センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
53話 ニコトピアを創った者と、ニコトピアのファン。
53話 ニコトピアを創った者と、ニコトピアのファン。
「……あの……」
紙野に対する恐怖におびえながらも、マイは、
「さっきから、あなたはずっと『モキュ』という言葉を口にしているけれど……もしかして、あなたは……ニコトピアと、何か関係があるの……?」
ニコトピアの投稿主が『モキュ』という名前で活動していることは、ファンの間では周知の事実。
先ほどまでは、『変わった詠唱のオノマトペにすぎない』『なんでもかんでもニコトピアと結び付けてしまうのは自分の悪い癖』としか思っていなかったが、トコの名前が出たことで、一気に強固な関連性が出てしまった。
紙野は、数秒、考えてから、
「……俺が……」
何を言うべきなのか、
その場その場での最適なセリフとは何なのか、
そんなもの、考えても無駄なんだ、と、あらためて理解する紙野。
いつだって、結局のところ、
『現場』では、脳の反射に任せるしかない。
「……ニコトピアを創った……」
なぜ、それを伝えたのか。
紙野自身も分かっていない。
伝えたいと思っての発言ではない。
ただ、動揺が収まらないまま、気付けば、口をついて出た。
それだけの話。
「あなた……が……モキュ……?」
動揺しているのは、紙野だけではなくマイも。
この、訳が分からない状況で、何をどうするべきなのか、
彼女もよく理解していない――だからだろう。
マイは、なぜか、その場で、土下座をしながら、
「……ありがとう……おかげで……狂うことなく生きることができました……生き甲斐をくれて……ありがとう……」
伝えたかった言葉を並べてみる。
もし、『モキュ』に出会えたら、生きる希望を与えてくれたことに感謝したいと思っていた。
そんな、これまでの想いと、恐怖とがごっちゃになって、
自分でも、わけの分からない行動をとってしまった――というのが現状。
普通に、元の世界で紙野と出会っていたのであれば、
土下座まではしなかっただろう。
握手を求めたり、サインを求めたり、
あるいは、もう一つ踏み込んで、
『特別な関係性を求めていた』という可能性はある。
しかし、土下座はしなかっただろう。
だから、今のマイは、間違いなく混乱している。
無数の感情が渦巻いて、突飛な行動をとってしまう。
――それが、ある意味で功を奏した。
目の前で、ヘビーリスナーが、土下座しながら感謝の言葉を述べている。
この状況を『華麗に処理できるだけの胆力』など、
紙野は持ち合わせていない。
(な、なんじゃい、この状況……)
ただただ困惑する。
何をどうしたらいいか分からなくなる。
そんな紙野の状況を、
『少し離れた場所』から観察している『トコ(その中にいるクロート)』が、
(……さあ、どうする、紙野創蔵。今回、私(トコ)は関与しない。すべては、紙野創蔵の決断に託された。ここが一つの分水嶺。最大の『山場』はこの後に控えているが、ここも、かなり大事な選択の場面……お前が本物になるか、それとも、ただのゴミになるか……)
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