センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

16話 絵に描いた、からっぽのヌケガラ。


 16話 絵に描いた、からっぽのヌケガラ。

「いくぞ、蝉原ぁあああ! 死ねぇええええええっ!!」

 愚直な突撃。
 異次元に達したザンクの拳が、
 蝉原の顔面を的確にとらえる。

 蝉原は、避けようと、壁を張ったり、ワナを張ったり、機雷を置いたり、
 色々、策をうっていたのだが、
 全部、力技で突き抜けられて、そのまま、
 ガツンと、思いっきりぶん殴られた。

 『まっすぐいってぶっとばす。右ストレートでぶっとばす』。

 顔面を砕かれた蝉原は、

(……これは……ダメだな……『それなり』に上昇してしまった。……今の俺では、対応できないスピードとパワー……ちっ……)

 表には出さないように、
 心の中だけで舌打ちしつつ、

(屈辱的な話だが……『ここら辺』が、『俺単体』の限界……できれば、規定路線から外れたかったけれど……結局、どうしても、『限界以上』にはなれない……)

 自分自身の器の小ささに歯噛みする。

(ほしいな……というか、必須。『ここから先』を求めるのであれば、俺にも絶対に必要だ。……どれでもいいから……『田中(CPU)』が欲しい……手に入れなければ、『中ボス』か『噛ませ犬』か『敗戦処理』しか出来ない……そんな惨めな末路は許容できない。……どんなに最悪な結末になったとしてもかまわないが、『センエースを煩わせた仇敵』という称号だけは失いたくない!)

 自分のポジションは理解している。
 だが、理解しているからといって、
 立場を受け入れている訳ではない。
 蝉原にも、『欲しいもの』はある。
 『そいつ』を手にいれるためには、
 どうしても、『田中』が必要不可欠。


(……おっと……未来に意識を向け過ぎた……)


 蝉原が、『はるか先』を考えている間も、
 ザンクは、凶悪な暴力で、蝉原をボコボコにしている。

 その高い知性をまったく活かさず、
 アホのヤンキーよろしく、やみくもに拳をぶんまわす。

 現状、ザンクは、『手に入れたばかりの強大な力』に振り回されている。
 ハッキリ言って、まったく使いこなせてはいない。
 それでも、強い。
 あまりにも大きいから。

 これは、『センテラスの可能性』がそれだけ大きかったということ。
 彼女の中にある可能性は、まさにセンエースのソレ。
 莫大で膨大。
 ありえないほどの質量。
 たった一人の個が、すべての世界に匹敵――あるいは超越しているという、異次元の器。

(さっさと、この茶番を終わらせようか……まったく……俺に、道化ばかり押し付けるのは、やめてもらいたいんだが……)

 心の中で、ため息をついてから、
 蝉原は、
 極めて優雅に、艶やかに、
 それでいて、とても力強い、
 まるで、歌舞伎の見得のように、 



「――『空蝉(うつせみ)や、物憂(ものうれ)いげな、風景画』――」



 何かを詠った。
 すると、その直後、
 ザンクと蝉原の二名が、
 特異な空間に閉じ込められる。

 見た目だけは限定空間と似ているが、
 しかし、性質はまるで違う。

 ザンクは、ザっと周囲を確認しつつ、
 瞬時に解析して、

「……ここは……『短時間、無敵になれる空間』とかか?」

 積まれる前に解析してしまえば、暴露を受けても効力はない。

「解析力だけは、まあまあだねぇ」

 などと言いつつ、
 蝉原は、一応、

「1分が限界だし、こっちから手を出すことはできない……でも、色々と積むことはできる。なかなか、優れた空間だろう?」


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