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49話  タナカ・イス・ザンクが望むもの。


 49話  タナカ・イス・ザンクが望むもの。

 タナカ・イス・ザンクには夢がない。
 叶えたいと渇望する夢が存在しない。
 絶対に正しいと信じられる夢がない。

 だから、面白そうか否かでしか行動基準をはかれない。
 ――と、そんな風に、自分をブランディングしている。

(んー)


 ザンクは、考える。
 自分がほしいもの。
 なしとげたいこと。

 自分の中の奥深くに潜って、
 自分の渇きと、真剣に向き合ってみる。
 自分に対して真剣に問いかける。
 本当に、何でもできるという状況になったその時に、
 ――お前は何をのぞむ?

(……んー)

 なかなか出てこなかった。
 自分の渇きすら理解できていない。
 その軽さが、ザンクの特徴の一つ。
 薄くて軽い。
 羽のように質量が薄いので、風がふくだけでも、軽やかに舞えるけれど、
 しかし、ただそれだけで、それ以上の意味や価値をもちえない。



 //――などという、そんな薄っぺらな幻想で自分をだます//



(んー)

 さんざん、自分自身と向き合ってみた結果、
 ザンクは、ついに、一つの答えにたどりつく。
 それは、今まで、自分の中には存在しないと思っていたものだった。

(理想のパートナー、なんかなぁ……やっぱり……)

 なんだかんだ、いろいろと、思考が錯綜したけれど、
 結局のところは、そこに落ち着いた。

 ――ありきたりな幸福を追い求める気はさほどない。
 子供が欲しいとも思わない。
 セックスに大きな魅力も感じていない。
 交際や結婚という制度に対しては『旧時代の遺物』としか思っていない。
 恋愛という概念を神聖視・特別視する風潮には、実のところ辟易している。

 ――だが、どこかで、なにかに焦がれている。
 ソレが何か、完全に理解できるほどの『ダンディズム(男の教養)』はまだ獲得できていない。
 ザンクも、しょせんは『まだまだ青い十代』でしかない。

(ザンクさんと釣り合うだけの女がおるとは思えへんけど……でも、親戚連中は、全員、『田中家の性能とはまったく釣り合わん低スペックな相手』を見つけて、よろしくやっとるしなぁ。恋とやらに落ちた場合、相手のスペックに関してはどうでもよくなる……んやろうなぁ、たぶん。経験したことがないから分からんし、正直、わかりたくもないけど……)

 理性の部分では、『パートナーなどいない方がいい』と理解できているのだが、
 奥の奥にある感情論の、そのさらに奥の方で、
 『パートナーとの時間』を望んでいる自分を感じて、
 ザンクは、鬱陶しそうに溜息をついた。

(みっともない話やで……世界一の天才を出し抜いて、神をも超えたその先に望むことが、婚活とはなぁ……どんだけダサイねんって話やで、ほんま……)

 情けなくて涙が出そうだった。
 しかし、どれだけ考えてみても、
 それ以外に望みがないことに気づき、
 ザンクは、さらに落ち込んでしまう。

(……んー……ザンクさん、薄っぺらいなぁ……まー、ええけど)

 異端ではあるが、彼も、結局のところは、間違いなく、田中家の血族だった。
 異質の塊であるタナカ・イス・ザンクといえど、己の血には逆らえない。

(……ま、未来のことは、未来の自分が考えればええ)

 そう結論付けると、
 ザンクは、『シャイニング/G‐クリエイション』の改竄に着手しようとする。


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