センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
36話 最後の砦の生みの親。
36話 最後の砦の生みの親。
「今の俺に使えるデバッグコマンドでもどうにか出来そうなヤツの中で、一番質の高い獲物がお前だ、ズンダ・クリミア。……本来のデバッグコマンドなら、相手の存在値とか気にする必要はないんだけどねぇ……この不便さから、さっさと解放されたいよ」
ため息交じりに、わけの分からないことを口にする謎の侵入者。
そんな彼を、とりあえず無力化しようと、
クリミアは、
「……空斬ランク19」
かなり高位の魔法を放った。
『彼』――『紙野創蔵』の腕を切り飛ばそうと、
飛翔する斬撃がきらめく。
だが、その斬撃は、紙野の腕に当たる直前でピチュンと、蒸発したみたいに消失してしまった。
「?!」
目を丸くしているクリミアに、
紙野は、
「魔法は無意味。同じ波形をぶつけて消失できるフィールドを張っているから。今の俺だと、ランク30以上の魔法を消すことはできないけど、お前の魔法なら余裕。このデバッグコマンドはかなりのチートで、ようするには無敵になれるもの。本来であれば、これも、コスモゾーンへの介入と同じで、デバッグコマンドを使わない限り、絶対にできないものなんだけど……ログを確認したところ、けっこう、頻繁に使われているという痕跡が残っていた。……信じられないよ。これを自力で使うのは『地球に生命が誕生する確率より低い』はずなんだけどねぇ。ちなみに、オメガバスティオンって変な名前がつけられていたよ。意味不明。はは」
紙野が口走っていることの『本質』はまったく理解できないが、
しかし『魔法を無効にするフィールドをはっている』と言っていることだけは理解できたクリミア。
(ランク30以下の魔法を完全無効化? ハッタリだ。ありえない)
相手の言葉をバカみたいにうのみにしたりしない。
しかし、
(だが、ランク19の空斬が消されたのは事実……)
額に汗を浮かべつつ、
(どこのどいつだ? 勇者か魔王の差し金? 理由はなんだ? まさか、私の悪逆非道な行動を粛清するため? ――仮にそうだったとして、なぜ、私だけ? 私のような自由気ままな者は他にもいる……)
そこで、クリミアは、さきほどの、紙野の発言を思い出す。
(……私が『一番質が高い』と言っていた……『ちょうどいい獲物』だとも……まさか、私は養分なのか?)
嫌な想像が頭の中を駆け巡る。
クリミアは、クズだが、頭が悪いわけではない。
合理的に、論理的に、目の前の情報を処理することができる。
(私は間違いなく世界に選ばれているが……私は、自由を許されているだけではなく、誰かの養分になるために生きている……のか?)
残虐性をまき散らして世界を循環させ、
ある程度、『その役目』を果たしたら、
誰かの養分として、収穫される経験値。
それが自分の運命なのでは……
と、そこまで考えたところで、
「……ちがう」
小さな声で、ボソっと、自分の予測を否定する。
不愉快な運命に抗おうと、奥歯をかみしめて、
(……そんなしょうもない人生であってたまるか。私の人生は私のものだ。おいしい権利はもらうが、めんどうな義務を背負う気はない。私は、まだまだ自由を謳歌する。気ままに、望み通りに、他者の命で遊びながら、人生を楽しみつくす……私は、そんな幸せな人生を、世界から確約されている特別な人間!)
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