OVER-DRIVE

ノベルバユーザー329392

 ……アデル中央本部……


 アデル中央本部のとある豪華な一室に、アリエルはやって来た。
 英霊参拝の帰りだったので、黒いドレスのままだ。
 アリエルは息を整え、豪華な金のフレームが目立つ扉を開けた。
 「アリエル・ノイヤー将軍っ!入りますっ!」
 アリエルの入った部屋は、誰かの書斎だろうか……豪華な本棚に様々な本が並べられており、部屋の奥にはこれまた豪華な机と椅子があり、そこに白の法衣のような物に、身を包んだ男性老人がいた。
 老人は優しそうな表情に、白くて長い顎髭あごひげを生やしている。
 老人はアリエルに微笑んだ。
 「すまぬな……呼び立てて……」
 アリエルは老人に対して敬礼した。
 「はっ!ゼラフ右大臣様……」
 老人の名は……アドリア・ゼラフ……。アデルの右大臣であり、アデルの政治と法を司る……アデルのNo.3である。
 ゼラフはアリエルの格好を見て言った。
 「楽にせよ……。ところで、出掛けておったか?」
 アリエルは敬礼を解いた。
 「英霊に会いに……」
 ゼラフは感慨深い表情になった。
 「お前は律儀だな……。儂も英霊達に会いに行きたいのだが……彼らの犠牲がなければ現在の我々はないからな……」
 「右大臣様は御公務に追われております……」
 ゼラフは軽く笑った。
 「フッ……その公務もお前がいるから、やれるのだ……。感謝しておる……」
 「勿体無い御言葉です……」
 恐縮するアリエルに、ゼラフは再び微笑んだ。
 「フォフォ……ほんとに感謝しておる……。戦争が終わり十年……アデル十傑は解散し、お前は将軍となった」
 するとゼラフの表情は険しくなった。
 「表向きには世界は安定し、人々は平和に暮らしておるが……。実際はそういう訳ではない」
 「心得ております……」
 ゼラフは続けた。
 「人々の暮らしのためにも、アデルが徹底的に平和管理をせねばならんが……。お前も知っての通りアデルは一枚岩ではない……」
 アリエルの表情も険しくなった。
 ゼラフはさらに続けた。
 「左大臣の動きが、活発になっておる……」
 アリエルは目を見開いた。
 「左大臣様がですか?」
 ゼラフは頷いた。
 「奴も政局争いに躍起になっておるからのぉ……。新大陸の発見に力を入れておるのだ」
 アリエルは険しい表情のまま言った。
 「では……マクベス博士の研究所の破壊は……」
 ゼラフの目は鋭くなった。
 「可能性はある……。ロメロを抱き込んだところで、儂らがジンに接触をするのを恐れたのかもしれん」
 アリエルは言った。
 「それでは……朧は左大臣が?」
 「証拠はないがのぉ……。アリエルよ」
 「はっ!」
 「世界が安定すれば、必ず起こる争いがある……」
 ゼラフは苦笑いした。
 「それは、『誰が』世界を治めるか……。不毛な争いじゃ……」
 アリエルは感慨深い表情をした。
 ゼラフは言った。
 「これまで以上に新大陸の発見と、開拓に力を入れてくれ。儂らはこの戦いに、負けるわけにはいかん……」
 複雑な表情のゼラフに対して、アリエルは言葉を発する事はなかった。




 ……ウィング操縦室……


 操縦室に戻った一行は、出航の準備をしていた。
 エリスとジンはロックに注目し、ロックはニヤニヤとしていた。
 ジンがロックに言った。
 「で……その言い考えがとは?」  
 資金調達に言い考えがあると言ったロックに対して、ジンは怪訝な表情をしている。
 ロックは言った。
 「ここから近くで、さらに金回りがいい所と言えば?」
 ジンはハッとした表情で言った。
 「まさか……」
 ロックはさらに悪いニヤつきをした。
 「そう……『ゴールドアイランド』だ」
 エリスはゴールドアイランドの事を知らなかったが……そのネーミングから嫌な予感がした。
 エリスは恐る恐るロックに聞いた。
 「ねぇロック……それって……」
 「ヒッヒッヒッ」と笑うロックに代わり、ジンが言った。
 「ゴールドアイランド……簡単に言えば、ガジノの付いているリゾート島だ」
 ロックは目を輝かせた。
 「一発勝負じゃあーっ!」
 エリスは頭を抱えた。ロックが万年金欠の原因を垣間見た気がした。
 ジンは言った。
 「悪くない……」
 エリスはギョッとした。まさかジンがロックの提案に乗るとは、思わなかったのだ。
 「ちょっと……ジン……」
 すると不安そうなエリスに、ロックが言った。
 「何だエリス……お前ビビってんのか?女独りで旅に出たわりに……度胸がねぇなぁ」
 ロックは何とも言えない、悪い顔をしている。
 これにはエリスもカチンときた。
 「度胸がない?ふざけないでよっ!博打でも何でも、やったろうじゃないっ!」
 ロックは不敵に笑った。
 「へっ……んじゃあ行きますかっ!」
 「ゴールドアイランドにっ!」
 ロックの言葉に、ジンは力強くレバーを引いた。
 飛空挺ウィングは凄まじい轟音をあげ、空に浮いた。
 こうしてロック一行の、前途多難な旅が始まった。
 それぞれの想いを、自分達の翼に乗せて……大空を飛び立った。



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