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9881話 すべてがうまくいっている?


 9881話 すべてがうまくいっている?

(あのキツい目をした少女に……地獄を見せてやりたい……とことん……徹底的に……)

 それが、今のホアノスの夢。

「そのミッション、請け負いますし、全力で取り組ませていただきますが……もし、失敗した場合は、他の、似たような女性を用意するという形で交渉を進めさせていただいてもよろしいですか?」

「最初に明確に言っておこうか。ほかの女ではダメだ。彼女でなければいけない。これは絶対だ。失敗は許さない。もし、彼女を連れてくることに失敗したら……この交渉は決裂だ」

 この交渉をなかったことにする気はない。
 この文言はあくまでも脅し。
 つまりは、『絶対に連れてこい』という強い命令にすぎない。

 ――ホアノスの話を聞き、彼の醜い表情を見たショデヒは、

(……女など、どれも一緒だと思うが……やれやれ……変態野郎の趣味嗜好など、理解しようとするだけ無駄だな……)

 なんの感情も抱いていなかった。
 ショデヒは、邪悪な悪魔だが、
 別に、幼女を痛めつけたいとは思っていない。
 逆に、幼女だから守りたい、という風にも思わない。

 だから、ホアノスの趣味嗜好に対しても、
 『変わった形の石ころを拾ってきて、ハンマーで砕くことが趣味』と言われたのと同じ程度にしか思わない。
 いや、『蚊を捕まえて、羽をむしるのが趣味です』と言われたのと同じぐらいろうか。

 ……まあ、なんにせよ、そのぐらいのものでしかない。
 そして、その程度の欲望を叶えるだけで、計画が前に進むのであれば、
 非常にたやすいことである――と、ショデヒは考える。

(魔王国で仕事をするときの問題点は一つだけ。ゾメガにバレるか否か。その関門さえ突破できれば、あとはただの単純作業)

 ゾメガはとんでもない化け物だが、
 しかし、国全体を一日中、完璧に管理できているわけではない。

 低能な犯罪者であれば、即座に看破されて捕縛されてしまうだろうが、
 ショデヒ級が、本気で隠密行動をとれば、バレずに仕事を行うことは可能。

 ゾメガの暗殺などは、さすがに不可能だが、
 魔法学校の学生一人をさらうぐらい造作もない。

(……あの女をさらうための計画はたてていたが、実行するには、手持ちの部隊だけだと、いくつかピースが足りなかった……ショデヒが動いてくれるのであれば、余計な手間暇をかけずに、ただ待つだけでいい……)

 表情には出さず、しかし、心の中では、満面の笑みを浮かべるホアノス。

(すべてがうまくいっている。強力な魔カード、国家主席の地位、聖龍王国との関係性、そして、あの女……なにもかもすべて……やはり、私は神に選ばれている。いや、神など関係ないな。私だ。私の力だ! 私に才能があり、私が努力してきたから! すべて私の力!)

 自分の運命に酔いしれるホアノス。
 彼は、『思うがままの未来』が訪れることを疑わない。

 ――そんな彼の目の前に、
 『次元の亀裂』が刻まれた。


「……ん?」


 反射的に、体が迎撃態勢をとった。
 ホアノスは、最高位の議員。
 この世界で『高い地位』を得ようとすれば、
 『優れた存在値』を誇っていることは当然。
 東大理出官僚の偏差値がバカ高いのと同じ。

 ホアノスは、ちゃんと、優れた『強さ』を持つ男。


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