センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

12話 いい女の前では限界以上の力を発揮する。それが男ってもんやろう。


 12話 いい女の前では限界以上の力を発揮する。それが男ってもんやろう。

「できんやろうな。そんなことはザンクさんも分かっとる。ザンクさんは、トウシと比べれば無能。それは事実。――しかし、だからこそ、疑いようのない『高品質のブラフ』になった。こっちを『蛇だと思わせない』という手法。お前は蛇やから、ヘタなブラフやと、『ザンクさんも蛇やないか?』と疑ってかかってまう。――ザンクさんが無能で良かった。おかげで、騙しとおすことができた」

「……『不可能を可能にするだけの胆力』など……君にはないだろう? 君の底は見えている」

「いい女の前では限界以上の力を発揮する。それが男ってもんやろう」

「……」

「蝉原、お前、たぶん、本気で誰かを愛したこととかないんとちゃう?」

「もちろん」

「せやろな。気持ちは分かるで。ザンクさんも同じやったから。――蝉原……お前は、『そっち』の方が、『完成度が高い』と思うとるやろ? 無能な他人にしばられる人生よりも自由やと」

「ああ、もちろん」

「その哲学は正解や。なんも間違ってない。けどなぁ……一個だけ、『こっち側』に立つことで得られるメリットがあんねん」

「興味深いねぇ。聞かせてくれるかい?」

 おちょくっているのではなく、
 本当に、興味深そうに、そう尋ねてくる蝉原。
 蝉原には分からない世界。
 ――それを、ザンクは伝える。





「――無敵になれる」





 その言葉に、どれだけの意味が含まれているか。
 その全容に関して、実のところ、ザンクも、完璧には把握できていない。
 ザンクも、まだ、この幻想に触れたばかりだから。
 この『重厚な人生の勘違い』を完全に理解できる日は――きっと、こない。
 こなくていい。

 見えない未来に翻弄されて、
 震える情動に甘く苦しんで、
 重たい切なさに圧殺されて、

 そして、





 ――自由になるの。





「――蝉原勇吾。お前はザンクさんに勝てん。なぜなら、ザンクさんは無敵やから」

 言葉を繋いで、場の熱を引き留める。
 己の想いに泥酔していく。

 そうでなければ、届かない世界があるから。

「この感覚は、至極幼稚な万能感。もちろん錯覚で、実際には無敵やない。けれど、ただの勘違いと呼ぶには、あまりにも質の高い高揚感。このまっすぐな全能感は、ザンクさんのリミッターを鼻息で吹き飛ばす。『お前は、もっと輝ける』と、ガイアがささやく。……さあ、刮目してもらおうか。ザンクさんのショータイムを」

 ザンクは、全身に魔力とオーラを結集させる。
 膨れ上がっていく。
 感情論の帰結。
 ここは、きっと、未だ見ぬ丘の向こう側。

 ――最後に、



「――蝉原勇吾。センテラスのストーカー。お前自身に怨みはないけど、お前の迷惑行為は、普通に、限界を超えて不愉快。というわけで……殺すから……サクっと死んでくれや」



 そう言い捨てると、
 ザンクは、天を仰ぎ、





「プライマルゥウウウッッ! プラチナァァアア! スペシャルゥウウウ!!」





 革命を叫ぶ。
 自力で引き寄せた覚醒。
 ザンクの中に顕現したのは、

 プライマル・プラチナスペシャル『マフツノカガミ』。

 『センテラスの力を奪い取った蝉原の力』を、
 そのまま、自身の器に写し取る――だけでは飽き足らず、

「……0を1にするんは得意やないけど、1000を分析して10万や100億にするんは得意なんやでぇええ!!」

 コピーした力を、さっそく解析していく。
 そして、即座に、自分の適性に合った形へと置き換えていく。

「これで、ザンクさんの戦闘力も存在値も、お前と同等。あとは、ガチンコで殺し合いをして、どっちが先に死ぬかのチキンレース。さあ、蝉原……いざ、尋常に、死ぬほどダサくてみっともない、一ミリも見てられへん泥試合を始めようやないか」

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