センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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38話 デバッグコマンドで出来ること、出来ない事。


 38話 デバッグコマンドで出来ること、出来ない事。

「まだまだ殺さんぞ! とことん苦しめ! 恐怖に顔をゆがませろ! 泣け、泣け、泣けぇええええ!」

 とにかく、紙野の歪んだ顔が見たくて仕方がないクリミア。

 彼にとって、『他者の苦悩』は最大の快楽。
 自分以外の誰かが苦しめば苦しんだ分だけ、脳内麻薬が爆発する。
 酒を飲んだり、煙草を吸ったり、サウナに入ったり、
 それと同じように、クリミアは、他者の苦悩に触れることで、
 とてつもなく強い快楽を覚える。

 そんなクリミアの性癖に対し、
 紙野は特に何も感じない。
 ――クリミアのコトなど、どうでもいいから。

「……上エックス、下ビー、エルワイ、アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、0000098」

 ボコボコにされた激痛の中で、
 紙野は冷静に、どんな魔法でも使えるようになるデバッグコマンドを使う。
 今回使用する魔法は、

「……暗闇ランク10」

 本来、ランク10の状態異常魔法ごとき、クリミアなら簡単にレジストできるのだが、
 抵抗力貫通に極振りしている暗闇に抵抗することは不可能。
 魔法の自由調整は、おそろしくチート。

「な?! たかが、ランク10の暗闇ごときで! どうして!」

 暗闇は、視界を奪う魔法。
 目の周りにモヤがうかんで、何も見えなくなる。

「なにしたぁあ! なんでだぁああ! こんなワケねぇだろぉ!  なんでこんなことになんだよぉおお! おかしいだろぉおお!」

 視界を完全に奪われたことで、
 急激に心拍数が上がっていく。

 そんなクリミアを尻目に、
 紙野は、

「……上エックス、下ビー、エルワイ、アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、6059852」

 前提となる詠唱を並べてから、

「……煉獄・不滅彗星ランク10」

 超高位のメテオで圧殺しようとしたが、
 しかし、魔法は発動してくれなかった。

 紙野は、何度か、詠唱を繰り返してみたが、

「……あー、無理かぁ……ここまで『高クオリティの魔法』になると、『今の俺では使えません』と。……いやいや、デバッグコマンドを使ってんのに使えないって、なんだよ。じゃあ、なんのためのデバッグコマンドだってんだ……はぁ」

 しんどそうに溜息をついてから、

「まあ、いいや。じゃあ……上エックス、下ビー、エルワイ、アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、F0000001」

 デバッグコマンドを入力しなおすと、

「――異次元砲」

 『変換率』に極限まで振った異次元砲を放つ。

 F魔法は、『使用者が注ぎ込んだ魔力量』に応じて性能が変化する魔法。
 強い者が使えば高威力を発揮する、上位者専用の燃費的には最悪の一手。

 ランクの上昇に伴い個性が際立ってくるランク魔法とは異なり、
 基本的に『基礎性能は均一』で、ある意味無個性なのがF魔法の特質。
 ただ、隠しステータスに『変換率』というものが存在し、
 それは、『注ぎ込んだ魔力』を『どれだけのクオリティ』に変換するかの割合であり、
 変換率が高ければ高いほど、高性能のF魔法となる。

 前述したとおり、基本的に、F魔法に「個性」はなく、
 誰が使っても、同じような効果が発揮するのだが、
 変換率には、使い手による違いが生じ、
 たとえば、
 「魔力10」で「威力9」の異次元砲を撃てる者もいれば、
 「魔力10」で「威力15」の異次元砲を撃てる者もいる。
 この場合、後者の方が『変換率は高い』ということになる。

 『熟練度を上げる(使い続けること)』で、変換率を高めることは可能。
 F魔法に高い適正を持つ天才であれば、最初から変換率が高いという場合もある。

 ――根本的に、F魔法の変換率を高めるためには、努力をするしかないのだが、しかし、そんな基礎的なルールすら、デバッグコマンドならば超えていくことができる。

 異次元砲は、『どんな相手にも脳死で撃てる最高クラスの万能型』ゆえに、
 『実はそんなに火力が高くないのに燃費は最悪』というデメリットを持つ。
 その燃費の部分の問題を解消する裏技。
 F魔法を司っている中枢システム――『統制のアリア・ギアス』に介入することで、本来ならば、熟練度を上げない限り上昇しないはずの変換率にテコ入れをして、カスみたいな魔力でも高火力を実現できるように調整を施す。

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