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105話 嘘つきだらけの卑怯を煮詰めた闘い――それが神闘。


 105話 嘘つきだらけの卑怯を煮詰めた闘い――それが神闘。

 凶悪に大きくなった彼女の背中を見て、ザンクは、ただただ目を丸くした。

「……女神……」

 『ただ覚醒技を使っただけ』だとは思えなかった。
 今のザンクにとって、彼女はまさに、希望の女神。

 ――センテラスは、両手にオーラを込めると、

「サイアジさんさぁ……照射の撃ち合いとかしてみない? ドラ〇ンボールみたいに」

「……探り合いを含めた力比べか。いいだろう。相手になってやる」

 そう言いながら、サイアジも、両手にオーラを込める。

 そして、お互いに、
 膨大なオーラを高め合ってから、

「異次元砲ぉおおおおおおっ!!」
「――異次元砲――」

 凶悪なオーラの照射が、互いの間でぶつかりあう。
 バチバチと、時空に傷をつけるみたいに唸り合っている。

 お互いの力を競い合う、その真摯な争いを見て、
 ザンクは、違和感を覚えた。

 現状、恐怖に支配されて思考力にデバフがかかっているだけで、
 根本的な頭の良さにナーフがかかったわけではないので、
 『その疑念』は『直接的な確信』に届く。

「き、気ぃつけぇよ そのサイアジとかいうクソ野郎が、そんな『まともなぶつかり合い』に乗ってくるわけがないからな!」

 『女神が負けたら終わりだ』と、深い部分で理解しているザンクは、
 とにかく、女神が負けないように、必死になって助言を送る。

 自分が知っているサイアジの性格(スタンス)を叫ぶ。

 すると、その直後、ザンクの予想どおり、

「――まさしく。真正面からの異次元砲のぶつかり合いに興じる気などない」

 テラスの背後にまわるサイアジ。

 ――しかし、ザンクの視線の先で、『テラスと撃ち合っているサイアジ』も、確かに存在している。
 撃ち合っているのは、サイアジのオーラドール・アバターラ。
 異次元砲を放つ前に、『異次元砲を放つことだけに特化したアバターラ』を残し、
 自身は亜空間へと忍び込んだ。

 すべては、テラスの虚(きょ)をつくため。
 サイアジは、『闘い』に対して、ある意味、とても真摯だった。
 勝つために、嘘をつくのは、卑怯でも何でもない。
 むしろ、とてもまっすぐな行為。
 『正々堂々』という概念など、むしろ、『ふぬけた甘え』だと、そんなことすら考えている。


 『確実に虚(きょ)をついた』と確信しているサイアジ。
 その勢いのまま、テラスの腹部を右腕で貫く。

 真っ赤な血しぶきが舞う。
 確定的な死の色は鮮やか。

 それを見ていたザンクは、真っ青な顔になって、悲鳴も出ない。
 鮮やかな赤と青が、世界の中心で、見事なコントラストを叫ぶ。

 ――だが、


「残念、こっちもアバターラを使っていましたぁ」


 サイアジの影から、
 テラスが飛び出してきて、

「――閃拳――」

 膨大なオーラをぶち込んだ拳で、
 サイアジの顔面を叩き潰すテラス。

 グチャァアアアアァツ!

 と、木っ端みじんに吹っ飛ぶサイアジの頭部。

「――『性格の悪い卑怯な戦闘スタイル』が、自分だけの特権だと、いつから錯覚していた?」

 などと、性根の腐った発言をかましてから、
 ピューピューと、首から血を吹き出している『サイアジの残った体』に、
 テラスは、

「異次元砲」

 オーラの照射を浴びせて、跡形もなく消滅させた。



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