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9888話 粘り強さ。


 9888話 粘り強さ。

 クロートのダンテレイは、非常に高火力で、当然のように、ショデヒのドリームオーラでは対処しきれなかった。
 かなりのダメージを受けてしまった――が、

(……バーチャ級ではない……神化していないエルメスと同等かそれ以下と言ったところ……)

 ダンテレイの一手を受けたことで、
 クロートの底を見極めるショデヒ。

(……『まあまあ強い』が……『聖主から賜った神器に身を包んでいる今の私』ならば、対処できないレベルではない……っ)

 そう結論づけると、
 ショデヒは、右手にオーラと魔力をぶちこんで、

「異次元砲ぉお!!」

 ショデヒにとっての最高火力を放つ。

 その一撃を、クロートは、異次元砲で迎えることなく、
 その身で受け止めた。

 高火力の照射を一身に浴びて、
 しっかりとダメージを受けた様子のクロート。

「ふむ……思ったよりは威力が高いな……」

 ボソっとそうつぶやいたクロートに、
 ショデヒは、

「素晴らしい。私の異次元砲を受けて、その程度とは……」

 『丁寧に褒め言葉を並べる』という手法で、
 自分のペースに引き込もうとする。

「クロートさん、あなたは、かなりお強い。正直、私よりも強いでしょう。しかし、我が国には、私やあなたよりも強い者が数名おります。どうです? こんな、暴力的な対話はやめにして、対等な交渉をしませんか? お互いがお互いを支え合う関係――ウィンウィンの関係を目指しませんか?」

 あくまでも、交渉を続けようとするショデヒ。
 いうまでもないが『平和主義者だから』ではない。

 ここまでするだけの価値が『強者』にはある、という、極めてビジネスライクな話。

 そんな、無駄な努力を続けようとするショデヒに、
 クロートは、

「向上心と粘り強い精神力……極上と言えるレベルではないが、間違いなく悪くはないレベル……自我を完全に消し去るよりも、ある程度残しておいた方が有益か……」

 ぶつぶつと、そうつぶやいた直後、
 クロートは、両手を合わせて、

「神化」

 別次元へと至るギアを入れる。

 その様を見たショデヒは、一瞬で苦い顔になり、

(ちっ……ソレ出来るのか……ああ、そう……まったく、まったく……ちっ)

 しんどそうに、二度、舌を打ってから、

(そのチートを使われると……もう、こちらに打つ手はない……)

 神化などという、ショデヒ視点における『イカれた反則技』を使われてしまうと、
 もはや、ショデヒに出来ることは何もない。

 即座に、帰還用のアイテムを使って、逃走をこころみるが、

(っ……次元ロック……っ!)

 『逃走は不可能である』と理解すると同時、
 ショデヒは、クロートに向かって叫ぶ。

「そ、その異質な変身は強大! 認める! しかし、私の国にも、同じ変身技を使える者が存在している! はやまるな!」

 焦った口調。
 ここまでくると、対面を繕っている余裕はない。

 要約すると、『私を殺すな』という意味に他ならない。
 利益を追及するターンは終了し、
 ここからは、いかにして、死なずにこの場を整えるか、というターンに入る。

 そんなショデヒに、クロートは、

「もう、おしゃべりはいい」

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