センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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52話 さすがのサイコパス紙野でも……


 52話 さすがのサイコパス紙野でも……

 マイには異母姉妹がたくさんいる。
 父親は、強い財力と権力を持ち、そして、精力が旺盛だった。
 マイの『戸籍上の家族』は非常に多いけれど、心が通っている相手は、ただの一人もいない、ほとんど天涯孤独。

 そんな『ふざけた家庭環境』に対する『反骨精神』だけで、むしろ逆に、『まとも』に生きている――そんな、謎のスタンスで手前の人生を刻んできたマイ。
 そんな彼女の人生において、唯一の楽しみがニコトピアだった。
 ニコトピアの世界観に触れている時だけが心の癒しであり生き甲斐だった。
 ニコトピアの何に対して、そこまで惹かれたのか、言葉で説明するのは難しい。
 ――ただ、ガッツリとハマった。
 愛情に理由なんてないのだと思った。
 親のことなどどうでもいいとさえ思った。

 ――だから、マイは、この世界に転生してからも頑張った。
 『元の世界に戻って、ニコトピアの続きを見るため』に、必死になって、全力で生きてきたのだ。

 『異世界に転生する』という事象は、その身で体験した。
 つまり、異世界にわたるという事自体は、現実的に可能であるということ。
 『違う世界にわたること』が『現実的に可能』なのであれば、
 『元の世界に戻ること』だって、当然、
 『現実的に可能』であってしかるべき。
 ――そのロジックだけを希望にして、
 彼女はずっと、頑張ってきた。

 ――マイは元の世界に戻ってニコトピアの続きが見たいから頑張っている。
 が、当然、その『目的』は、マイだけのもの。
 ジェイズの面々はみな、目的が異なる。

 イチジョーは幸せになるため。
 マイは元の世界に帰るため。
 カザミは成り行きに身を任せているだけ。

 カザミの場合、他の二人と違い、特に強固な目的はない。
 もちろん、なれるなら王様とか勇者になりたいと思っている。
 最強になりたいとか、ハーレムを作りたいとか、うまいものを食べたいとか、大金持ちになりたいとか、そういう、男の子的な『普通の欲望』は当然ある。
 しかし、ただそれだけ。
 信念とか渇望とか、そういう重たいものは持ち合わせていない。
 『リーダーになりたい』と思っているが、それは、リーダーの責務を背負いたいわけではない。
 ただ『尊重されたいだけ』で、責任感とは無縁でありたいと思っている。

 1番薄っぺらくて、1番人間らしいのがカザミ
 情に流されやすく、無駄に責任感が強いのがイチジョー。
 そして、実は元の世界に帰ることしか頭にないのがマイ。

 マイは、


「ニコトピアを見たい……ずっと続きが気になっていて……最終回を見るまでは死ねなくて……だから……だから、全力で……この意味不明な状況にも、必死にくらいついてきた……」

 いわゆるガチ勢と呼ばれる熱心なファン。
 彼女のガチ度は、『それなりの数』がいる『ニコトピアガチ勢』の中でも上位に入る。

「……」

 紙野が、ニコトピアのファンと、面と向かって対峙するのは、これが初体験だった。
 紙野にとって大事なものは、もはや、言うまでもないがニコトピアである。
 だが、それ以外にも一つだけ、大事にしていたものがある。
 それが、ニコトピアを愛してくれたファン。
 それだけは、さすがのサイコパス紙野でも、ないがしろにすることはできない。

(……この女、リスナーか……ちっ……)

 この感情は、たとえるなら、ミスタ〇サタンを前にした時の悪〇ウみたいなもの。

 『ある程度の強者』は『ニコトピアを復活させるための糧』なので、全員に、重たい絶望を与えて、容赦なく皆殺しにするつもりでいる紙野。
 相手が同郷だろうと、知り合いだろうと、『家族』だろうと、女子供だろうと、『糧になる強者』であるなら、皆殺しにする覚悟をかためているサイコパス度がエグい変質者紙野。

 しかし、たった一種類だけ、紙野が躊躇する属性――それが、ニコトピアリスナー。

 紙野が、歯ぎしりしていると、
 そこで、マイが、

「……あ、あの……」

 紙野に対する恐怖におびえながらも、
 しかし、紙野の目を見て、

「さっきから、あなたはずっと『モキュ』という言葉を口にしているけれど……もしかして、あなたは……ニコトピアと、何か関係があるの……?」


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