センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

9906話 ダイナミック変態紳士。


 9906話 ダイナミック変態紳士。

 超苺は、

(あの子、かわいい。見た目は堕天使っぽいけど、中身は清純そう……いいよねぇ、服装と中身ですでにギャップ萌えを演出してくるとか、にくいよねぇ……あざといよねぇ……けど、そこがいいよねぇ……くすぐられるわぁ……やっぱ、女の子は、女の子ってだけで素晴らしいよねぇ)

 この空間にいる数少ない女の子をチラ見しているだけだった。

 いつだってそう。
 超苺にとって、世界の命運だの真理だの、
 そういうのは、心底、どうでもいい。
 そんなもの、彼にとっては、クソほどの価値もない。

 ――だが、そんな彼の心情など、当然理解できるはずがないTは、

(……『あいつ(超苺)』は、まずいっ! 下手に動かれる前に――)

 超苺が何か厄介なことをする前に、ザラキエリを取り込もうと、
 Tは、神速で、彼女との距離をつめた。
 そのまま、サクっと、彼女の中から、因子を取り出そうと、
 腹部に向かって右手を伸ばす。

 ――が、そのムーブを、


「………………究極超神化7」


 超苺は、とんでもない反応速度で対応してみせた。

 パーフェクトなカウンター。
 簡易版の7だろうと、ここまで完璧なムーブを決められると、さすがのTでも、余裕で巻き込まれてしまう。

 超苺は、ザラキエリの腹部に伸ばしたTの腕を、
 完璧にすくいあげると、そのまま、
 完璧な体術で、Tの体を、地面に向けてたたきつける。

「ぐっ!」

 反射の受け身で衝撃を防いだので、ダメージはほとんどない。
 すぐさま、体勢をたてなおすT。
 ザラキエリから『セイバーリッチの因子』を奪い取ろうとスキをうかがうが、
 しかし、超苺が、鉄壁のガードをしているため、

「……ぐ……うぅ……っ」

 ギリっと奥歯をかみしめること以外、何もできなかった。
 超苺の完璧な牽制。
 目線と体軸の据わり方がハンパない。

 どこから仕掛けても、確実に受けられる――そう判断したTは、
 その場から距離をとらざるをえなかった。

 ――そんなTをにらみつけたまま、超苺は、心の中で、

(なんだ、あいつ……急に、女の子になぐりかかるとか……情緒不安定か? ……突然のことすぎて、つい反射でさばいちゃった……)

 超苺は、Tの思惑に気づいていたりはしない。
 そんな『本物の有能さ』など持ち合わせていない。
 超苺は、基本、何も考えちゃいない。

 ――極めて、単純に、
 『女の子が殴られようとしていた』ゆえに『気づけば、勝手に体が動いていた』、
 という、ただ、それだけのダイナミック紳士な話でしかない。

「超苺、どうした? なぜ、その女を……その女が何か……」

 と、そこで、クロートも、

「……ん?」

 深く、深く、集中して、彼女の奥をさぐってみた。
 すると、


「……だいぶうっすらとしているが……まさか……『聖なる死神』か?」


 その問いかけに対し、
 超苺は、

(なに言ってんだ、あいつ? ……一ミリも分からんけど、なんか男前にシリアスな顔をしているから、とりあえず、俺も頷いておこうか。俺は空気が読める男の子なのだ。えっへん)

 肯定の頷き。
 それを見たクロートは、より深く集中して、
 ザラキエリの奥を覗き見る。
 その結果、

「……間違いない。『聖なる死神』のフラグメントが隠されている……超苺、お前、よく見つけられたな……こんなもん、どうやったら自力で気づけるんだ?」

 例えるなら、それは、『世界一難しい間違い探し』。
 『ここに注目してください』というヒントがなければ、
 よほど優れた洞察力があっても、
 なかなか、見つけることはできない、極端に巧妙な欺瞞。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品