯

朝食をとった葵は少し外を探索する事にした。


「球体か…」


葵は髪をクルクル回しながら、球体を覆い茂っている、芝の上を歩いている。


屋敷の入口の側には、鉄のボックスがある。
昨日も確認したが、前回と同じ『消去ボックス』で、入れた物が消えてしまうボックスだ。


『リセットのルール』と『消去ボックス』がある…。アマツカが造った世界に間違いはなさそうだ。


しばらく歩くと、グランドが見えてきた。陸がサッカーボールを使い、汗を流している。


葵は少し観察した。
「さすがに上手い…スクールのコーチだけはある…」


陸は葵に気づく事なく軽快にボールを使い、汗を流している。
すると葵は何かに気付いた。


「うん?…あの人の動きは…」


後ろから葵呼ぶ声がした。


「ここにいたの?月島葵…」


葵が振り替えると、五月だった。
「また、あなたですか…」


「旅は道連れよっ!」


「使い方を間違っています…」


「ごちゃごちゃうるさいわねっ!」


葵は五月を無視して歩いた。


五月は葵を追いかける。
「まちなさいっ!」


「僕はあなたに構っているヒマはありません…」


「あんた夢の中でも、嫌なやつね…」


「まだ夢だと思ってるのですか?…呆れた人です…」


「夢じゃなかったら、なんなのよっ?」


「もう隠しても仕方ないか…まぁ隠していたつもりもないが…」


「何をごちゃごちゃ言ってんの?」


「この世界が…あなたの知りたがっていた事ですよ…」


葵は夏の出来事と、この世界に来るまでの経緯を五月に説明した。


五月は興奮して言った。
「スクープよっ!これぞオカルトよっ!」


「のんきな人です…命がけなんですよ…」


「そのわりには皆、のんきじゃん…」


葵は五月に釘を刺した。
「くれぐれも他の方には、アマツカの存在を言わないように…」


「なんで?…」


「混乱を招きます…」


「なるほど…わかった」


五月は納得してくれたようだ。


葵は五月に言った。
「では、次…行きますよ、五月先輩…」


五月は葵に名前で呼ばれたので、驚いた。
「あんた…今、名前でよんだ?…」


「気に入らなければ、ストーカーとお呼びしますが…」


「それはやめて…」


葵と五月は芸術館へ向かった。


五月は言った。
「ここに何かあるの?」


「さあ…、でもつい来てしまいます」


「なんか迫力あるもんね…」


中に入ると芸術品の数々が二人を出迎える。


思わず葵は呟いた。
「素晴らしい…」


五月はもうすでに、カメラで撮り漁っている。


昨日はそんなに見れなかったが、あらためて見てみると…有名な絵画がまだまだある。
「ジョットの『追悼』…、ヨハネス・フェルメールの『絵画芸術』まであるな…あとは、ゴッホにビカソ…ベター処か…」


祥子は感覚で本物だと思ったと、言っていたが…あながち間違いではない。


そう思う程の魅力が、これらの芸術品にはある。


葵は芸術品の共通点を探したが…。
「技法も、材質…時代も…バラバラで一貫性がないな…僕には気づかない、何かがあるのか?…。
一度、祥子さんに聞いてみるか…」


葵は五月を呼んだ。
「僕はもう出ますが…五月先輩はどうしますか?」


「私も出る…ちょっと待って…」


二人は芸術館を出た。


葵は五月に聞いた。
「昨日、教会で写真は?」


「撮ったよ!ばっちり!」


「では、あの球も?」


「もちろん!いちばんに撮ったよ!」


「後で見せて下さい…」


五月はニヤニヤして言った。
「やっと私の力が必要になったのね…」


「そういう事にしておきます…」


五月は葵の背中を叩いて言った。
「素直になりなさいっ!後輩よ…」


葵は顔をしかめて言った。
「痛いですよ…。それより、屋敷に戻りますよ…そろそろ昼食です…」


「確かに…お腹すいた…」


屋敷に戻り食堂に行くと、まだ誰もいなかった…。
「誰もいないねぇ…」


五月がそう言うと、葵が言った。
「少し早かったかようです…お茶でも入れますか…何か飲みますか?」


「気が利くじゃない…じゃあ、アイスティー」


「わかりました、少し待っていて下さい…」


そう言うと葵は厨房へ行った。


厨房はそこそこ広く、業務用の冷蔵庫にキッチン用品も充実している。


葵はアイスティーといつものアイスカフェラテを作り、シロップを5~6個持って、食堂に戻った。


葵はアイスティーを五月にわたした。


「ありがとっ!」


葵も座ってシロップを3つ入れた。


「それ…甘すぎない…」


「僕はこれが一番好きなのです…」


葵は一口飲んで言った。
「やはり、コーヒー6と牛乳4のシロップ3つが一番いいです…」


満足そうな葵を見て、五月は苦い表情で言った。
「あ、そう…」


すると歩と愛が食堂にきた。


歩が二人を見て言った。
「二人とは…デートでもしてたのかい?」


五月は照れながら言った。
「デ、デートなんて…そんな…」


葵はあっさり否定した。
「まさか…するわけないでしょ…そんな事より歩さんは、どこへ?」


歩はニッコリして言った。
「俺はデートっ!ねっ愛ちゃん…」


愛は顔を真っ赤にしている。


葵は言った。
「冗談はそれくらいで…何かわかりましたか?」


歩は頭をかきながら言った。
「あっ、バレた?散歩がてら、教会にね…それにしてもあの球はなんだろ?…葵君は、何かわかった?」


「いえ…何も…。僕たちは芸術館に行きましたが、変わった事は特に…」


「前みたいに、共通するものがないからね…今回は手こずるかもな…」


しかし、ゆっくりもしてられない…アマツカがここにいる可能性もある。
アマツカが仕掛けてきたら、またもや後手になる。


「脱出するにはやはり、あの球ですか…」


「だろうね…」


すると九条がやって来た。
「まだ皆、揃ってないようだね…」


歩か言った。
「それじゃ俺は昼食の準備をしますか…」


「あ、私も手伝います…」


歩と愛は厨房へ行った。


五月は二人を見て言った。
「ねぇねぇ、あの二人…いい感じじゃない?」


葵は不思議そうに言った。
「いい感じ?何がですか?…」


「あんた…こういう事は無頓着なのね…」


葵は九条に言った。
「九条さん、少し聞きたい事が…」


「まぁ、だいたい予想はつくけど、なんだい?」


「A&Mcompanyとはなんです?…」


九条は少し考えて言った。
「君もある程度わかっているようだが…あの『チケット』の発行元だ…」


「やはり…ではどういった経緯で、僕たちに…」


「僕の会社に10枚届いた。僕もちょうど休暇が欲しかったから、1枚だけ取って…残りは譲渡したんだ…」


九条はさらに続けた。
「僕の会社はかなりの企業に投資をしているが、しっかり会社実体を調査してから投資をする…だから株主優待で届いたチケットに疑いはもたなかった」


九条は一息ついて言った。
「しかし、後で調べたらA&Mcompanyなんて会社は存在しなかった…最初からね…」


「なるほど…A&Mcompanyが、自分が投資をしている企業の一つだと思い込んだわけですか…」


九条は表情を落とした。
「情けない話だよ…」


「それで、譲渡はどのように?」


「会社の事務員に頼んだよ…適当に配ってくれって、ね…」


「では、事務員が適当に配ったと…」


「ところがそれには続きがあってね…」


「続き…ですか?…」


「後で聞いた噺だが、新人の社員が自ら譲渡先の選別を申し出たそうだ…」


「その社員さんは、もちろん…」


「ああ…僕が会社に復帰する前に、辞めたよ…」


「やはり…、だがはっきりしましたね…」


五月が言った。
「何が?…」


「アマツカは僕たちを狙って、あの島に招待したんですよ…そして、今回も…五月先輩は予定外でしょうが…」


九条が言った。
「前回の事があるから油断は禁物だね」


葵が言った。
「警戒は怠らない方がいいです…新しい面々も数品いますから、観察が必要です」


この後、食堂に皆が揃い昼食をとる事となった。




……某所……


「もうすぐピースが揃います…」


「ゲームの開始か…」


「ええ…、今回の主旨は、そうですね『人間の尊厳』と、いったところですか…」


「君の事だ、また何か企んでいるのか?…」


「フフフ…人聞きの悪い事を…、ただ今回の脱出方法は前回に比べて簡単にしてましす…」


「ほう、何故だ…」


「わかっても『簡単には出れない』とだけ言っておきましょう…」


(さぁ、あなたに選ぶ事ができますか?…月島葵、君は葛藤するでしょう…。
そして、渡辺歩…せいぜい苦しんで下さい…)


「今回も…楽しくなりそうです…」













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