怖い話
※①トンネル
こちらの作品は実話を元にした話です、苦手な方はオールフィクションの作品にてお楽しみください。
又、個人名に関しては偽名を使わせて頂きます。
伊勢神宮で有名な三重県、そんな三重県で起こったとても奇妙な物語。
とある若い男女2人は休日に車を使い、伊勢神宮までお参りに行こうとする。
「ねぇ、カズ君伊勢神宮に行くならついでにおかげ横丁も行こうよ」
運転席に乗る男性にそう声をかけたのは助手席に乗るミサだった。
「あぁ、どうせ通る道だしな」
車のハンドルを握るカズはそっけない態度でそう返事をする。
「やった!」
そんな、カズとは裏腹にまるで小学生のように純粋で明るい笑顔を見せるミサ。
しばらく車を走らせていると目的地である伊勢神宮に到着した。
「意外と早く着いたな」
カズは淡々と運転した感想を述べる。
「そうだね!道が混んでなくて良かった!」
ミサは元気よくそういう。
その後は約束していたおかげ横丁を2人で見て回り、本来の目的である伊勢神宮での参拝を済ませ、車に戻った。
「久しぶりにあんな歩いたわ」
カズは少し疲れた様子で言う。
「そうだね、意外と歩く距離長かったね」
ミサも少し疲れたのか、伊勢神宮に向かう前のような元気は無かった。
「つか、出発する時間早すぎたな、もう参拝し終わったのにまだ昼の3時か」
カズは左腕に付けられた腕時計を見ながらそう言う。
「そうだねー、ちょっと早かったね。どっか行く?」
昼の3時、それは2人にとって休日を使って遊び終わる時間にはまだ早い時間帯であった。
「そうだな、カラオケでも行くか?」
「うん!」
こうして、2人は伊勢神宮での参拝を後し、カラオケへと向かった。
そして、カラオケを楽しみ再び車に戻った2人。
「楽しかったな!」
カズは今日1番の元気な声を出した。
やはり男というものは見て回るだけではテンションは上がらないものなのだ。
「そうだね!」
ミサも伊勢神宮で歩き疲れた後とは違い、元気な声でカズに返事をした。
「けど、ちょっと長く歌いすぎたな、もう夜の8時だ」
「そうだね...」
2人しか居ない車、2人しか居ない密室、そこには大人の雰囲気が漂い始める。
2人は目を合わせて唇を重ねる。
ミサは少し照れ臭そうに視線を外した。
「飯でも行くか?」
カズは無言に耐えきれずそう言った。
「そ、そうだね!」
2人は再び車での移動を始め、ファミレスにて食事を済ませる。
そんな事をしているうちに時刻はもう夜の9時になっていた。
楽しい休日も終盤。
「そろそろ帰るか?」
そう、カズがミサに尋ねる。
「まだ、帰りたくない」
ミサは二足返事でそう返した。
「そうか、でも何処か行くとこあるか?」
「んー」
恐らくこの時2人のまだ帰りたくはないという気持ちは同じだったが、それと同時にどこか遊びつくしてしまったと言う気持ちもあったのだろう、これから向かうアテが見つからない。
「あっ、そうだ」
カズが何か閃いたかの様にそう言う。
「どうしたの?」
ミサはそういいながら、不思議そうにカズを見つめる。
「ここからちょっと離れた場所に心霊スポットがあるらしいぞ、ツレから聞いた話によるとかなりヤバイらしい、取り憑かれたなんて話も時々あるくらいにな」
「え、そうなの?でも取り憑かれるって怖くない?」
ミサはその話を聞いただけでも怖がっていた様子だった。
「どうせ都市伝説みたいなもんで何も起こらないと思うけどな。まぁ、暇だし時間もあるから行ってみるか?」
怖がっているミサをそっちのけにまるで誘導尋問のように心霊スポットに誘うカズ。
「う、うん」
ミサは怖がりながらも、カズの意見に賛成した。
若い時には何故だかわからないが心を揺さぶられる心霊スポット。
怖いから行きたくない、と言う気持ちと何があるんだろう、と言う好奇心が拮抗し結局は好奇心が勝ってしまうと言う不思議な現象が、2人にも起こっていたのだろう。
2人を乗せた車は心霊スポットに向かって走り出す。
しばらく進むと店から溢れる光が無くなり、街灯だけが2人の車を照らしていたが、その街灯も次第に減っていき、目的地に着く頃には完全になくなっていた。
「なんか、雰囲気出てきたね」
どこか、わくわくした様子でミサはそう言う。
「そうだな。あっ、ツレの話によると、あそこに車を止めてそっからは歩かなきゃいけないらしい」
カズは、友人から聞いた情報だけを頼りに大きな駐車場に車を止め、車を降りる。
「うわ、さむっ」
ぽつりとカズは呟く。
昼間は暖かく感じられたのに、夜になると冬でもないのにまるで冬のように冷たく肌を刺すような風が吹いていた。
「寒いねー」
カズの後から降りてきたミサも寒そうに両手をクロスさせて暖を取っていた。
「だな、ちゃっちゃと行って帰ってこようぜ」
そう言って2人は心霊スポットのあると言われている場所に足を運び始める。
ガサガサ──
突如として茂みが揺れる音が聞こえてきた。
「きゃっ!」
ミサは震えながらカズの腕を掴む。
「なんか、揺れてたな」
「う、うん…」
カズは冷静にそう言う。
携帯に備え付けられているライトを使い、揺れた茂みの方に光をあてる。
そこにいたのは四足歩行の動物だった、光を当てた瞬間逃げていったので種類までは判別できなかったようだ。
「ただの獣だ、大丈夫」
そう言ってカズは男らしく腕にしがみついているミサをなだめた。
それから歩く事約10分程度、トンネルが見えてきた。
「ここのトンネルをくぐった先にあるらしい」
「じゃあ、このトンネルくぐったらもう心霊スポットに着くって事だよね…?」
心霊スポットに近づくにつれ、好奇心は恐怖心に押しつぶされていく、そんな感覚をミサは感じていた。
2人は長いトンネルを抜けて左を向いた。
左を向いた奥の方にもう一つ小さなトンネルが見えた。
「あれが言ってたやつか…」
「ねぇ…言いにくいんだけど、やっぱり帰らない?」
ミサは等々、好奇心が完全に恐怖心に押しつぶされてしまったようだ。
「ここまできたんだ、ちょっとだけでも見て帰ろう」
寒い中歩いてたどり着いた目的地、カズはそれを眼前として帰る訳にはいかなかった。
「う、うん…」
だがしかし、カズはミサに言われた『やっぱり、帰らない?』と言う忠告を受け入れるべきだったと後悔する。
2人は小さなトンネルの前までたどり着いた。
しかし、そのトンネルはどこかおかしい。
二枚の鉄扉が備え付けられており、完全に封鎖されているように見えた。
「あれ?入れねぇじゃん」
カズは、眼前にて引き返さなければならないのか、と言うやるせない気持ちでいっぱいだった。
「いや、ちょっとだけだけど空いてるよ…?」
ミサは気づいてしまった、その鉄扉に鍵がない事、関門びらきに開く鉄扉が少しだけ空いていた事に。
「うお、本当だ。ラッキーだな、さっさと中見て帰ろうか」
「うん…」
ミサは内心言わなきゃよかったと思いつつもカズの腕をギュっと掴みながら恐る恐るトンネルの内部に侵入した。
ポツン──
ポツン──
トンネル上部から滴る水の音が、響き渡る。
今は使われていないそのトンネル、当然光などは無く携帯のライトを使わないと全く前が見えないほどに暗かった。
「なんか、ここあったかいな」
閉鎖されているため寒い外気が中に侵入することのないトンネル内部は、暖房の効いた室内のように暖かく感じた。
「ねぇ、もう良くない?帰ろうよ」
ミサは、カズの腕をグッと引っ張りながらそう言う。
「まぁ、落ち着けて。もう多分半分くらいまできてんだから最後まで行っとこうぜ」
カズはそう言って再び歩き始める。
ミサはしがみつくようにカズに着いていく。
少し歩くと、トンネルの最奥までたどり着いた。
「ん?こっちも閉鎖されてるのか。けどまぁ、入ってきた時も空いてたし押したら開くか」
そう言ってカズはしがみついていたミサをどかして両手で扉を押した。
しかし、その扉はビクともしない。
「あれ?こっち側は出られないのか。しゃーない来た方から帰ろうか」
カズとミサは入ってきた方を目指して歩き始める。
帰りはミサも落ち着いたのか、カズの腕にしがみつく様子はなかった。
トンネルを抜けて入り口に着いたところでカズは口を開く。
「特に何も──」
『特に何もなかったな』そう言おうとした時、鉄扉が突如として閉まり、バンバンバンと言う鉄扉を叩く音が鳴り響いた。
恐怖と言う感情よりも、身の危険を感じたカズはミサの手を握り猛ダッシュで長かった身を走り抜け車まで駆け込んだ。
「ふぅ……危なかったな」
「だね、もう少し遅かったら大変なことになってたかも」
2人は車に着くと胸をなでおろすように息をついた。
その時の時刻は夜の11時
「あぁ、もう11時だし帰るか」
「そうだね」
そう言ってカズはミサの自宅まで車を走らせて、家に入るまでしっかりと見届けた後に、自宅へ向かった。
プルルル──
プルルル──
もうすぐ自宅に着く、そんな時に電話がかかってきた。
「はい、もしもし」
「あ、もしもし、カズ君?」
電話の主はミサのお母さんだった。
「あっ、そうです。どうかされましたか?」
「そろそろ夜も遅いし、あの子明日バイトがあるって言ってたから帰らせてくれない?」
どうやらミサはお母さんに顔を合わせることなく自室に入ったようだ。
「あ、それなら大丈夫ですよ20分ほど前に送り届けましたから」
「そうなの?でもミサの部屋の電気付いてないし、メールも返事ないし電話も出ないし。ちょっと部屋見てくるわね」
「お願いします」
そう言ってお母さんは電話を保留にしてミサの自室を覗きに行った。
それから10秒も経たないうちに電話からお母さんの声が聞こえてきた。
「やっぱり帰ってきてないよ!」
お母さんの焦ったその声が鼓膜を揺らしたのと同時にカズは自宅に到着した。
「そ、そんなはずは無いんです。しっかり送り届けたんですよ」
いつもはバックで駐車する家の庭に、今日は前から駐車をした。
いや、駐車と言うにはあまりに雑すぎる程だった、殆ど路駐状態で車を停止させたカズは冷や汗と尋常では無い手汗が吹き出してきた。
「そうなの?でも帰ってきてないのよ。とりあえず探してきてもらってもいい!?」
ミサのお母さんも気が動転していた、どこを探せば見つかると言うのだろうか。
「わ、わかりました」
カズはそう言って電話切り、再び車を走らせた。
70キロ、80キロ、90キロ
しきりに上っていくスピードメーターと同じように、カズの心拍数も上がっていった。
「どこだ…どこにいるだ!」
車内でわめくカズ、そんなことをしたところでミサは見つからない。
そんなことはわかっているがそうでもしないとどうにかなってしまいそうな感覚に苛まれていた。
車を走らせてはや10分、カズはあることに気づく。
「そういや、ツレが女と一緒に行くと神隠しにあう…とか言ってたな…」
カズは内心そんな訳はない、だがそうであるなら一刻も早くあの場所へ向かわなければならないと言う気持ちで一杯になった。
恐らく警察に見つかれば即免停になってしまう程の速度を出しながら、猛スピードで心霊スポットに駆けつけて、車は駐車場ではなく、心霊スポットに近い場所に路駐をして乗り捨てるように車から猛ダッシュでトンネルに駆けつけた。
「はぁ…はぁ…」
焦りと走りで、息が上がるカズ。目の前にはつい3、40分前にみた鉄の扉があった。
カズは勢いよく扉を開けて中に飛び込んだ。
「ミサぁぁああ!!!」
カズのその声はトンネル内部に轟いた。
「か、カズ君…?」
トンネルの中央あたりからミサの声が聞こえる。
カズは慌てて携帯のライトを使い、声の聞こえた場所を照らすと、そこにはうずくまるミサの姿があった。
「だ、大丈夫か!?」
「ひどいよ……」
ミサは胸を押さえながらそう言う。
「とりあえずここを出よう。すぐそこに車用意してあるから!」
カズはミサの手を握り慌ててトンネルを抜け、車に駆け込んだ。
「はぁ…はぁ…」
安堵と疲労がカズを包み込む中、ミサは震えながら涙を流している。
「なんで…なんで、閉じ込めたの……?」
「待て、なんの話をしている?俺はミサを閉じ込めたりなんかしていないし、一度は一緒にトンネルを抜けて家まで送り届けたぞ?」
2人の話は一向に噛み合わないまま、カズは再びミサの家まで車を走らせた。
「ねぇ、それって……」
「あぁ、多分本当だったんだ」
カズはミサに、友人から聞いた神隠しの話を伝えた。
ようやく話が噛み合ってきた頃に家に到着した。
二度目の送迎、今回はカズも玄関まで行きお母さんに顔を合わせるまで帰らないように決めた。
「ただいま」
ミサが玄関を開けると、二階から凄まじい勢いでお母さんが駆け下りて来た。
「お、おかえり」
額に汗を掻くほど家中を探し回っていたのだろう、お母さんはやっと胸をなでおろして、ミサに抱きついた。
「良かった…帰ってこないかと思った」
「あはは…心配症だな…」
そういうミサも今回ばかりは心配してくれて助かったと内心感謝の気持ちでいっぱいだった。
そんな暖かい光景を静かに見つめるカズ。
トタ──
階段を一段降りる音が聞こえたが、2人は安堵に浸っており気にも止めていない様子だった。
しかし、カズは確かな異変というか違和感を感じた。
お母さんが降りて来た階段の方に視線をやると、そこにはミサと瓜二つの女性が一瞬だけ視界に映った。
その瞬間カズは異常なまで悪寒を感じた。
「すいません。自分はこれで失礼しますおやすみなさい」
そう言ってカズはミサの自宅を後にして車を走らせて、自宅まで急いで帰る。
アレはなんだったんだ──
そう考えれば考えるほど分からなくなっていく、いや正確には分かりたくなくなっていく。
ミサの家から自分の自宅までは20分程度なのにその20分が2時間にも思えるほど長く感じた。
そんな長く感じた20分、結局は何もなく無事に家に着くことが出来たカズ。
家の鍵を開けた中に入ろうとした時、『もう少しだったに』という声が背後から背筋を撫でるように聞こえて来た。
カズは慌てて後ろを振り向いたが誰も居なかった。
その後は特に怪奇現象らしきものに出くわすことなく生活できているようだが、もう二度とあんな場所には行きたくないと言っている。
最後に
恐らく三重県の心霊スポットを探せば容易に今回取り上げた場所は見つけられることが出来ると思いますが、行くことはオススメしません。
もし、近くを通ることがあったとしても興味を持たないようにくれぐれもお願いいたします。
それでもなお、行きたいという方は自己責任でお願いいたします。
又、個人名に関しては偽名を使わせて頂きます。
伊勢神宮で有名な三重県、そんな三重県で起こったとても奇妙な物語。
とある若い男女2人は休日に車を使い、伊勢神宮までお参りに行こうとする。
「ねぇ、カズ君伊勢神宮に行くならついでにおかげ横丁も行こうよ」
運転席に乗る男性にそう声をかけたのは助手席に乗るミサだった。
「あぁ、どうせ通る道だしな」
車のハンドルを握るカズはそっけない態度でそう返事をする。
「やった!」
そんな、カズとは裏腹にまるで小学生のように純粋で明るい笑顔を見せるミサ。
しばらく車を走らせていると目的地である伊勢神宮に到着した。
「意外と早く着いたな」
カズは淡々と運転した感想を述べる。
「そうだね!道が混んでなくて良かった!」
ミサは元気よくそういう。
その後は約束していたおかげ横丁を2人で見て回り、本来の目的である伊勢神宮での参拝を済ませ、車に戻った。
「久しぶりにあんな歩いたわ」
カズは少し疲れた様子で言う。
「そうだね、意外と歩く距離長かったね」
ミサも少し疲れたのか、伊勢神宮に向かう前のような元気は無かった。
「つか、出発する時間早すぎたな、もう参拝し終わったのにまだ昼の3時か」
カズは左腕に付けられた腕時計を見ながらそう言う。
「そうだねー、ちょっと早かったね。どっか行く?」
昼の3時、それは2人にとって休日を使って遊び終わる時間にはまだ早い時間帯であった。
「そうだな、カラオケでも行くか?」
「うん!」
こうして、2人は伊勢神宮での参拝を後し、カラオケへと向かった。
そして、カラオケを楽しみ再び車に戻った2人。
「楽しかったな!」
カズは今日1番の元気な声を出した。
やはり男というものは見て回るだけではテンションは上がらないものなのだ。
「そうだね!」
ミサも伊勢神宮で歩き疲れた後とは違い、元気な声でカズに返事をした。
「けど、ちょっと長く歌いすぎたな、もう夜の8時だ」
「そうだね...」
2人しか居ない車、2人しか居ない密室、そこには大人の雰囲気が漂い始める。
2人は目を合わせて唇を重ねる。
ミサは少し照れ臭そうに視線を外した。
「飯でも行くか?」
カズは無言に耐えきれずそう言った。
「そ、そうだね!」
2人は再び車での移動を始め、ファミレスにて食事を済ませる。
そんな事をしているうちに時刻はもう夜の9時になっていた。
楽しい休日も終盤。
「そろそろ帰るか?」
そう、カズがミサに尋ねる。
「まだ、帰りたくない」
ミサは二足返事でそう返した。
「そうか、でも何処か行くとこあるか?」
「んー」
恐らくこの時2人のまだ帰りたくはないという気持ちは同じだったが、それと同時にどこか遊びつくしてしまったと言う気持ちもあったのだろう、これから向かうアテが見つからない。
「あっ、そうだ」
カズが何か閃いたかの様にそう言う。
「どうしたの?」
ミサはそういいながら、不思議そうにカズを見つめる。
「ここからちょっと離れた場所に心霊スポットがあるらしいぞ、ツレから聞いた話によるとかなりヤバイらしい、取り憑かれたなんて話も時々あるくらいにな」
「え、そうなの?でも取り憑かれるって怖くない?」
ミサはその話を聞いただけでも怖がっていた様子だった。
「どうせ都市伝説みたいなもんで何も起こらないと思うけどな。まぁ、暇だし時間もあるから行ってみるか?」
怖がっているミサをそっちのけにまるで誘導尋問のように心霊スポットに誘うカズ。
「う、うん」
ミサは怖がりながらも、カズの意見に賛成した。
若い時には何故だかわからないが心を揺さぶられる心霊スポット。
怖いから行きたくない、と言う気持ちと何があるんだろう、と言う好奇心が拮抗し結局は好奇心が勝ってしまうと言う不思議な現象が、2人にも起こっていたのだろう。
2人を乗せた車は心霊スポットに向かって走り出す。
しばらく進むと店から溢れる光が無くなり、街灯だけが2人の車を照らしていたが、その街灯も次第に減っていき、目的地に着く頃には完全になくなっていた。
「なんか、雰囲気出てきたね」
どこか、わくわくした様子でミサはそう言う。
「そうだな。あっ、ツレの話によると、あそこに車を止めてそっからは歩かなきゃいけないらしい」
カズは、友人から聞いた情報だけを頼りに大きな駐車場に車を止め、車を降りる。
「うわ、さむっ」
ぽつりとカズは呟く。
昼間は暖かく感じられたのに、夜になると冬でもないのにまるで冬のように冷たく肌を刺すような風が吹いていた。
「寒いねー」
カズの後から降りてきたミサも寒そうに両手をクロスさせて暖を取っていた。
「だな、ちゃっちゃと行って帰ってこようぜ」
そう言って2人は心霊スポットのあると言われている場所に足を運び始める。
ガサガサ──
突如として茂みが揺れる音が聞こえてきた。
「きゃっ!」
ミサは震えながらカズの腕を掴む。
「なんか、揺れてたな」
「う、うん…」
カズは冷静にそう言う。
携帯に備え付けられているライトを使い、揺れた茂みの方に光をあてる。
そこにいたのは四足歩行の動物だった、光を当てた瞬間逃げていったので種類までは判別できなかったようだ。
「ただの獣だ、大丈夫」
そう言ってカズは男らしく腕にしがみついているミサをなだめた。
それから歩く事約10分程度、トンネルが見えてきた。
「ここのトンネルをくぐった先にあるらしい」
「じゃあ、このトンネルくぐったらもう心霊スポットに着くって事だよね…?」
心霊スポットに近づくにつれ、好奇心は恐怖心に押しつぶされていく、そんな感覚をミサは感じていた。
2人は長いトンネルを抜けて左を向いた。
左を向いた奥の方にもう一つ小さなトンネルが見えた。
「あれが言ってたやつか…」
「ねぇ…言いにくいんだけど、やっぱり帰らない?」
ミサは等々、好奇心が完全に恐怖心に押しつぶされてしまったようだ。
「ここまできたんだ、ちょっとだけでも見て帰ろう」
寒い中歩いてたどり着いた目的地、カズはそれを眼前として帰る訳にはいかなかった。
「う、うん…」
だがしかし、カズはミサに言われた『やっぱり、帰らない?』と言う忠告を受け入れるべきだったと後悔する。
2人は小さなトンネルの前までたどり着いた。
しかし、そのトンネルはどこかおかしい。
二枚の鉄扉が備え付けられており、完全に封鎖されているように見えた。
「あれ?入れねぇじゃん」
カズは、眼前にて引き返さなければならないのか、と言うやるせない気持ちでいっぱいだった。
「いや、ちょっとだけだけど空いてるよ…?」
ミサは気づいてしまった、その鉄扉に鍵がない事、関門びらきに開く鉄扉が少しだけ空いていた事に。
「うお、本当だ。ラッキーだな、さっさと中見て帰ろうか」
「うん…」
ミサは内心言わなきゃよかったと思いつつもカズの腕をギュっと掴みながら恐る恐るトンネルの内部に侵入した。
ポツン──
ポツン──
トンネル上部から滴る水の音が、響き渡る。
今は使われていないそのトンネル、当然光などは無く携帯のライトを使わないと全く前が見えないほどに暗かった。
「なんか、ここあったかいな」
閉鎖されているため寒い外気が中に侵入することのないトンネル内部は、暖房の効いた室内のように暖かく感じた。
「ねぇ、もう良くない?帰ろうよ」
ミサは、カズの腕をグッと引っ張りながらそう言う。
「まぁ、落ち着けて。もう多分半分くらいまできてんだから最後まで行っとこうぜ」
カズはそう言って再び歩き始める。
ミサはしがみつくようにカズに着いていく。
少し歩くと、トンネルの最奥までたどり着いた。
「ん?こっちも閉鎖されてるのか。けどまぁ、入ってきた時も空いてたし押したら開くか」
そう言ってカズはしがみついていたミサをどかして両手で扉を押した。
しかし、その扉はビクともしない。
「あれ?こっち側は出られないのか。しゃーない来た方から帰ろうか」
カズとミサは入ってきた方を目指して歩き始める。
帰りはミサも落ち着いたのか、カズの腕にしがみつく様子はなかった。
トンネルを抜けて入り口に着いたところでカズは口を開く。
「特に何も──」
『特に何もなかったな』そう言おうとした時、鉄扉が突如として閉まり、バンバンバンと言う鉄扉を叩く音が鳴り響いた。
恐怖と言う感情よりも、身の危険を感じたカズはミサの手を握り猛ダッシュで長かった身を走り抜け車まで駆け込んだ。
「ふぅ……危なかったな」
「だね、もう少し遅かったら大変なことになってたかも」
2人は車に着くと胸をなでおろすように息をついた。
その時の時刻は夜の11時
「あぁ、もう11時だし帰るか」
「そうだね」
そう言ってカズはミサの自宅まで車を走らせて、家に入るまでしっかりと見届けた後に、自宅へ向かった。
プルルル──
プルルル──
もうすぐ自宅に着く、そんな時に電話がかかってきた。
「はい、もしもし」
「あ、もしもし、カズ君?」
電話の主はミサのお母さんだった。
「あっ、そうです。どうかされましたか?」
「そろそろ夜も遅いし、あの子明日バイトがあるって言ってたから帰らせてくれない?」
どうやらミサはお母さんに顔を合わせることなく自室に入ったようだ。
「あ、それなら大丈夫ですよ20分ほど前に送り届けましたから」
「そうなの?でもミサの部屋の電気付いてないし、メールも返事ないし電話も出ないし。ちょっと部屋見てくるわね」
「お願いします」
そう言ってお母さんは電話を保留にしてミサの自室を覗きに行った。
それから10秒も経たないうちに電話からお母さんの声が聞こえてきた。
「やっぱり帰ってきてないよ!」
お母さんの焦ったその声が鼓膜を揺らしたのと同時にカズは自宅に到着した。
「そ、そんなはずは無いんです。しっかり送り届けたんですよ」
いつもはバックで駐車する家の庭に、今日は前から駐車をした。
いや、駐車と言うにはあまりに雑すぎる程だった、殆ど路駐状態で車を停止させたカズは冷や汗と尋常では無い手汗が吹き出してきた。
「そうなの?でも帰ってきてないのよ。とりあえず探してきてもらってもいい!?」
ミサのお母さんも気が動転していた、どこを探せば見つかると言うのだろうか。
「わ、わかりました」
カズはそう言って電話切り、再び車を走らせた。
70キロ、80キロ、90キロ
しきりに上っていくスピードメーターと同じように、カズの心拍数も上がっていった。
「どこだ…どこにいるだ!」
車内でわめくカズ、そんなことをしたところでミサは見つからない。
そんなことはわかっているがそうでもしないとどうにかなってしまいそうな感覚に苛まれていた。
車を走らせてはや10分、カズはあることに気づく。
「そういや、ツレが女と一緒に行くと神隠しにあう…とか言ってたな…」
カズは内心そんな訳はない、だがそうであるなら一刻も早くあの場所へ向かわなければならないと言う気持ちで一杯になった。
恐らく警察に見つかれば即免停になってしまう程の速度を出しながら、猛スピードで心霊スポットに駆けつけて、車は駐車場ではなく、心霊スポットに近い場所に路駐をして乗り捨てるように車から猛ダッシュでトンネルに駆けつけた。
「はぁ…はぁ…」
焦りと走りで、息が上がるカズ。目の前にはつい3、40分前にみた鉄の扉があった。
カズは勢いよく扉を開けて中に飛び込んだ。
「ミサぁぁああ!!!」
カズのその声はトンネル内部に轟いた。
「か、カズ君…?」
トンネルの中央あたりからミサの声が聞こえる。
カズは慌てて携帯のライトを使い、声の聞こえた場所を照らすと、そこにはうずくまるミサの姿があった。
「だ、大丈夫か!?」
「ひどいよ……」
ミサは胸を押さえながらそう言う。
「とりあえずここを出よう。すぐそこに車用意してあるから!」
カズはミサの手を握り慌ててトンネルを抜け、車に駆け込んだ。
「はぁ…はぁ…」
安堵と疲労がカズを包み込む中、ミサは震えながら涙を流している。
「なんで…なんで、閉じ込めたの……?」
「待て、なんの話をしている?俺はミサを閉じ込めたりなんかしていないし、一度は一緒にトンネルを抜けて家まで送り届けたぞ?」
2人の話は一向に噛み合わないまま、カズは再びミサの家まで車を走らせた。
「ねぇ、それって……」
「あぁ、多分本当だったんだ」
カズはミサに、友人から聞いた神隠しの話を伝えた。
ようやく話が噛み合ってきた頃に家に到着した。
二度目の送迎、今回はカズも玄関まで行きお母さんに顔を合わせるまで帰らないように決めた。
「ただいま」
ミサが玄関を開けると、二階から凄まじい勢いでお母さんが駆け下りて来た。
「お、おかえり」
額に汗を掻くほど家中を探し回っていたのだろう、お母さんはやっと胸をなでおろして、ミサに抱きついた。
「良かった…帰ってこないかと思った」
「あはは…心配症だな…」
そういうミサも今回ばかりは心配してくれて助かったと内心感謝の気持ちでいっぱいだった。
そんな暖かい光景を静かに見つめるカズ。
トタ──
階段を一段降りる音が聞こえたが、2人は安堵に浸っており気にも止めていない様子だった。
しかし、カズは確かな異変というか違和感を感じた。
お母さんが降りて来た階段の方に視線をやると、そこにはミサと瓜二つの女性が一瞬だけ視界に映った。
その瞬間カズは異常なまで悪寒を感じた。
「すいません。自分はこれで失礼しますおやすみなさい」
そう言ってカズはミサの自宅を後にして車を走らせて、自宅まで急いで帰る。
アレはなんだったんだ──
そう考えれば考えるほど分からなくなっていく、いや正確には分かりたくなくなっていく。
ミサの家から自分の自宅までは20分程度なのにその20分が2時間にも思えるほど長く感じた。
そんな長く感じた20分、結局は何もなく無事に家に着くことが出来たカズ。
家の鍵を開けた中に入ろうとした時、『もう少しだったに』という声が背後から背筋を撫でるように聞こえて来た。
カズは慌てて後ろを振り向いたが誰も居なかった。
その後は特に怪奇現象らしきものに出くわすことなく生活できているようだが、もう二度とあんな場所には行きたくないと言っている。
最後に
恐らく三重県の心霊スポットを探せば容易に今回取り上げた場所は見つけられることが出来ると思いますが、行くことはオススメしません。
もし、近くを通ることがあったとしても興味を持たないようにくれぐれもお願いいたします。
それでもなお、行きたいという方は自己責任でお願いいたします。
コメント
暇人001
すいません、雫さん。
もし、お時間あれば作品名の方を教えていただきたいです(^_^;)
暇人001
コメントありがとうございます!
仕事終わり次第閲覧させて頂こうと思います!
雫
とっても怖かったです...次回の投稿楽しみにしてます!頑張って下さい!良ければ私の作品も読んでみてください!