OVER-DRIVE

ノベルバユーザー329392

  ……翌朝……




 エリスはカウンター席に座り、マスターが煎れたコーヒーを飲んでいた。
 休んでスッキリしたのか、表情は少しだけ晴れていた。
 「去年バァちゃんが死んだの……」
 おもむろにエリスはマスターに話始めた。
 「わたし……両親は戦争で死んで、バァちゃんが育ての親だったの」
 マスターが言った。
 「たった一人の肉親かい?」
 エリスは首を横に振った。
 「ううん……両親もバァちゃんも、血は繋がってないの……。わたし捨て子なんだ……」
 「そうかい……イヤな事を聞いちまったねぇ……」
 エリスは微笑んだ。
 「いいの……。バァちゃん、死に際に言ったわ……「アレルガルドに帰れ」って……」
 「それで旅に出たのかい?にしても、無茶だよ……女独りで……」
 「無茶はわかってる……でもアレルガルドに行けば、わかるかもしれないの……わたしが何者なのか……」
 エリスは立ち上がった。エリスの側には大きなリュックがある……スーツケースだと動きにくいので、買い換えたのだろう。
 マスターがエリスに言った。
 「行くのかい?」
 エリスは頷いた。
 「うん。ありがとうマスター……お世話になりました」
 そう言うとエリスは店を出て空を見た。
 「いい天気……」
 するとエリスの横から声がした。
 「待てよ……」
 エリスが声の方を向くと、ロックが立っていた。
 エリスは目を丸くした。目を丸くしたエリスにロックは言った。
 「ついてってやるよ……」
 「えっ?」
 するといつの間にやらマスターも店の外にいた。マスターはロックに耳打ちした。
 「聞いてたのかい?」
 ロックはマスターに言った。
 「立ち聞きするつもりはなかったけどな……」
 エリスは目を丸くしたままロックに言った。
 「どうして?」
 「別に……ただお前の力に興味がでただけだ……行くぜ、エリス……」
 エリスは目を丸くしいたが、すぐに笑顔になった。
 「うんっ!行こっ、ロック……」
 ロックは怪訝な表情をした。
 「なにニヤニヤしてやがる」
 「初めて名前で呼んだでしょ?」
 「るせぇ……」
 ロックとエリスの旅立つ後ろ姿を見て、マスターは鼻で笑った。
 「フッ……大丈夫かねぇ……」




 ……アデル総本部……




 アデルの総本部のとある一室に、漆黒のスーツに身を包んだ、一人の女性がいた。
 女性は長く美しい黒い髪に、白いマントを羽織っている。
 「¥キングは壊滅しましたか……」
 女性がそう言うと、部下らしき男が頷いた。
 「はっ!治安維持隊が到着したころには……すでに壊滅状態でした。メインブレーカーが爆発されただけでしたので……一般人への被害はなかったようです」
 女性は部下に言った。
 「目撃証言は?」
 「はっ!……それがあれだけの規模の組織が壊滅したにも関わらず……どの目撃者も「青白い髪をした男が一人で乗り込んだ」の証言しか……」
 女性は鼻で笑った。
 「フッ……そうですか……」
 部下は言った。
 「将軍……本当なのでしょうか?たった一人であの組織を潰すなんて……」
 将軍と呼ばれる女性は、笑顔で部下に言った。
 「引き続き調査して下さい……。ありがとう、もう下がって結構です」
 将軍の美しい笑顔に、部下は顔を赤らめて言った。
 「はっ!それでは失礼しますっ!」
 部下はそそくさと部屋を後にした。部下が部屋を後にすると、笑い声が聞こえた。
 「クククク……やっぱ先輩は面白いでさぁ……」
 将軍は声の主に言った。
 「やはり……ハーネストですか?ジュノス……」
 笑っていた男はジュノスだった。
 「多分……先輩、奴らの文句言ってましたから……」
 「気まぐれで潰したと?」
 ジュノスは首を横に振った。
 「まさか……それは無いことは……姐さんも知ってんでしょう?でも、少し気になる事が……」
 「なんですか?」
 「いやぁ……先輩に聞かれたんですが……『アレルガルド』って国の事を調べてるみたいです」
 将軍の表情が険しくなった。
 「アレルガルド……」
 将軍の表情にジュノスが反応した。
 「知ってんですかい?」
 将軍は鼻で笑った。
 「フッ……いえ……。しかし安心しました……ハーネストが元気そうで」
 ジュノスは苦笑いした。
 「こっちが安心しても……先輩は嬉しくないでしょうね……あっ、それと『ジン博士』が『おぼろ』と接触したそうでさぁ……」
 将軍の表情は再び険しくなった。
 「テロリスト集団……朧……」




 ……アデル13番街……




 ロックとエリスは13番街と14番街の境目にいた。
 エリスはロックに言った。
 「これからどうするわけ?」
 「ここに行く……」
 ロックはマスターから預かったメモを、指で挟んでヒラヒラした。
 エリスは怪訝な表情をした。
 「なにそれ?」
 「俺の知り合いがいるとこだよ……」
 「知り合いが?……でも何しに行くの?」
 ロックは呆れた様子で言った。
 「お前……歩いて世界を回るきかぁ?」
 エリスは苦笑いした。
 「確かに……」
 「世界を旅するには必要なものがあんだろ?」
 エリスは目を丸くした。
 「あっ……」
 ロックはニヤリとした。
 「そう、飛空挺だよ……」
 エリスの表情は一気に明るくなった。
 「飛空挺っ!すごいじゃんっ!……で、そこに行けば手に入るのねっ?」
 ロックは再び呆れた様子で言った。
 「アホか……そんな簡単に手に入る訳ねぇだろっ!幾らすると思ってんだ?」
 エリスは少しムッとした表情になった。
 「じゃあ何しに行くの?」
 「今から行くとこには、科学者がいてな……そいつが知り合いな訳……。そいつ飛空挺造ってるから、試作とかありゃあ……貸してくれっかもな」
 エリスは納得したようだ。
 「成る程……そう言う事……。で?その人の名前は?」
 ロックは言った。
 「『ジン・マクベス』……皆には『ジン博士』って、呼ばれてる」
 ロックとエリス……二人は出逢い、共に旅することになった。
 ロックとエリス……この二人の出逢いが、世界を動かす事になるとは、まだ誰も知らない。



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