センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
56話 陰に潜み、陰を狩る者たち。
56話 陰に潜み、陰を狩る者たち。
「マイ……大犯罪者の片棒を担ぐっていうのか? もし、バレたら、国中の強者から、最上級の逆賊として命を狙われるぞ……」
イチジョーの言葉に、
カザミが、
「けど、拒否したら、ここで殺されるんだろ? 今死ぬか、あとで死ぬかの選択肢なら……俺は、後者を選びたい」
ジェイズの中で、一番の常識人であるイチジョーだけが、
現状に対して深い抵抗感を感じている。
ただ、イチジョーも、バカではなく、
『どうしようもない状態』というのは理解しているので、
「……なんで……こんなことに……」
諦めの嘆きを口にする。
それは、拒絶の言葉ではなく、受け入れることを覚悟したがゆえの嘆き。
こうして、紙野は、新メンバー(見習い)として、冒険者チーム『ジェイズ』に加入した。
★
――ここは、トーン共和国のS級冒険者ギルド。
トーンはかなり大きな国で、冒険者ギルドが、国内に、全部で10か所ほど存在する。
10ある冒険者ギルドは、それぞれ、上からSABCDEFGHIと、ランク付けされており、冒険者は、自身のランクに合ったギルドを活用することを義務付けられている。
冒険者チーム『ジェイズ』は、冒険者の最高峰である『10つ星』に位置する冒険者チームなので、当然、このS級冒険者ギルドを活用している。
ここを利用している冒険者は、みな、高い存在値を誇っており、顔つきにも、オーラにも自信がみなぎっている。
現在、イチジョーが、紙野の命令に従い、受付で、
『上級国民狩りの殺人鬼』に関しての『偽の情報提供』と、
『新たな情報の収集』を行っている。
その途中で、イチジョーは、
受付嬢から、『とある上級国民の護衛任務』を受けないか、
ともちかけられたが、
「俺たちは、護衛任務ではなく、討伐クエストを受けます。なので、殺人鬼に関して、なるべく、たくさんの情報をいただきたい。どのチームが、どの上級国民を護衛しているか、その辺の情報も欲しいですね。高位の冒険者が守っている上級国民のところには殺人鬼が現れる可能性は低いですので」
イチジョーが情報収集している間、
ロビーで待機していた紙野とマイとカザミ。
そんな彼らの元に、
『30代後半ぐらいの屈強な冒険者の一人』が近づいてきて、
「……よお、カザミ。お前ら、殺人鬼とやりあったらしいな。どうだった?」
と、無遠慮にそう尋ねてきた。
彼の名はウィーノ。
存在値は370。
カザミたちの先輩で、カザミたちよりも上位の10つ星冒険者。
だから、カザミは、邪険に扱うことなく、比較的丁寧な態度で、
「そんなに強くはなかったが、逃げ足のはやいヤツで、まんまと逃げられた。次はしとめるさ」
へりくだって媚びるようなマネはしないが、
それなりに柔らかな態度で、ウィーノに応じるカザミ。
そんなカザミの発言を受けて、ウィーノは、顎に手を当てて、
「上級国民が、バタバタとやられているのに、そんなに強くねぇのか……暗殺特化型か?」
「ああ、そんな感じだった。油断している闇夜で背後を取られたら、俺やあんたでも、殺される可能性は十分にある」
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