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42話 世界を覆い尽くす災いが一つだけだと、いつから錯覚していた?


 42話 世界を覆い尽くす災いが一つだけだと、いつから錯覚していた?

「実はですね、昨日、夢でお告げがありまして」

「……夢?」

「ただの夢とバカにしてはいけませんよ。邪神出現の預言も、かつての巫女が夢でみたものですから」

「ドーキガン・ザナルキア。君が、なにもかもにおいて別格に特別であるという事実を疑う気はない……そんな君が『俺ごときに相談しなければいけない』と思ってしまうほどのお告げか……興味がある。聞かせてくれ」

「慌てずに聞いてほしいのですが……どうやら、すでに、この世界には、邪神が出現しているようなのです」

「……そいつは、また……突飛な話だな……」

 そこで、モナルッポは、水差しに手を伸ばし、コップにそそいで、一口、喉に流し込む。

「……邪神とやらが出現してしまった場合、その邪悪すぎるオーラで、世界中の人間が、どんどん死滅してしまう……というウワサを聞いたことがあるんだが……現時点だと、まだ、世界は、その手のパニックには陥っていないな。それとも、俺が気づいていないだけで、世界の片隅では、すでに、死が蔓延しているのかな?」

「今日、1日かけて、世界中をめぐってみましたが、どこにも、邪神の爪痕は残っていませんでした」

「……となると、出現していないのでは?」

「できれば、ボクも、そうであってほしいと願っています。しかし、お告げによると『間違いなく邪神は召喚されている』とのことです」

「その『急なお告げ』とやらの信憑性も、散々語り尽くされてきた予言の信憑性も、俺の中では、正直なところ『非常に薄い』というのが本音だ。『信じたくない』と言う基盤があるせいだろうと思うけれど」

「信じる・信じないの問題ではありませんよ、モナルッポさん。これは、『真実だった場合、世界が終わってしまう』という大問題なのです。ただの嘘であったならば、『ああ、嘘だったのか』と安堵して笑い飛ばせばいいだけの話。そんなことは、あとで、いくらでも出来ます。問題なのは、真実だった場合。邪神に対抗できる力を持っているのは、現時点だと、ボクと、あなたと、ゾメガさんと、あとは、聖龍王国のエルメスぐらいでしょう」

「……匹敵する戦力が、4人もいるんだ。仮に事実だったとしても、全員でかかって圧殺すればいいのではないか? というか、仮に存在していたとしても、正直、君一人でどうとでもなると思うんだが?」

「ボクもそのつもりでした。敵が邪神一体だけならば」

「それは、どういう……」

「お告げの内容は、邪神降臨だけではありませんでした。もう一つ……どうやら、この世界には、邪神以外にも、『大きな災い』が降り注ぐようなのです」

「……災いねぇ……」

 そこで、モナルッポは、聖龍王国の新しい支配者、聖主とバーチャを思い出す。

「ちょうどいいから、俺の方も、君に一つ相談させてもらいたい。実は――」

 そこから、モナルッポは、
 聖龍王国での出来事を、ざっくりと語る。

 話を聞いたドーキガンは、

「聖龍王国も確認しましたが……大きな被害が出ていないかを、遠目に確認しただけだったので、内情に変動があったことは知りませんでした……まさか、トップが変わっていたとは……」


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