センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
8話 トコ・ドラッグのフラグメント。
8話 トコ・ドラッグのフラグメント。
「進行状況をデジタルに確認できるのはありがたいけどねぇ」
などと、紙野がつぶやいた直後のことだった。
「……ん……」
トコ・ドラッグが、ゆっくりと目を覚ます。
しかし、もともと、寝てなどいなかった。
『今、目覚めた』という演技をしているだけ。
彼女は、ずっと、あらゆる魔法やスキルを駆使して、
紙野の『父性』を強制的に増幅させようと頑張っていた。
ハッキリ言ってしまうと、彼女は、『クロートの擬態』である。
とはいえ、ただのハリボテなコスプレではない。
安い擬態では、紙野の『センサー』をごまかすことはできない。
本物でなければ無意味。
クロートならば、紙野に『子の存在はトコ・ドラッグである』と思わせることが可能。
なぜなら、クロートは、トコ・ドラッグの因子(フラグメント)を持っているから。
ミシャンド/ラに対する悪意を媒体にして、この世界に顕現できたのと同じ。
『薬宮シリーズ』の因子を持つ彼だからこそ、
『紙野創蔵』の目を欺くことができる。
――もっと根本的なことを言えば、欺いているというわけですらない。
事実として、クロートの中には、
紙野創蔵が愛している『トコ・ドラッグ』の一部が存在するのだから。
――『トコ(クロート)』は、
周囲をきょろきょろと観察してから、
「は? ここどこ?」
と、何も知らない美少女の演技を徹底する。
すべては、紙野創蔵をコントロールするため。
トコは、周囲確認の中で、紙野を発見すると、
険しい顔つきで、
「そこの臭そうなヘチマ……あんた、だれ?」
と、言葉を投げかけた。
能力は高いが、口の悪い美少女。
それが、トコ・ドラッグの性格。
――クロートは徹底して、トコ・ドラッグを演じる。
それは、けっして、難しい事ではなかった。
実のところ、クロートは、ほとんど演技をしていない。
ほぼほぼ自然体のまま、『自分の中にある一部』をさらけだしているだけ。
自分の中に存在する『トコ・ドラッグの因子』を濃くするだけで、
自然に、『トコとしての性格』を前面に出すことができる。
対『紙野創蔵』においては、非常に便利な存在。
それが、バリアブル・ミシャンドラ・クロート。
――ただ、いつまでも演技をしていたら、
いつか、どこかでほころびが出てくる可能性がある。
だから、クロートは、徐々に、『トコの因子』の濃度を濃くしていっている。
すでに『紙野の父性を底上げする』という作業は終わっているので、
『クロートの意識』は必要ない。
あとは、潜在意識に潜んで、無意識の心理コントロールをするだけでことたりる。
だから、クロートは、トコの因子を濃くするのと並行して、
自分の自我を、どんどん消していく。
現段階で、すでに、『トコ・ドラッグの意識』が9割を占めている。
ゆえに、すでに『演技をしている』という段階を超えている。
記憶の制御もほぼほぼ完了した。
もはや、擬態ではない。
――彼女は、トコ・ドラッグである。
『紙野創蔵』と同じく、
『なぜ、自分が、ここにいるのか理解していない状態』の異世界サバイバー。
肉体も、意識も、記憶も。
ほぼ完全なるトコ・ドラッグとなった。
こうなったら、もはや、疑う余地はなくなる。
――ゆえに、『あんたは誰だ?』と問われた紙野は、
「……俺は……えっと……かみのそうぞう……です……」
――かなり慎重に言葉を選びながら、そう言った。
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