センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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82話 見せてやるよ、ゾメガ。俺の全部。


 82話 見せてやるよ、ゾメガ。俺の全部。

(……余の心を満たす『すべて』は、もう、目の前にある……っ)

 これは理解ではない。
 なんなのか分からない。
 ただ、魂が、やかましく叫んでいる。



「――エニグマ・ミーティア――」



 ――ゾメガの、えげつない一手に対し、
 センは躍動する。

 反応、反射。
 無条件な伝播。
 シナプスの鳴動。
 インパルスの尽瘁(じんすい)。
 思考を介さず、飛翔するセン。

 『エニグマ・ミーティアに対応する方法』が頭の中で駆け巡る。

 ――ゾメガは、のんびりと対策させたりはしない。
 狙いを定めつつも、
 ぼんやりと、周辺視で全体をとらえつつ、
 キャノンの連射を実行した。

 大量の『死』が、センに降り注ぐ。

 『数値差』を考えると、一発でもカスれば即死。
 ありえないほど高みにある魔法。
 だが、センは、優雅に、かろやかに、
 エニグマ・ミーティアの雨をかいくぐって、ゾメガとの距離をつめていく。

 『その目に何が見えているもの』が何なのか、
 ――もはや、セン本人含め、誰にも理解不能。

 ほとんどが、『ランダム乱射』なので、
 『軌道を予測する』など絶対に不可能。

 なのに、センは、すべての照射を完璧に回避する。
 それは、まるで、豪雨の中を濡れずに駆け抜けるみたいなもの。

 そのありえない光景を目の当たりにして、
 ゾメガの心が震えた。
 気付けば涙が流れていた。

 だから、ゾメガは、ミーティアを解除した。
 そして、両手に魔力を『これでもか』と込めて。

「センエースっ!!」

 彼の名を叫んだ。
 意味など特にない。
 ただ、心が叫びたがっていた。
 それだけの話。

 『全力の魔力』を『殴り合いの力』に変えるゾメガ。
 その一手は、もちろん、ただの悪手。

 センは『魔法耐性が高い』というワケでもなんでもないのだから、
 普通に、魔法型の変身をして、ゴリゴリの魔法弾幕で対応するのが正解。

 しかし、正解など知ったことではない。
 そういうことではないのだ。
 今、この瞬間において、
 もっとも重要なことは――

「……震えたぜ、ゾメガ」

 センは笑う。
 圧縮された時間の中で、『互いの想い』を交換しあう。
 ゾメガは、あくまでも、肉弾戦にこだわった。
 それは、『センエースの土俵』で戦いたかったから。
 奇妙なこだわり。

 こだわりなんかに、なんの意味があるのか。
 ゾメガの賢い頭は、反射的に、そんなことも考えてしまうのだけれど、
 しかし、すぐに、『そんな思考は無粋だ』と、
 『奥の奥にいる自分』が喚いていることに気づく。



「見せてやるよ、ゾメガ。俺の……全部……」



 『今のセンに出来ること』は多くない。
 この世界に転生する際、『ほとんどすべて』を無くしてしまったから。

 ――けれど、『残っているもの』は、確かにある。
 ぶっ壊れて、ゆがんで、くさって、
 それでも、なくさなかった、
 『積み重ねてきた全て』を、集めて、


「――龍閃崩拳――」


 拳に全てを込めた。
 心と魂と気と命が、すべて一致した。
 だから、跳ね上がる。
 存在値100前後の出力とは思えない一撃が、
 ゾメガの腹部にブチ刺さる。


「うぉおおおおおおおおおっっ!」


 避けられなかった。
 『避けたくなかった』という願望もあったのだが、
 しかし、きっと、本気で避けようとしても、避けられなかっただろう、
 と、ゾメガは推測する。
 無意味な推測。

 ――『推測できたからなんだ』と吐き捨てたくなる無駄な思考。


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