キノは〜ふ!

七月夏喜

第2話 マコとキノと亜紀那さん その1


 河原の小道を、キノはマコに手を引かれながら歩いていた。マコは秋の空の美しい夕焼けを楽しんでいる。ただキノは進まぬ足取りの中、不安が募るばかりでそれどころじゃなかった。

「家に帰ったら、絶対びっくりされるよ、これじゃ」

「後藤さんと亜紀那さんなら多分、大丈夫よ」

 マコは自信ありげに言う。

「どうしてさ? 男が女に変化したあり得ない出来事に、気づかないはずはないよ二人とも。幾ら何でも」

「普通はこんな変化なんて、あり得ない。突然に変わるって」

「そりゃそうさ。僕は今まで絶対、『男』だった。いや今でも僕は『男』だ」

 言い直すキノだ。マコは振り向いて、じっと見つめる。

「でも今は、とびきり美人で、可愛い女の子が私の前にいる。絶対『男』じゃない」

「マコまでそんなこと言うの」

 彼女は思わず吹き出した。

「昨日も今日の朝の記憶も、確かに僕は『男』だ。学制服もズボンだった」

 スカートの端を、摘み上げながらキノは言う。マコは立ち止まった。

「夢を見たの。キノがこうなってしまう、女の子になってしまう夢を」 

 後を歩くキノの袖を引っ張る。

「でも、現実になっているよ、こんな風に」

「何かのサインじゃ、ないかと思うの。将来の私たちに関係する」

「サイン? 男が女に変わることが? 訳がわからない」

 キノは頭を捻った。

「キノ、あの池で私と子供の時、約束したこと覚えている?」

「池……、僕がマコを助けた時の池で」

「そう。あの時に何か約束しなかった?」

 キノは腕組みして考えるが、一向に出てきそうにもなかった。マコは肩を落ちして、小さくため息をつく。

「まあ、いいわ。今日は取りあえず、家に帰って様子を見ないとね」





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