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91話 三つの首を持つドラゴン。


 91話 三つの首を持つドラゴン。

 おぞましいオーラを放つ『三つ首の龍』が這い出てくる。
 苦しみながら、目をひん剥いて、

「ギギガァアアアアアッ!!」

 激痛でも訴えかけるように、
 全力で咆哮をあげる。

 そのあまりに『やかましい声』を前に、
 ザンクは、鬱陶しそうな顔で、耳をふさいで、

(……うっさいのう……)

 と、心の中で吐き捨てつつ、
 冷静に、『三つ首の龍』を観察する。


(……頭が三つある、闇属性のドラゴン……『パラミシ・アジ・ダハーカ』か?)


 と、さっそく種族を特定していくザンク。
 以前、コスモゾーンの『モンスターデータ』に目を通したことがあるので、
 モンスターに関しては、そこらの学者よりも知識は深く広い。

(……んー、でも……なんか、パラミシ・アジ・ダハーカにしては、魔力が高い気がするな……天才型か?)

 モンスターの中には、たまに、『天才型』と呼ばれる高スペックの希少種が生まれることがある。
 天才型は、一般的な個体のモンスターよりも存在値が高く、特別なスペシャルなどを保有しているケースが多い。


 ザンクが、あくまでも冷静に、パラミシ・アジ・ダハーカを観察していると、
 そこで、

「ギギギギギギイィ!!」

 パラミシ・アジ・ダハーカの体が、どんどん、コンパクト化されていく。
 三つの首がギュギュギュっと、一つに統合されていき、
 完全な『ドラゴン型の肉体』が、『人型』へと変化していく。

 数秒後には、
 『見た目だけでいえば、そこらの魔人と大差ない』という状態になった。

 パラミシ・アジ・ダハーカは、

「はぁ……はぁ……」

 乱れた呼吸を、

「すぅ……はぁ……」

 深い深呼吸で整える。

「……」

 そこで、パラミシ・アジ・ダハーカは、スっと、ザンクに視線を向けて、



「――貴様が、タナカ・イス・ザンクか……想像していたよりも、ずっと脆そうだな」



「……ザンクさんの名前をご存じとは、なかなかの『通(つう)』やな。ザンクさんのスペックは確かに、オールワールドクラスなんやけど、知名度的には、そこまで高くない。さて……どうして、お前は、ザンクさんのことを知っとんのかな?」

「そんなことを貴様に教える義理はない」

「そうなん? ふぅん。まあ、『なんでか教えてはくれん』ということと、お前的には『ザンクさんに対して義理がない』という情報は教えてもらったから、情報収集という点で言えば、普通に勝利やな。色々と教えてくれてありがとう」

 などと、負けず嫌いを土台とした『小粋なマウント』をとっていくザンク。

 いつも通り、自由にチョケつつも、
 軽く体を動かしながら、

「――『召喚されたことに対するリアクションが希薄』なことと、『想像していたより』って言葉が飛び出てくる関係上から、お前がザンクさんの前に出てくることは、お前的には、既定路線だった可能性が大。その予測と、これまでのザンクさんの違和感を統合すると……『ザンクさんがお前を召喚した』んではなく、『ザンクさんの行動をコントロールしとる誰かが、ザンクさんを使って、お前を、ここに送り込んだ』と考える方が自然。ほんまに鬱陶しいけど……んー、まあ、そこに対してイラつくんは後にしとこう」

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