センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
127話 インパルスの乱舞。
127話 インパルスの乱舞。
「おしゃべりの高低差がありすぎて、耳キーンなるんだけど」
などと軽くため息をついてから、
テラスは、ザンクに目線を向けて、
「この極限状態で冷静に質問とか、興味あるから、逆に聞きたい。私に何が聞きたいって?」
その問いに対し、ザンクは、まっすぐな顔で、
「最初からずっと疑問に思っとったんやけど……ジブン、なんで、ザンクさんの事を守ろうとしとんの?」
「それがヒーローというものだからだよ」
と、蝉原が勝手に答えたのを見て、
テラスは、これまでで一番イラっとした顔をしてみせる。
「得意満面のドヤ顔で、勝手に『間違えたこと』を言うの、やめてくれる?」
本当に、心底鬱陶しいという声音でそう言ってから、
ザンクに意識を戻して、
「あんたを守ろうと思ったことなんて一度もない。私は私のルールを遵守しているだけ」
「ルール?」
ザンクが問い返した直後、
蝉原も、
「興味深いな。閃くん、君の持論をどうか聞かせてくれ。君はなぜ闘うのか。その哲学を」
「持論とか哲学とか、そんな大層な話じゃない」
そこで一拍を置いてから、
「川でおぼれているやつを見つけて、その時、自分が浮き輪をもっていたら、投げ込むのが普通じゃない? 逆に、見殺しにする方がヤバすぎるってだけ。ようするに、人としての最低限のルールを守っているだけってこと」
「浮き輪をもっていない状態……いや、それどころか、鉄球が山ほどついた状態でも、君なら、迷いなく飛び込みそうだけれど? というか、現状は、そういう状態だと思うけれど? 君は、ずっと、彼の盾をしている。ここまでに俺が放ってきた、カンファレンスコールも、異次元砲も、本筋は、君を殺すことを目的としてのものだが、しかし、そのついでに、そこのゴミも殺そうと思っていた。君はそれを理解した上で、ずっと、彼の盾をやっている。――その慈愛と献身は、人としての最低限のルールなんかじゃないと思うけれど? タイトルをつけるなら『女神の自己犠牲』ってところかな」
「ふふふ……まったく人をイライラさせるのが得意な不良だ」
と、こめかみに怒りマークを浮かべながら、
テラスさんは、
「さっきも言った通り、私はハンデを――」
と、また、ファントムトークで場を散らそうとしたが、
しかし、
蝉原は、それを聞かずに、
瞬間移動で、ザンクの目の前まで移動して、
握りしめた拳を、ザンクの眉間めがけて突き出した。
今の蝉原からすれば、すさまじくスローなテンポで。
しかし、ザンクからすれば、致命の速度で。
テラスの体は、思考を介することなく飛び出していた。
反応、反射。
インパルスの乱舞。
ただ、まっすぐに駆け出して、
ザンクの体を、横から突き飛ばす。
その突き飛ばした腕に、
蝉原の拳が突き刺さる。
蝉原は、どうやら、拳に斬撃の属性を込めていたらしく、
蝉原の拳に触れたテラスの腕は、
チュインッッ!!
っと、豪速のチェーンソーに触れたみたいな音をたてた。
そして、気付いた時、
テラスの腕は宙を舞っていた。
遅れてやってくる激痛。
ダラダラと流れていく血。
「っ……がぁあああああっ!」
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