センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

103話 誰でもいいから、誰か助けて。


 103話 誰でもいいから、誰か助けて。

「――田中・イス・斬九。言っただろう。貴様はすでに役目を終えている。――もうすでに、あらかたの器は出来た。つまり、貴様の魂には、もう意味がない。無意味な魂に救いなどあるはずがない。あってはいけない」

 丁寧にザンクの心を殺しにいくサイアジ。

 精神の殺戮は、完璧に成功していた。
 ザンクの心は、どんどん壊れていく。

 『お前の命は無意味』と烙印を押されたザンクは、
 まるでイヤイヤ期の子供のように、顔を横にふりながら、

「そ……そんなワケない……」

 ボタボタと、止まらない涙をあふれさせて、

「俺の命は……無意味やない……」

 そこで、最後の気力をふりしぼり、
 キっと、サイアジをにらみつけて、

「俺は、そこらの凡人なんかよりも、よっぽど優秀やろがぁあああ! そこらの雑魚では出来んことがたくさんできる! せやのに、なんで、その俺を殺すんやぁ! アホなんか、ジブン!! 利用せぇよ! 殺すな! 生かせ! 殺すなぁあああああああ!」

 必死になって、死にたくないと連呼するザンクに、
 サイアジは、冷めた顔で、

「貴様の自由意志が残っていたら、真・神帝陛下のノイズになる。欲しいのは『機械的にものごとを処理できるCPU』であって、『不完全な心を持ったバディ』ではない。『心を持つバディというコマ』も、真・神帝陛下には必要なパーツの一つはあるが、それほど重要な役割を、貴様がこなせるわけがない。そのポジションには、もっと『高みにある神』がつく」

「……」

「貴様は確かに優秀だ。だが、それだけだ。『一番』優秀なわけですらない。ただ優秀なだけの半端な天才。――だから、もう必要ない」

「……」

「トウシ級の天才となってくると、さすがに代替はきかないが、貴様程度の天才なら、他にもストックはある。ウラスケのような希少性もない、ただの『器用貧乏』な貴様に出来るのはここまでだ」

「……俺には……もっと出来ることがある……俺には、もっと可能性がある……だから……殺さんといて……お願いやから……頑張るから……もう、ずっと、レールの上を走るから……せやから――」

「何度も言わすな。貴様はもう必要ない」

「……」

 ザンクは、うなだれて、

「う……うぅ」

 頭を抱えて、


「誰か……」


 必死になって、

「助けて……」

 救いを求める。
 届かないのは知っている。
 誰も助けてくれやしない。

 そんなことは知っている。
 けど、
 極限状態では、
 叫び続けるしかないんだ。

 この日、ザンクは、『命の弱さ』を理解した。
 それは、とても大事なもの。

 ――『ここから先』へ進むためには、もっとも大事なもの。


「……たす……けて……誰か――」



 別に。

 その想いに応えようとしたわけではない。

 『彼女』は、
 ただ、舞い降りただけ。





「――ヒーロー見参――」





 彼女は、そう言って、
 ザンクの盾となるポジションを陣取った。

 ザンクは、反射的に、バっと顔をあげた。
 すると、目の前には、『同年代ぐらいの一人の女』が立っていた。

「え……誰……」

 知らない背中だった。
 ザンクの疑問符に応える彼女。
 振り返って、ザンクの顔を見る彼女。

 彼女の顔……どこかで見たことがある気もしないでもない。
 しかし、それは、デジャブレベルでしかなく、誰かは、さっぱり分からない。
 彼女は、ザンクの『誰?』という問いに、不敵な笑みを浮かべて、





「閃壱番(せんてらす)、探偵さ」





「……せん……てら……す?」

 そこで、ザンクは、彼女の顔つきや雰囲気が、
 どことなく、センエースに似ているということに気づく。

 『そう言われれば、そうともおもえなくもない』というレベルでしかないが、
 似ているか似ていないかで言えば、まあ似ていると言っていいレベルだった。



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